三人の強者
アンジュはその三人について説明してくれた。
王国には、王族直属の騎士団が存在するようだ。
ホルス騎士団。
有事の際、王の命令にのみ従い、敵を屠る最後の砦ともいえる騎士団。
その騎士団は精鋭ばかり。
アンジュもその騎士団に入団させられそうだったらしいが、ティニアが断固としてアンジュを手放そうとはせず、交渉は決裂したらしい。
そんな一幕もあった騎士団には、三人の隊長が存在する。
その隊長たちは各々の部隊の隊長のようだ。
そして、その部隊は王都の有事以外は小競り合いの起こっている戦場などに割り込んでいくようだ。
まあ、全員ではなく、隊長三人とお目付け役が数人らしい。
アンジュの話を聞く限り、その三人は所謂バトルジャンキーのようだ。
そして、その三人がこの大会を見逃すはずがなく、参加するのは確実だろうということだった。
琉海はその話を聞き、どんな相手なのか気になった。
アンジュはパーティーで会うだろうから、その時に教えてくれるらしい。
その三人が今大会で一番注意する参加者のようだ。
アンジュより強いのがその三人ということは、アンジュが出場したら、その三人と戦わなければベスト四は確実なのだろう。
すると、好成績を残すとなると、優勝か準優勝ぐらいだろうか。
琉海は内心でため息を吐く。
その三人はアンジュより強いという。
その強さもどのぐらいなのかわからないのが、琉海の心労となっていた。
まあ、最悪《創造》も使うことを考えておく必要がありそうだ。
琉海はアンジュから貴重な情報を聞き終えると、完全に日が昇り、朝を迎えた。
そして、屋敷の中も起きる人が増え、騒々しくなってくる。
今日は大会初日。
公爵家であるスタント家は色々と準備をする必要があるようだ。
琉海もその一人であり、アンジュとの話を終えて朝食も食べ終えると、執事やメイドたちに捕まえられ、部屋へと連行された。
そして、タキシードのような服を着せられ、採寸をしはじめる。
昼の開会式には、正装で参加することになるようだ。
琉海はその間、着せ替え人形になり、さまざまな貴族服を着せられ、合いそうな服を決めてもらった。
こんなことになっていたのは、琉海だけではなく、静華やエアリスも別の部屋で同じようなことになっていたらしい。
昼前になると、化粧にドレスを着た女性たちが玄関前に集合していた。
「遅かったわね」
エアリスがそう言ってきた。
エアリスは黒を基調としたドレスを着ていた。
「何か言うことはないの?」
エアリスはくるっと回って琉海に見せつけてくる。
「綺麗だね」
「ふふ、よろしい」
笑顔でそんな風に言われると言ったかいがあったと思う。
そして、そんな一幕を見ていた静華とティニアがこちらを見てきた。
その視線でわからないほど琉海も鈍感ではなかった。
「静華先輩も綺麗ですよ」
静華先輩は紫を基調としたドレスだった。
「そう。ありがとう」
照れ隠しなのか、若干そっけないふうに言われた。
「ティニア様もすごく綺麗です」
ティニアは赤を基調としたドレスを着用していた。
「ふふ、ありがとうございます」
ティニアも笑顔でお礼を言う。
「あら、私には何かないのかしら」
ティニアの母――エリザがこちらに体を寄せてくる。
ティニアと同じく赤を基調にしているドレスなのだが、大人の色香感じる扇情的なドレスを着ていた。
「す、すごく綺麗です」
まさかのスキンシップに琉海は、若干顔を赤くして答える。
「そう、あ・り・が・と・う」
耳元で言ってくるエリザ。
「お、お母さま!」
ティニアも赤面してエリザと琉海の間に割り込んだ。
「あらあら、やきもちかしら」
「ち、違います!」
エリザはティニアの慌てようを楽しむかのように笑みを浮かべ、琉海から離れる。
「す、すみません。母が変なことをして」
「いえ、大丈夫ですよ」
琉海が気にしていないと答えると、メイリが玄関前に立つ。
「では、全員揃いましたので、皆様こちらへ」
メイリは玄関の扉を開け、二台の馬車に案内する。
全員が乗り込むと、馬車は大会の会場となる場所に向かった。




