王都到着!
夕方。
遠くの空に夕闇ができてくる頃。
琉海たちは王都に辿り着いた。
王都の門は大きく、塀も高い。
今までの町の中で一番の堅牢さを感じた。
王都の門前では兵士が馬車を止める。
だが、定期便だったときとは扱いが違った。
メイリが馬車の外に出て、兵士と二言三言会話すると、通してもらえた。
門を通りすぎると大きな一本道があった。
一本道の両脇を露店が軒を連ね、多くの人で賑わっていた。
大会があるから、そのお祭りみたいなものなのだろうか。
「すごいわね……」
静華もそれを見て、驚いていた。
渋谷のスクランブル交差点ほどではないが、この世界に来て経験した人の多さでは一番だ。
しかし、琉海たちの乗る馬車はその道を通らず、脇に逸れて外壁に沿って進んで行く。
ティニアが言うには、さっきの道は平民区域に分類されるようで、ティニアたちの家がある貴族区域は正反対の場所にあるようだ、
区域が分かれているのは、平民と貴族のいざこざをなくすためのようだ。
主に貴族がうるさいらしい。
ティニアの家系はそういうのを気にしないようで、むしろ平民には埋もれた人材がいるぐらいと豪語していた。
そんな貴族と平民の争いを減らすため、王都の四割が平民区域になり、六割が貴族区域になっているようだ。
まあ、貴族の敷地が広いのは仕方がないのだろう。
しかし、平民の住める区域は狭いにも関わらず、住みやすさは他の町に比べて別格なのか、王都に住もうとする平民は多いようだ。
馬車は進み、貴族区域に入ると、風景ががらりと変わった。
さっきまで、小さい建物が多かったのが、一つ一つ大きい建物が並ぶようになる。
一つの建物との間隔も広く取られ、優雅さを醸しだす佇まいをしていた。
貴族区域に入ると馬車は適当な道に入り、進んで行く。
道も広く、歩いている人も少ない。
ほとんどの貴族が馬車で移動しているようだ。
進んでいくにつれ、家も小さいものから大きいものへ変化していく。
建物の大きさは、貴族の格を表しているだろうか。
そして、前方に見えてくる一つの大きな屋敷があった。
「もしかしてあれが……」
「ええ、我が家です」
琉海があまりの大きさに呆けてしまう中、ティニアは頷いた。
前の町の屋敷もでかいと思ったが、眼前にそびえる屋敷に比べたら、たしかにあれは別荘なのかもしれないと思わされた。
パッと見て、別荘と比べ二倍以上の大きさの屋敷だった。
屋敷の前には、鉄の柵があり、門も付いている。
馬車は門前で停車し、御者が守衛に声をかける。
そして、門はゆっくりと開かれた。
馬車が再び前進し、屋敷の玄関前で停車。
それと同時に、玄関の扉が開かれ、数人の執事やメイドたちがティニアを出迎える。
琉海たちは馬車から降り、ティニアを先頭に屋敷に入った。
屋敷の中では、老齢の執事が待っていた。
「おかえりなさいませ。ティニア様、魔物の襲撃があったと聞きましたが、ご無事でなによりでございます」
「ええ、彼が助けてくれたから、何事もなかったわ」
ティニアは琉海に視線を向けてそう言った。
「そうですか。彼が報告にあった――」
「あら、帰ってきたわね。ティニア」
執事の会話を妨げて現れたのは、絶世の美女だった。
大人の女の色気を振り撒くスタイル抜群の女性。
金髪で露出度の高い紅のドレスを着ている。
「お母様!」
ティニアの母親のようだ。
たしかに似ている部分があった。
「災難だったみたいね」
「はい。ですが、命を救ってもらいました」
「そう、じゃあ、彼がそうなのね」
ティニアの母親は、琉海の視線を向けた。
「はじめまして。ティニアの母のエリザ・スタントと申します。ティニアを助けて頂きありがとうございます」
「私は琉海と申します」
琉海はその後、静華とエアリスの紹介をした。
ティニアを助けたことで数々のお礼を言われ、素直に受け取ることにした。
謙遜するのも疲れるのだ。
一通り自己紹介が終わると、
「それじゃ、ゆっくりしてくださいね。アルディ、お客様をお部屋に案内してあげて。夕食にでも、またお話をしましょう。それまで、ゆっくり休んでください」
「かしこまりました」
アルディと呼ばれた老齢の執事は一礼して、琉海たちを部屋に案内してくれた。
部屋は町での屋敷より広く、調度品が豪華なものに見える。
また、一人一部屋を割り当てられた。
「何かございましたら、このベルを鳴らしてください。夕食の準備ができましたら、お呼びしますので、それまでお寛ぎください」
アルディはそう言って、部屋を出た。
「はあ、なんか疲れたな」
琉海はベッドに倒れ込む。
馬車で座っていただけだが、思っていた以上に疲れていたようで、睡魔が襲ってきた。
琉海は逆らうことはせず、瞼を閉じた。




