分析
自室のソファに座り、優雅に紅茶を飲んでいるティニア。
その部屋をノックする者がいた。
「いいわよ」
「失礼しま~す」
ティニアの返事を聞き、室内に入ってきたのは、メイリだった。
「どうだったかしら?」
ティニアは紅茶を一口飲んでから、メイリに聞く。
「シズカ様はかなりの魔力をお持ちみたいですね」
「そう。他二人は?」
「エアリス様はわかりませんでした。もしかしたら、魔力を持たない人間かもしれません」
「彼女は戦力外と言うことかしら?」
「はい」
「じゃあ、彼は?」
「それが……魔力はそこまで高いようには感じなかったんですよね」
メイリは考えるように首を傾げる。
この挙動は、メイリにしては珍しいことだった。
「何か、変な点でもあったの?」
「うーん、なんていうんですかね。魔力を視ようとしたんですけど、膜みたいのがあって、ぼやけた感じだったんですよね」
「あなたにしては珍しいわね」
「私も初めての経験で困惑しています」
メイリは言葉とは裏腹に、顔は笑っていた。
いままでと違う現象に遭遇し、新しいおもちゃを見つけたかのようだ。
メイリには、生まれ持った特殊能力があった。
それは、《魔力視》。
この能力は、魔力を視ることができる能力だった。
ただ魔力を感じることなら、それなりの技量を持つ者なら、誰でもできる。
しかし、魔力を感じられるのは、放出されている魔力だけ。
メイリの能力は、その人間が保有する全魔力量を視覚化することができる。
この力を借りてティニアは数多くの埋もれた人材を引き上げていた。
だが、その能力をしても、琉海の魔力を見極めることができなかったようだ。
「つまり、未知数ってことかしら?」
「残念ながら、そういうことになりますね」
メイリが頷くと、
「だが、彼の技量は本物だと言える。あれだけの数のベアウルフを一掃してみせたのだからな」
「あら、アンジュが人を褒めるなんて珍しいわね」
「わ、私もちゃんとした技量の持ち主なら、褒めます」
ティニアに突っ込まれ、顔を赤くするアンジュ。
「そう? 私もアンジュが褒めているのは見たことないわよ?」
メイリもアンジュを茶化そうとする。
「それは、部下たちが不甲斐ないからだ」
「お父様たちと先に行ったあなたの部下は清々しい表情で王都に向かったものね」
「チッ、やはり、たるんでいます。王都に着いたら、鍛え直します」
「ほどほどにしてあげなさい」
スタント公爵領から、王都へ当主の母と父が先に出立した。
その後を追っかけるようにティニアたちも向かったのだ。
護衛もつけるという話も合ったのだが、ティニアが拒否した。
長い旅の間ぐらい、くつろがさせろと言ったのだった。
ティニアに反論できる者がおらず、護衛なしで出発することになった。
そして、道中でなぜか魔物に襲われる羽目になったのだ。
「それで、私はベアウルフを退治した姿を見ていないので、何とも言えないのですが、どうだったんですか?」
「私も見てないわ」
メイリに聞かれたティニアは首を横に振り、アンジュに視線を向けた。
「私も最後の一匹を斬ったところしか見ていませんが、あの太刀筋はかなりの使い手かと思います」
アンジュを信用していないわけではないが、どこまで信憑性があるものだおるか。
「はあ、やっぱり判断材料が少ないわね」
ティニアは顎に手を置き、黙考する。
「それでしたら、王都での大会に参加させるのは、いかがでしょうか?」
メイリの提案にティニアが勢いよく視線を上げた。
「そうね。その手があったわね」
メイリの提案にティニアがそれだと言わんばかりの反応を示す。
「ですが、どうやって参加させるのですか?」
アンジュは難しいのでは、と言いたそうな顔で聞いてくる。
「そうね――」
ティニアはにやにやと悪巧みをする顔をして作戦を考えていった。




