出会い
(俺は死んだのか)
真っ暗な意識の中、琉海はうっすらと覚えている最後の記憶を思い出す。
走馬燈のように飛行機でのことが思い出せた。
そんな意識の中、夢から覚めるかのように体の感覚が呼び起こされる。
暖かい気候にそよ風が流れる。
その風が自然特有の草木の匂いを運んでくる。
その匂いで意識を失っていた琉海の体が覚醒に導かれた。
「ん……」
意識が戻り、琉海は瞼をゆっくり開くが、日の光に顔をしかめる。
それも徐々に慣れていき、視界が開くと自分が森の中に倒れていると理解する。
「ここは……どこだ? 死後の世界……か?」
大自然の中で琉海は周囲を探ろうとしたとき――
「目を覚ましたわね」
突如、少女の声がした。
琉海は声がした方に顔を向けた。
そこには、樹齢100年と言われても疑いもない大木の枝に、黒髪の一人の少女が座っていた。
外見だけだと同じぐらいの年齢だろうか。
周囲には小鳥やリスなどの小動物が集まっており、おとぎ話の妖精のようだった。
しかし、その感慨も彼女の黒いドレスのような服装が、自然の神々しい雰囲気と真逆の存在のように感じられてしまう。
「君は誰だ……? いや、それよりもここは……?」
「聞きたいことは山ほどあるようね」
少女はそう言うと地面に飛び降りた。
鳥たちは飛び立ち、リスたちも別の木々に逃げていく。
地面に素足で着地する少女。
「体はどう? 問題はないと思うけど、不調があれば言ってちょうだい」
琉海は立ち上がって、軽く体を動かしてみる。
「いや、問題ないかな……?」
不意に記憶がフラッシュバックし、腹に大きな傷を負ったことを思い出し、自分の腹部を触り、目で何も傷がないことを確認する。
「ここに傷があったと思ったんだが……」
「死にかけだったからね。でも、私が直したわよ。いや、直したというのは正確じゃないか。そうね。複製したといった方が正確かしら」
「複製……?」
「あなたの体はズタボロであそこに倒れていたのよ。助かることのないほどの重症だったわ。私の近くに落ちてきたのは幸運だったわね。ああ、ついでに服も複製しておいたから」
「いや、複製についての答えになってないと思うんだが……」
「複製についてね。それには、私のことと今のあなたの状態を説明する必要があるかしら。長話になるだろうから、場所を移しましょう。そういえば、あなたの名前を聞いてなかったわね」
「俺は、才偽琉海だ」
「サイギルイ。変わった名前ね。私はエアリス」
「エアリス。よろしく。俺のことは琉海でいい」
「そう、ではルイ。末永くよろしくお願いね」
「ん? あ、ああ、よろしく」
少女の言い回し若干引っかかる部分はあったが、黒髪の少女エアリスは話が終わると、森の中にどんどん行ってしまうので、聞くこともなく後を追った。