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賊狩りの誕生

 その後、静華はクリューカに魔法を習い、習得していった。

 魔法も使えるようになって、クリューカの研究にも協力する。

 あっという間の四か月だった。

 四か月の間、静華はクリューカと一緒に森へ入るようにしていた。

 はぐれた同級生の女子二人を探すためだった。

 何か手掛かりがあればと探した。

 だが、広大な森の中で手掛かりを見つけるのは困難を極めた。

 四か月の捜索でもう見つけるのは難しいだろうとあきらめたとき、奴らが現れた。

 盗賊たちだ。

 クリューカと一緒に隠れる。

 奴らはこの森を根城にしており、小さな町や村で悪さをしてはこの森に逃げ込んでいるとクリューカが教えてくれた。

 この森には魔物も生息しているため、小さな町や村では対処ができずにいるようだ。

 そして、盗賊の集団の中には、知っている顔がいた。

 あの夜に静華たちを売って生き延びようとした男子二人だ。

 仲間のように盗賊たちと会話をして楽しそうにしている姿にイラっとさせられる。

 そのとき、無意識に動いてしまった体が草木に当たる。

 カサッという音が微かに木霊する。


「おい、誰かいるのか?」


 目ざとく、その音に反応した男がこちらに視線を向けてくる。

 男の一言で他の者も静華の隠れている場所に視線が集まった。


「おい、少し探ってこい!」


 盗賊集団のリーダーと思われる男が顎をしゃくって部下に行かせる。

 その中に、同級生二人もいた。


「チッ! やるぞ」


 クリューカは舌打ちして、隠れるのをやめ、飛び出す。

 静華もクリューカに続いた。


「はっ、女じゃねえか」


 静華たちを見て舌なめずりして、いやらしい視線を向けてくる。


「仕方ない。手加減はなしだ」


 その視線に機嫌を悪くしたのか、クリューカの口調に怒気が含まれていたように思う。

 これが初めて見るクリューカの戦闘する姿だった。

 魔法の連発。

 すべての属性を高い水準で扱うことのできるクリューカは、さまざまな属性を駆使して、盗賊たちを殲滅していく。

 盗賊たちがやられる中に紛れて、静華の同級生二人は逃げだした。


「シズカ!」


 クリューカが視線で行けと言ってくる。

 頷いて駆け出した。

 四か月でクリューカに鍛えられた静華の強化魔法は、練度の高いものだった。

 多少相手が魔法を使えたとしても、問題ないぐらいに強くなっていた。

 静華なら、二人に追いつくのも簡単だった。

 魔法の練度の差だ。


「待ちなさい!」


 追いつかれたことで二人は足を止めた。


「はあ、会長生きてたのか」


「さっさと死んだと思ってたんだけどな」


 二人の視線は四か月前とは別物になっていた。

 悪に染まり切った目。


「あんたたち……」


 学校では知らない面を見せる二人。

 この世界で本性を出したのだろうか。


「今回は見逃してくれないか?」


 一人が提案してくるが、そんな交渉をする気はなかった。


「あんたたちは、罰されるべきよ」


「はあ、じゃあ、仕方ないか」


 そう言ってもう一人が左目を隠す髪をかき上げた。


「あんたの大切にする感情を封印する」


 何を言っているんだと思った瞬間――

 スッと何かが抜け落ちた感じがした。

 その違和感は動揺を誘えるほど大きかった。

 静華が動揺をしているうちに二人は駆け出す。

 冷静な状態ではなかった静華は身体強化の魔法を使うことができず、二人を見失ってしまった。

 彼らも魔法を使えるようになっていたようだ。

 戻るとクリューカが盗賊たちを捕らえ終えていた。


「どうだった?」


「逃げられました」


 静華の表情にクリューカは何かあったのかと思うが口に出すことはしなかった。


「そうか、こいつらを運んでもらうよう手配しよう」


 町の兵士に伝え、運んでもらうことにした。

 家に戻ると、クリューカが真剣な顔で静華の前に座る。


「あの二人の少年を追って何があった?」


 真剣な表情に静華も応えようとするが、


「それが、何をされたのかわからないんです。ただ、なんだか胸にぽっかりと穴が空いたような感覚があって……」


 静華は自分の胸に手を当てる。


「胸に穴のような感覚……か」


 クリューカは精神に何かをされたのだろうと推測した。

 何をされたのか明確にするため、クリューカは色々と質問した。

 その結果、わかったことは、精神系の能力で恋愛感情を無くしてしまったことだった。

 これを解除する手立てが術者を殺すか解いてもらうしかないとわかった。

 静華にとって強さは恋愛感情に結びついていた部分があったようで、その基盤ともいえる感情が消えてしまったせいで、魔法が使えなくなっていた。

 しかし、魔法は魔力さえあれば、すぐに使えるようになると言うクリューカ。

 それよりも、その術者をどうするかという方が重要とのことだった。

 静華は探し出すと即答した。


「そうかい。なら、何も言わない。私も探してみるが、その少年には気を付けることだ」


「はい。でも、そんな魔法があるなんて知りませんでした」


「いや、あれは魔法ではない。一種の能力と言えるものだ。稀に魔法とは別の能力を持つ人間がいる。彼らを《トランサー》って呼んでいる。おそらく、シズカに暗示をかけたのも精神系のトランサーだったんだろう」


「だから、魔法でどうすることもできないんですか?」


「そうだろうね。魔法は属性に類することしかできない。まあ、高位の精霊で精神系の能力を持っていれば、可能かもしれないが、いるかもわからない高位精霊を探すよりか、術者を探した方が、早いだろう」


 クリューカの説明で静華は決心を固めた。


「行くのかい」


「はい。親切にしてもらって、お礼もちゃんとしてないですが……」


「別に構わない。私がシズカを気に入ってやったことだ。気にする必要はない」


 静華はお礼を行って支度をはじめた。

 その翌日には、同級生二人を追うために情報を集めた。

 信憑性が高い情報を頼りに町や村を転々とする。

 いつも賊の集団に混じって何かをやっていると情報を手に入れると、向かうのだが、逃げられてしまっていた。

 だが、静華の足止め用になのか、賊たちだけが残っていることが多く、二人の情報を手に入れるために、半殺しにして吐かせることも多かった。

 その後、賊を捕まえ、ギルドで懸賞金を受け取るようになった。

 そして、それを繰り返すうちに静華に付いた異名が『賊狩り』だった。


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