捜索
賊の情報集めは芳しくなかった。
冒険者たちも探しているようだが、発見までは至ってないようだった。
中には、もう『賊狩り』に狩られているんじゃないかと言ってる者もいたが、それはないだろうというのが、大多数の意見だった。
狩られた後なら、手配書がギルドから消えているはず。
いまだにギルドの掲示板には三日前と変わらず手配書が並んでいるようだ。
琉海は朝から昼までを聞き込みに費やし、その後、情報を元に町から離れた場所にアジトがないかを探していた。
今日も成果はゼロ。
「そろそろ見つけられないと、まずいかもしれない……」
時間が過ぎれば、それだけアンリを追うことが難しくなる。
この後のことを考えて宿に戻ろうとしていると、知っている人が前からやってきた。
宿の女将であり、ミリアの母親だった。
走っていたのか、息が荒い。
「あ、あの、娘を見ませんでしたか?」
「ミリアですか?」
「はい。さっきまで店の前で客引きをやっていたみたいなんですが、どこにもいなくて……」
ミリアの母親からは焦りの色が浮かんでいた。
不穏な気配を感じる。
その不安を現すかのように空も曇り出す。
「俺も探してみます」
琉海とミリアの母親とで手分けして探すことになった。
ミリアが店の近くから離れることはほとんどないようで、どこかに出かけたというわけでもなさそうだ。
「エアリスも探してくれないか?」
『構わないわよ。あの女の子を探せばいいのでしょ?』
「ああ、頼んだ」
琉海は実体化したエアリスに頼み、さらに二手に分かれて探索する。
この町内であれば、離れても契約が切れることはないようだ。
外に出てしまったら、どうなるかわからないとエアリスに忠告されているので、気を付ける。
通りを歩く人に聞いたりしたが、ミリアを見た者はいなかった。
嫌な予感がしてくる。
すると、通りを歩く人の会話が聞こえてきた。
「おい、ちょっと前にあいつらを見かけたぞ」
「あいつら?」
「ほら、冒険者ライセンス剥奪された馬鹿な四人だよ」
「ああ、やりたい放題してたからな。でも、よくこの町を出入りできるな。あいつら、もうこの町じゃどこの店にも入れないだろ」
「そのはずなんだよな」
「じゃあ、なんでまだいるんだよ。なんか悪さでも考えているのか?」
「そんなことしたら、ライセンス剥奪どころじゃ済まされただろ」
「ああ、牢獄行きだろうな」
「ギルドの後ろ盾がないとここまで落ちるんだな。言動には気を付けたほうがいいぞ」
「お前もな」
そんな会話をして二人は笑っていた。
ライセンスを剥奪された冒険者。
四日前に宿で騒ぎを起こしたあの四人のことだろう。
そいつらがこの町にいた。
なぜ?
ミリアがいなくなり、元C級冒険者の四人が現れた。
点と点が線に繋がった。
おそらく、ミリアを誘拐したのはその四人だろう。
「ちょっといいですか? そのライセンスを剥奪された冒険者たちってどこに行ったか知ってますか?」
「ん? ああ、あっちだったよ」
琉海を一瞬訝しんだが、愛想笑いを浮かべて丁寧な口調を意識したおかげか、親切に教えてくれた。
「ありがとう」
琉海は銀貨一枚をその青年に手渡して、走り出す。
「エアリス聞こえるか?」
『なに?』
「ミリアの居場所がわかったかもしれない。こっちに合流できるか?」
『わかったわ。すぐに戻るわ』
ある程度離れていても琉海とエアリスは念話のようなことができる。
あの青年たちの話だと、ミリアのいなくなった場所とは逆方向に向かって歩いていたのを目撃している。
おそらく、ミリアを連れ去ったあとの目撃情報だろう。
そうなると、奴らが潜伏しているのは、歩いて行った方向だろう。
そして、この町で隠れることは無理だ。
少しこの町を歩いただけで、噂されるのだから、隠れるには不向きだろう。
そこまで考えて――
じゃあ、奴らはどうやってミリアを攫ったのだろうか?
衆目を集める四人ではミリアを誘拐するときに見られてしまうだろう。
しかし、ミリアが攫われたと知っている者は誰もいない。
見た人全員を口封じができるほど、あの四人は力を持っていない。
「追いついた。それでどこにいるのかわかったのかしら?」
「ああ、おそらくこの町の外。犯人は四日前に俺が倒した四人組の冒険者だ」
「ふーん、じゃあ、目的はなに?」
「さあ? まあ俺かミリアじゃないか?」
走りながら、エアリスと並走しながら会話をする。
精霊術で強化しているため、息が切れることはない。
極力、力をセーブして下手に目立つこともなく町を駆け抜けた。
「町の外に出たけど、ここからどうするつもり?」
エアリスの言う通り、ここからどこに向かえばいいか確証がない。
だが、この三日間で賊のアジトの可能性が高い場所の情報をかき集めていた。
この東の入口からだと、洞窟やら川辺などもあるが、おそらくそこにはいないだろう。
東側には、どっかの貴族が建てた屋敷があった。
しかし、その屋敷は魔物によって廃墟と化し、その魔物が住み着いているらしい。
何と言っても厄介なのが、その魔物がC級冒険者以上じゃないと倒せないほど強いようだ。
ただ、その魔物はその屋敷を縄張りにしており、町に危害を加えることもないため、近寄らなければ、特に問題がないらしく、その屋敷は放置されているようだ。
賊のアジトにしようとしてもそれだけ強い魔物が番人では、近寄ろうとしないだろうというのが冒険者ギルドの見解だった。
それらをエアリスに説明して琉海は自分の意見を言う。
「おそらく、あの四人は、その屋敷の魔物を退治して屋敷を手に入れたんだと思う」
「なるほど、居場所のない連中が見つけた城ってわけね」
会話をしていると、ポツポツと水滴が落ちてくる。
「雨が降ってきたわね。はいこれ」
エアリスはいつの間にか創造していた黒のローブを渡してくる。
「ありがとう」
雨が激しくなる前に着て、
「行くぞ」
琉海はそう言って走り出した。




