冒険者ギルド
翌日。
朝食を食べたあと、琉海は冒険者ギルドに向かった。
宿を出た通りを町の中心に向かって歩けば、すぐに見えて来る。
冒険者ギルドの建物は周辺のどの家よりも高く、重厚感のある石造りの建物だった。
入り口では人の出入りが頻繁に行われていた。
朝から仕事を見つけて、向かっているのだろうか。
冒険者ギルドについても、ヤンばあに少し聞いたことがあった。
冒険者ギルドは、町や国の依頼を受け、それを冒険者に公開し、依頼を達成したときに報酬がもらえるようだ。
冒険者は階級制になっており、E~Aとランク付けされ、最初は皆E級からのようだ。
そして、ギルドが最強と認めた者には、S級が与えられる。
そこまで上り詰めれば、どの国でも好待遇。
出身が平民だったとしても、貴族や王族の養子として迎えられることもあるそうだ。
しかし、その基準はかなり厳しく、S級を与えられた者は皆何かしらの偉業を成し遂げた者たちらしく、簡単になれるものではない。
よって大体の冒険者は金銭が目的でランクはおまけみたいなものだと、ヤンばあが教えてくれた。
まあ、自尊心の強い者はそうとも言い切れないとも言っていた。
ちなみに、ヤンばあはB級までが限界だったようだ。
そんな冒険者ギルドに琉海は入っていく。
中は広く、人が多い。
数人のグループで集まって話しているのが所々にいる。
鎧や武器を装着しているところを見るにこれから何かしらの任務を行うのだろう。
壁際に受付があり、その隣には大きな掲示板があった。
そこに貼られているいくつもの紙。
おそらくあれが依頼内容なのだろう。
琉海が辺りを見回していると、視線が集まっているのに気付いた。
誰もが琉海を見ている。
別に何か目立つ行動をしたわけでもない。
琉海がどうしたものかと、考えていると――
「どうかされましたか?」
一人の女性が琉海に話しかけてきた。
「あ、いえ……なんでもないんですが……」
琉海は何でもないとはっきり言おうとしたが、視線が気になって後半は尻すぼみしてしまう。
「そうですか。少しあちらでお話をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?」
女性はそう言って奥の部屋に案内してくれた。
部屋の中は、椅子が二脚と机が一つの面談をするような場所だった。
「こちらにお座りください」
女性に言われるまま、琉海は椅子に座った。
「それでは、お聞かせください」
女性はそう言ったあと、信じられないことを言った――
「貴族の方がこのような場所になんの御用でしょうか?」
女性の声はやさしく角が立たないような丁寧な口調だったが、表情を見るからに、あまり歓迎されていないように感じた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は貴族じゃない。誰と勘違いしているのか知らないが、違うぞ」
琉海が弁明しても女性は疑いの目を向けてくる。
「そんな嘘を見抜けないほど私は馬鹿ではありません。ギルドに貴族の方が来る場合は事前に連絡を頂かないとこちらとしても困ります」
「だから、俺は貴族じゃなって言っているだろ」
琉海はため息交じりに言う。
全然、人の話を聞いてくれない。
「では、その服装は何でしょうか。そこまで綺麗な服を着ている平民がいるというのですか?」
琉海は自分の服装を見る。
この服装は修学旅行の時から来ていた学生服をエアリスの創造の精霊術で復元したものだ。
確かに、新品同然のように汚れはないが、これぐらいは別に普通だろうと思ってしまう琉海。
だが、ここは異世界だ。
価値観が違う。
それに気づいて、ギルドに入ったときのことを思い出す。
琉海を見る視線。それらは、琉海の服装から貴族が入ってきたと思ってしまったのだろう。
「貴族の方が来られて冒険者との間で大騒動になったことが過去にあります。今日のところはお引き取りください。後日連絡をして頂いてからくるようにお願いいたします。こちらにも準備というものがございますので」
「じゃあ、明日の朝来るよ」
「かしこまりました」
女性は一礼してドアの方に手で示す。
ちょっと見に来ただけでこれか。
琉海は、まずこの服をどうにかしようと思い、ギルドを後にした。




