鎧の男
「隊長、ここにいたんですか」
副隊長がやってくる。
どうやら隊長を探していたようだ。
「おう、そっちはどうだ?」
「問題なく殲滅しました。この村に生き残りはいません」
「そうか。んじゃ、これをよろしく」
隊長と呼ばれた鎧の男は、担いでいた女を副隊長に渡す。
「これは村の生き残りですか?」
「ああ、だが、それは特別らしい。丁重に扱って国王に渡すように言われてる。くれぐれも殺したりすんじゃねえぞ」
鎧の男の言葉の圧力が増す。
その凄みに副隊長は固唾を飲んだ。
「それを傷物にして首を飛ばされる奴がいるのは別に構わねえが、俺の評価を落としたりしたら、全員殺すと伝えておけ」
「は、はッ!」
副隊長は胸に拳を当て、一礼する。
隊長の言葉が脅しではなく、本気であることを知っているからこそ、副隊長は最敬礼で応えた。
この隊長。
ディルクス・アルフォスは何度も部隊を全滅にしている。
そのどれもが、敵によってではなく、ディルクスが行ったものだ。
原因はどれも軍規違反に基づくもの。
紙面でみれば、統率を重んじているように思うかもしれないが、それは全く違う。
ディルクスはただ強い奴と戦いたいだけだった。
だが、自由に戦うことができるのは軍の中でも、絶大な実績と権力、力が必要になる。
ディルクスはそれを理解してからといもの、部隊での違反行為には、連帯責任で潰すようにしている。
結果を残していなければ、首を飛ばされているのは、ディルクスだったかもしれない。
だが、結果を出し続けているディルクスに上層部は殺すのは惜しいと思わせるだけの強さを示していた。
それからというもの、ディルクスの行いは黙認されるようになった。
ディルクスが部隊長になってからというもの、多くの部下が死んでいった。
最初は噂程度だったため、ディルクスの部隊に配属されて試しに悪さをする者もいた。
現在では、そんな馬鹿はいない。
それだけ、ディルクスが有名であるとも言える。
副隊長であるアイスト・ミリタは長く一緒の部隊で行動していた。
アイストが配属されてからは、部隊が全滅するようなことはなくなった。
それもアイストが部隊を統率するようにしてきたからなのだが、それも完全である保証はない。
何かやらかせば、自分も殺されるのは必至。
任務が終わるまで、気を緩めるわけにはいかないと、アイストは自分に言い聞かせる。
「それでは、私はこれを持って、待機場所に向かいます」
「ああ、俺も周辺を一通り見たら向かう」
アイストは一礼して女を抱え、ディルクスから離れていく。
「つまらない任務だったな」
燃える家屋を見て、ため息を吐くディルクス。
数十分、襲撃者たちは村にいたが、興味を引くものはなかったのか、すぐに村を出ていった。




