襲撃!
村は騒然としていた。
村人たちは口々に『奴ら』が来たと言う。
そして、ついに村の入り口に敵が駆け込んだ。
「やれ」
平坦な声で隊長が号令を出す。
『うおおおおおおぉぉぉ』
部下たちから、野太い雄叫びが上げる。
そして、男たちは馬上から槍を取り出し、村人たちに襲い掛かった。
『きゃああああ』
女性陣は悲鳴を上げ、逃げ出す。
「はははは!」
弄ぶかのように執拗に追いかけまわし、疲れ果てたところを背中から一突き。
「くそ……」
村人側もただやられるだけではなかった。
男性陣の中からは、勇敢に戦う者もいた。
ただ、技量の差は歴然。
足止め程度にしかならず、倒れ伏す。
「邪魔しやがって」
楽しんでいたところに水を差され、気分を害した男は亡骸に向かってそう吐き捨てた――
瞬間、その男の眼前に火球が飛んできた。
「ぐおッ!」
馬上にいたせで、大きく避けることができず、顔に火球が直撃。
「うがあああああああ!」
顔面を火だるまにされ、落馬し転げまわる男。
しかし、火は全く消えず、男は次第に動かなくなった。
「誰だ!」
近くにいた仲間が辺りを探る。
「不意打ちとはいえ、低級魔法の火玉でそんな大げさじゃな」
杖を突きながら歩いてくる老婆。
その老婆の周りには五つの火球が浮いていた。
「魔法を使える奴がいるなんて聞いてねえぞ!」
仲間の一人が地面に転がる亡骸に一瞬視線を向け、顔を引きつらせる。
「こんな老婆でも、それなりの修羅場をくぐってきたのじゃ、そう簡単には死なんぞ」
ヤンばあが杖で地面を軽く突くと、浮いている火球が男たちに飛んでいく。
「くそがッ!」
罵声を飛ばすが、男たちには逃げの一手しかなかった。
魔法の使える者とそうでない者にはそれだけの差があるということだ。
火球は逃げ惑う男たちを追う。
「その火玉は追尾式じゃ、逃がしはせん」
再び、ヤンばあが魔法を行使しようと杖で地面を突こうとした。
瞬間、後ろに影が落ちる。
ヤンばあが気づいたときにはもう手遅れだった。
後ろから一瞬で近づくことに成功した副隊長の男が短刀で一閃。
首を跳ね飛ばした。
「こんなババアに何を手こずっている! さっさと任務を遂行するぞ!」
『は、はい!』
ヤンばあの死によって男たちを追尾していた火球は消え、副隊長の叱責に全員が表情を硬くして応じ、散開した。
「さて、隊長はどこに行ってしまったのやら」
副隊長は村人の悲鳴が聞こえる中、やれやれと頭を振る。




