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原液

 琉海の勝利に観客たちが盛り上がる。

 その光景を眺めていたレイモンドは無言で机を蹴り飛ばした。

 ガタンッ! という音が室内に響き、舞台上で動く気配のないウルバを冷たい目で見下ろした。


「使えない奴だ」


 殺しのプロが期待外れだった。


「父様には、使えなかったと報告しておけ。それとあれは地下に縛っておけ」


 扉の前に立つ執事にレイモンドは言う。


「畏まりました」


 執事は一礼して部屋を出た。


「人間としては使い物にならなかったんだ。精々、化け物として使ってやる」


 レイモンドは懐にしまっていた瓶を取り出す。

 その瓶には黒紫色の液体が入っていた。

 無法者たちを捕まえて飲ませたときのモノよりだいぶ色が濃い。

 昨夜、屋敷にフードの男を招き、新しいモノを購入した。

 それも原液に近いものらしく、前回の数倍の値段で購入させられた。

 だが、レイモンドにとって値段は関係なかった。

 十数倍の値段を吹っ掛けられていても、買ったかもしれない。

 購入時、フードの男が注意事項を教えてくれた。


「レイモンド様、その液体は使い手を選びます。できるだけ、野心のある方に飲ませることをお勧めします。それと、これはサービスです」


 フードの男はそう言って、前回購入したときと同じ液体も数個置いていってくれた。

 純度の薄いやつは適当なやつを捕まえればいいだろうと思っていた。

 その中にウルバも入っていることだろう。

 それよりも、この高純度の液体を誰に使うかレイモンドは悩んでいた。


「野心のある者か……」


 レイモンドの頭の中に何名か顔と名前が思い浮かぶ。

 しかし、これを使って自分の思い通りに事が運ぶかは怪しい。

 レイモンドの狙いは琉海の抹殺。

 明日には、大会が終わる。

 大会が終わる前にどうにかしたいと考えていた。


「さて、どうするか……」


 レイモンドは瓶の液体を見つめながら、飲ませる相手を思案する。

 悩ましそうに言っているが、その口元には薄い笑みが浮かんでいた。


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