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第一歩

 村長の家は村の中心にあり、木造の建物だった。

 道すがら話を聞く限り、この村では木材は貴重のようだ。

 だが、どの建物も木造だ。

 そこのところを聞いたところ、草木が枯れたのはここ二十年の出来事らしい。

 昔からある家を大切に使って建物を維持しているらしい。

 そうこうしていると、村長の家に辿り着く。

 村長の家屋は周りの家より大きい。

 日本在住の琉海にとっては田舎の築一〇〇年ほどの厳かな雰囲気のある家に感じた。

 ザ・和風といったところか。

 村長と琉海は中に入り、廊下を進むと一つの部屋で立ち止まる。


「入って待っておれ」


「わかりました」


 琉海は頷いて、部屋の中に入る。

 室内は長机と四つの椅子がある部屋だった。

 適当に奥の椅子に座って村長を待つことにする。


「ねえ、これからどうするの?」


 エアリスは部屋の中で琉海の頬をつんつんと突きながら、聞いてくる。


「さあ、まだわからないよ」


「そう、できるだけ早くしてね」


「善処するよ」


エアリスと話をしていると――


「何を一人で喋っておるのじゃ」


 突然、扉が開き村長が声を挟んでくる。


「あ、いえ……なんでもありません」


「そうかい」


 村長は持っていたお盆の上に載せてあるお茶を琉海の前に置く。そのあと、対面に座りお茶をすする。

 少しの間、無言の空気が漂う。

 居心地が悪くなりはじめたとき、ガチャガチャと慌ただしい音が部屋の外から聞こえてくる。

そして、琉海たちのいる部屋の扉が開かれた。

 姿を見せたのは、さっき村長に見てこいと言われた男だった。


「村長! 祠の結界が無くなっていた!」


 息を切らしながら、大きい声を出す男。


「ほう。つまり、この坊やが言っていたことは本当だったと言うことじゃな」


 村長はそう言って琉海に視線を向けてくる。


「それで、お前さんの名前は何という?」


「えっと……ルイといいます」


「そうかい。ルイ、お前さんがあの祠の奥からやってきたのならば、何かを見た。もしくは、与えられたのではないか?」


 見たとは、エアリスのことなのだろうか。

 琉海は、誰にも見えていないエアリスに視線を向けそうになるのを堪える。

 そして――


「いえ、特には……」


 そう答えた。

 まだ、この村がどういう立ち位置なのかわからない。

 敵なのか。味方なのか。

 エアリスのことを話していいのかわからない状況では、話すのは得策ではないだろう。

 そして、話した所で見えないのだ。

 証明しろと言われてもできそうにない。

 下手に波を立て、話がこじれるのは避けたい。


「そうかい……まあ、良い。お前さんは客人だ。儂の家で休むといい」


「え、良いんですか?」


「ああ、構わんよ。何もない村だが、好きなだけ、休んでいくといい」


 そう言うと、

「アンリ! アンリはおるか!」


 村長は開いたままの扉に向かって大声で叫ぶ。

 奥のほうから、足音が近づいてくるのが、わかる。


「どうしたの。おばあちゃん」


 姿を見せたのは、黒髪を肩のあたりで切り揃えた少女だった。

 ガタッ!

 琉海は思わず腰を上げてしまった。


「雫……?」


 琉海が呟いた声は聞こえなかったようで、アンリと呼ばれた少女は首を傾げている。


「どうしたんじゃ?」


「あ、いえ、なんでもありません」


 人相が雫とそっくりで思わず立ち上がってしまったが、村長の声で冷静になった。


(よく考えろ。異世界に雫がいるわけがないだろ)


 よく見れば、違う部分はある。

 異世界という未知の環境で冷静さを失っていると琉海は自覚した。

 琉海の奇妙な行動に怪訝な表情をする少女。


「お騒がせしました」


 琉海は一礼して、着席する。

 その行動が功を奏したのか、アンリの表情から警戒心はなくなった。


「あれ、お客さん。見ない顔ね」


 アンリは疑問を村長に聞く。


「そうじゃ、今日からこの家に住むから、色々と教えてやってくれ。部屋は客間を使わせればええじゃろ」


「わかったわ。じゃあ、部屋に案内するわよ。行きましょう」


 アンリは、手招きして琉海を立たせる。


「では、お世話になります」


 琉海は村長にお辞儀をしてから、アンリと部屋を出る。

 誰にも見えていないが、エアリスも琉海と一緒に部屋を出た。

 このまま、捕まって処刑とかにならなくて琉海は内心ほっとしていた。


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