腕比べ
「なかなか似合うじゃないか。ま、俺ほどではないけどな」
という王子のナルシスト発言を無視して俺は剣を構える。すると、王子も焦んなよ、といつもの嫌味な笑みを浮かべて剣を構えた。数秒睨みあった後、俺が先手を打って王子に向かって剣を突き出すと、王子はひらりとこれを避け、その出された俺の腕を掴んで身体を蹴り上げた。一瞬息が詰まり俺の身体が後ろにふっ飛ぶ。背中を柱で強打し動けないでいる俺の方へ王子はゆっくりと優雅に歩を進め、目の前で止まる。
そして、ゆっくり顔を傾けて皮肉な笑みを浮かべながら、
「もうおねんねか?」
その一言が言い終わるや否や俺は王子に足払いをかけ、体勢を立て直す。
「せっかく俺が相手してやってんだ。もっと楽しませろよ?」
「言われなくても楽しませてあげますよっ」
会話の合間に攻撃を繰り出すが一向に当たる気配がない。王子は余裕そうに俺の攻撃をかわし続けた後、こんなもんか?とまたも挑発してくる。俺が渾身の一撃を王子に繰り出したが、逆に剣を腕から弾き飛ばされた。喉元に切っ先を突きつけられ、試合は終わる。息の上がりきった俺とは正反対に王子は余裕そうな笑みを浮かべ、また今度稽古でもつけてやるよ、と言って俺の喉元から剣を引き、優雅な仕草で鞘に納めた。
「おぉー!ロイス君すごいねー」
パンパンと手を叩きカサンが俺に向かって微笑みかける。ケンも興奮したように駆け寄ってきて、
「凄いですよ‼王子相手にあれだけやれるなんて!」
と俺の手を取って上下にブンブンと振った。エルバルドも鋭い目付きを幾分か和らげ、
「あぁ、本当にそうだな」
と満足そうである。俺は悔しさに口を少し曲げながら、
「負けたんですけどね…」
と呟いた。すると王子は俺の頭をくしゃりとなでて、
「俺の強さは常人では到底太刀打ちできないんだから、気にすんな。なかなか頑張った方だったぜ?」
と言って片手で前髪をかきあげながら、
「なあ、おまえら」
と3人に目を向ける。3人とも王子のナルシスト発言には慣れているようで、カサンが肩をくすめて、はいはい、と軽く流した。
「じゃあ、おまえら今日はこれで解散だ!!」
王子の言葉に皆、各自の持ち場へと戻り、俺は部屋へと帰ることにした。