王子の悪戯(1)
それから俺は自分用の部屋を与えられ、そこで生活をするようになった。最初こそ分からないことだらけでケンの世話になったが、今ではここでの生活にそれなりに慣れていた。ここでの生活が始まってすぐ、王子は視察とか何とかで城を一週間ほど留守にすることとなり、今日がその王子が帰ってくる日であった。そんなことを考えながら廊下を歩いていると、どん、と洗濯物を運んでいた侍女にぶつかった。
「すみません」
俺は慌てて落としてしまった洗濯物を拾ってやると、彼女は俺の顔をちらりとみて、ありがとうございます、と少しほほを赤く染めながら言った。
あの、お名前は?と彼女が聞いてきたので、ロイスですと答えると、背後から
「ほう、いい名前だな」
といつもより数段優しげな声がした。驚いて振り向くと、王子が笑いかけてくる。いつもの嫌味ったらしい様子ではなく、いかにも好青年という感じであった。
「お仕事ご苦労様。いつも感謝している。」
と彼が言うと、彼女は顔を更に赤くしてお辞儀をし、去っていった。
誰も周りから居なくなると、彼はいつもの口調に戻って、
「悪かったな。お楽しみ中のところ。」
と嫌味ったらしい笑いを浮かべる。
「あなた二重人格かなにかなんですか?」
と問うと、彼は楽しそうに笑いながら、
「僻んでんのか?俺がモテるのは仕方のないことなんだよ。」
と髪をかきあげながら切り返してきた。彼のナルシストは筋金入りらしい。じゃあなロイス、と言って彼は肩ごしにヒラヒラと手を振り、もときた方向へと帰っていった。そう言えば彼は宮廷でとても人気があるらしい。ケンが誇らしげに、彼に熱を上げている女性の数は膨大なんですよ‼、と言っていたのを思い出した。先程の彼女もその一人だったのだろう。確かに、さっきの彼は好青年といった感じであったため、合点がいった。
彼の猫かぶりは相当なものであったことを思い出し、今度何かあったらネタにでもしてやろうと思って、心に書き留めた。