船酔い
その日の夜に俺たちは小さな船でフラマルテへと旅立った。
カサンは甲板で吐きそうな顔をしながら口許を抑えている。
「船弱いんですか?」
「ちょっとね…でも全然大丈夫…おぇ…だから…。」
全く大丈夫そうに見えないが、どうしようもないので放っておくことにした。王子はカサンが苦しんでいる様子を尻目に高そうなお酒を片手にべろんべろんに酔っていた。
「おーーーい、ロイスこっちにこーーーい!」
エルバルドは呆れたようにその様子を眺め、ケンは楽しそうですね…とドン引きしながら王子を見つめる。無視していると、
「無視してんじゃねーーーぞーー!」
と勝手に肩を組んできた。
「うわ、酒臭いですよ。離れてもらえますか?」
「断る。」
「ちょっと、まじで離れろ‼臭いがつくでしょう!」
「……」
返事がないなと思うと同時にすぅすぅと彼の寝息が聞こえてきた。
「エルバルドさん……この人何とかしてください……。」
「うーーん。酒の入った王子はちょっと……。悪いが部屋まで運んでくれないか?」
「……わかりましたよ。」
何で俺がこんなことを……そう思いながら王子を部屋まで運んでベッドに寝かせ、そのまま部屋を出ていこうとすると、王子に腕を捕まれた。
「待ーて。昼間の話の続き聞いてけよ。」
「……起きてたんですか?なら、自分で歩いてくれませんかねえ。」
「うるせー、今起きたんだよ。」
王子は機嫌が悪そうにこちらを睨んでいる。
「話なら聞いてあげますから、離して下さいよ。」
そう言って王子を宥めると、王子は渋々手を離した。
「俺の母は、お前の村を襲った後、父に殺されたんだ。」