彼らの昔話(2)
sideロイス
悪い夢を見た。母さんが殺された日の夢だった。
俺はその日母さんと喧嘩していたため、拗ねて押し入れの中で眠っていた。真夜中ごろだっただろうか、扉を蹴り破る音が家中に響きわたり、数人の兵士たちが母さんを見つけると、その剣を母さんに突き刺した。
そのまま母さんは起きることはなく、兵士たちはそれを確認すると、去っていった。幼かった俺はその間押し入れの中でみっともなくぶるぶると震えることしか出来なかった。
兵士たちが去っていった後はいつもと変わらない静かな夜へと戻っていった。
村のほとんどの人は殺され、運良く生き残った人々も、兵士の進行を恐れて他の村落へ移り住む者が多く、とうとう俺はこの村に一人残された。
俺はそのあと風の噂であの夜やってきた軍隊は敵国のルワーネ王国であったと知った。母さん、母さん!あいつら絶対に許さない。そう思っていると、あの兵士たちが目の前に現れた。俺はそいつに掴みかかった。
目を開けると、なぜかそこには驚いた王子の顔があった。多分寝惚けておれが胸ぐらを掴んだんだろう。
状況を把握し、なんだ、あんたかと呟き姿勢をただす。いつもなら、ここで何かむかつく一言でも言ってくるはずの王子は心ここにあらずといった様子でふと、違和感を感じた。
なにかがおかしい。一言二言交わすと、王子はゆっくり休めと言って立ち上がった。王子の立ち去る姿を見送る俺の目には信じられないものが移った。王子のうなじにはアイスブルーのなにかがちらりと姿を現したように見えた。
俺は確信した。俺の傷の治りよう、王子のあの態度…。王子は女神と契約したにちがいなかった。