シャリマーニュ王国ラルク王子(2)
「ロイス…?知っているのか?」
王子は信じられないといった様子で俺を凝視した。
「いや…俺は知らない…口が…勝手に動いたんです。」
ラルクは面白いものを見つけたとでも言うように俺を見つめてきた。そして口を開く。
「そうか…君は女神の血族か。その髪色といい、そうに違いない。」
「女神の血族……?」
王子はラルクの言葉を繰り返した。
「予定変更だ。」
ラルクはそう言って腰に差していた剣を抜くと王子に刃を向ける。
「どういうつもりだ?」
王子は怪訝そうに眉をひそめ、自身も剣を抜いた。
「その子、もらっていっていいですか?」
「ダメに決まってんだろ。一体どういう風の吹き回しだ?」
王子がそう問うと、ラルクは突然突拍子のないことを言い出した。
「君は悪魔と契約したことってありますか?」
その言葉とは反対に穏やかに微笑んだ。彼はそのまま王子の言葉を待たずに続ける。
「僕はありますよ。」
そう言って彼は少々長めの黒髪をかき分けてうなじをさらした。そこには青黒く毒々しい星形の印がついていた。
「ロイスとそれに何の関係がある?」
はぁ…と彼はため息をつき、にやりと笑った。
「ここから先は君は知らなくていいことですよ。」
そう言って王子に襲いかかる。彼はそれを剣で受け止めた。
「だって僕が君を殺すから。」
それから二人の戦いが始まった。二人の剣が交わり、キンキンと音をたてる。暫くの間、俺は全く動けずにその行方を眺めていた。一際大きく音が鳴り響いたとき、ラルクの腕から剣が弾き飛んだ。王子が勝ち誇った笑みを浮かべてラルクに近づく。
「チェックメイトだ。」
そう言って王子が剣を振り上げた瞬間、ラルクの口が弧を描いたように見えた。嫌な予感がする。そう思ったと同時に彼めがけて矢が飛んできた。俺は思わず飛びだす。ドスッという嫌な音がして視線を下に向けると、脇腹に刺さった矢が見えた。そして、俺の身体はゆっくりと地面に崩れ落ちた。