遺物ナンバー2 河童伝説に隠された幻の調味料を追え 2
今回も小学生レベルの下ネタがでてきます。あと登場人物の会話でこの物語の世界観を伝えようとしました。遺物ハントに行く前の前ふりみたいなつもりで書きました。次話から話が展開していきますよ。きっと・・・・・・
具体的な内容としては12歳女子と10歳男児、どちらが、とある物を暗闇のトイレへ拾いに行くかということ話し合う回となっています。子供同士のそれこそ子供じみた議論のなかにも二人の関係においてどちらが主導権を握るかという男女の駆け引きみたいなものが備わっている雰囲気を出そうとしてみました。
また、その会話の中でこの世界の実状が読者様に伝わるように工夫してみました。
まあ、まじめに書いちゃいましたが子供が、○○○と繰り返し言うのが主な内容です。
ヤスが隠れ家として使っているシェルターは、本来はかなりの人数を収容することを想定して作られたと伺わせた。広く、天井も高く大きく広がる空間に、そこを仕切るように棚が並べられ、数々の遺物が所狭しと納められていた。
個室もあり、厨房や食堂と呼ばれるような空間、そして共同用のトイレや浴場があった。また、厨房や浴場、トイレにはポンプが設置されておりいつでも地下水を汲み上げることができた。
電気は使えなかった。自然エネルギーを利用した発電をするための設備はあったがコンセントから電気は供給されていなかった。そのためなのか設置された蛇口をひねっても水が出ることはなかった。
そんなシェルターヤスはろうそくの儚げな灯火を頼りにトイレに向かっていた。水が流れないことを知らずにミコトが便器に残してしまった便を拾い上げ土へ孵すためだった。水で流しても肥やしなどに再利用できるように設備もあるが稼働しているとは思えなかった。放っておけばいい、と主張するミコトにヤスは根気強く訴えなければならなかった。
「ミコト」
「なあに?」
干し芋を咀嚼しながら見つめてくるミコトに言った。
「悪いんだけどさ。自分のうんこを拾って土に埋めて。場所は教えるから」
「は?」
ミコトは不機嫌をあからさまに表情に出した。ヤスは思わず怯みながらも説明を始めた。
「あ、いや、だからさ。古代で都会だったところは病気がめっちゃ流行ったんだって。なんか宇宙から見えない波が来て便利な物が使えなくなっちゃったんだって」
「だから?」
語気を強めるミコトにさらに続けた。懇願するように言った
「だから、それでみんなパニクって食料とかエネルギーとかの奪い合いになっちゃんたんだって。病気もメッチャ流行ったって」
「はいはい、世紀末でしょ。知ってる知ってる。聞いたことがある。別にタンクに水入れてくれればいいでしょ? あたし自分で流すし」
「それができればいいんだけど、うんこを貯めるタンクもいつかパンクしちゃうから。だからできるだけ使わない方がいいってお父さんが言ってたんだよ」
「じゃあ、放置でいいじゃん。これからはあたしも外ですればいいんでしょ?」
「だから、古代の病気はうんこからばい菌がひろまったの。わおう系って小説でよく書いてあるんだけどさ。ここだって、死体がごろごろしてたからきれいにするの大変だったらしいよ。俺のお父さんが若い頃、仲間たち何人もで何日もかかったんだって」
ミコトはしばらく考え込むと告げた。
「わかった・・・・・・|
「よし、じゃあ、行ってきてよ。ミコト」
「無ー理ー、ヤス君行って」
「え。俺にうんこ見られちゃうよ?」
「しょうがないよ。ばい菌怖いもん」
「だろー?」
「うん。ヤス君の行ってることすっごくわかった。でもね」
「でも? なに? なんだよ?」
「学校の七不思議って知ってる? あ、ヤス君は学校も知らないか?」
知っていた。ここに潜んだ半年の合間、娯楽は限られていた。人力の発電機で音声や映像を再生する機器を動かしてみては過去の映像、音楽を楽しむことと読書くらいなものであった。人力の発電機は自転車のペダルをこぎ続けるというもので体力を奪われる。勢い読書で時間をつぶすことが多かった。
そして、ここには過去の遺物として児童向けの書物も大量に保管されていた。探検と称してこの地下施設を見て回ったミコトもそのような書物の存在には気がついていた。
「うん、僕、子供だからわかんない。それよりミコトお姉ちゃん早く行ってきてよ」
「いや、聞いてよ。トイレの花子さんっていうお話があってさぁ」
ミコトがあえて何気ない口調を装っているということは抑えきれない頬のゆるみから伝わってくる。
「そんなことより、俺、山や森を歩くときは動物の糞をチェックしてるから。狩るときとか逆に襲われないようにとか」
「え? 急になに言ってんの? っていうか、動物っていっても犬とか猫でしょ?」
「あとうさぎとか鳥とかUMAとかね、古代の動物園とか実験施設から逃げ出したって奴もいるし人を襲うのもいるから」
「ふーん、わかった気をつけるね」
神妙な面もちで頷くミコト。ヤスは一番言いたかったことを言うタイミングと見て取った。
「うん、だから怖いだろうからついてきていいよ。動物に襲われるかもしれないから」
「あ、そう。ここにれば平気でしょ?それにこの辺はあんまり人がいないから動物もいないんでしょ?田んぼとか畑がある地域に人は集まってるって聞いたよ? この辺はコンクリートがあって農業には向いてないから人も集まらないって。だからヤス君も隠れ家にしてるんでしょ?」
「そうだけどさ。念のためにさ」
「大丈夫だって。あたし動物好きだし。それよりあたしが小学生のときの話なんだけど、ある日ね、学校に忘れ物しちゃってさ。もう、外はまっくらな時間だったんだけど、すごく大事な物だったから取りに行かなきゃいけなくてさ。あたし、パパとママもうちにいなくて誰も頼れなかったんだけどどうしても必要だからさ、一人でね。いったの。学校へね」
「へ、へー、よかったね。記憶がもどってさ。あ、腹減ったー。おれ。もうおなかぺこぺこでおなかと背中がくっつきそうだよ。ごはんにしよ。肉、仕込んであるんだ。今日はバーベキューにしようよ」
「うん。あとでね。それより聞いてよ。あ、もしかして、怖いの? 男子なのに?」
「怖くないし。ただ腹が減っただけだし」
「うん、コレが終わったらご飯にしよ。すぐ終わるから。でね、いろいろあって学校に着いたんだけどさ。昼まの学校とちがって、なっていったらいいかわかんないけど空気が全然違うの。あ、っていうかここも昔は大学だったんだよね? 校門のところに書いてあったけど」
「そうだけど・・・・・・いま、関係ないし」
「え、おんなじ学校じゃん。で、さあ、その日も今日みたいに暑いくらいの日だったのに妙にびんやりするっていうか、なんか、いやだなーいやだなー、こわいなこわいなーって重いながらさ。校門をとおって行程を歩いてるときにね見えたの廊下の窓ををね、こうーすーっと白い影が」
ヤスは手のひらをミコトに突き出した。
「もういいって。俺がミコトのうんこを拾ってくるよ。でも恥ずかしくないの?」
「うん、忘れたの?」
「何を?」
「考えてみたら、あたしヤス君のお尻拭いたんだよ。お漏らししちゃったヤスくんの」
「わかった。いってくる」
ヤスはそう言うと部屋を出た。ランタンの灯火で照らされる無機質な素材で表面を加工された廊下。見慣れた廊下が見た目は同じでも本質が全く違う存在に取って代わられたような錯覚に陥る。
『こ、この先の暗闇に何か隠れてたりしないだろうな?』
恐ろしさを押さえ込むために自分に言い聞かせる。だが体は正直でついつい小走りになる。影と光が揺らめいた。ろうそくの火がゆらめいたことに気がつく、消えられて困ると慌てて足を止める、忍び足になった。
焦れったい想いでやっとのことトイレにたどり着いた。まずは男子用に入る。用具入れのゴム手袋を身につけると洗面台に蓋が取られたまま放置された瓶を手に取った。
『いざっていうときはコレで・・・・・・』
手に取った瓶を見つめると女子便所の戸を開け放ちランタンをおいた。右手で瓶を掴み、足でランタンを床を滑らせるように移動させながら、左手でひとつづつ個室の扉を開け放つ。そして、便器をのぞき込むということを繰り返した。そして、最後の扉を取り出すべき物を見つけた。
「キレイな顔して人使いがあらいよな。ミコトの奴」
自分が感じている恐怖の元凶であったミコト。悪態のひとつもつきたくなった。右手を便器に差し入れる。
『このまま、手を引っ張られるなんてことないよな』
そのような恐怖に冷や汗を書きながらも目的は達成された。思わず右手のミコトの便を見つめる。
『何か、入れ物持ってくれっばよかったな。っていうか、ミコトもあんまりお腹いっぱいまでご飯食べられてないんだな。量が少ないもん』
バーベキューの食材をたくさん用意しようと決意した。恐怖を忘れて顔を上げた。目の前に白い影がいる。心臓が跳ねた。動けない。鼓動だけが耳を打つ。そのうち白い影から低い声
「あたし、きれい?」
ヤスは声も出せずにただ震えていた。しばらくすると白い影からまたも声。
「ねえ、あたし、そんなにきれい?」
女の声だった。言葉の意味と女の声。ヤスの脳内で電光石火。体がまず動いた。
「ポマード、ポマード、ポマード」
呪文を唱えて瓶の中身を白い影へ振りかけた。
「いや、ちょっ」
白い影がひるんだ
『やらなきゃ、やられる』
右手で握った物を全力投球。
「あっ!」
白い影から現れたのはミコトの笑顔。気がついた。だが遅かった。刹那のあとにミコトの笑顔は茶色く染まった。
「口裂け女じゃないもん」
うずくまって啜り泣くミコト。その横で土下座をしながらミコトの笑顔のためならどんな危険でも冒すことにヤスは決めた。
お読みいただいてありがとうございます。
お楽しみいただけましたでしょうか。
ラストはミコトがキレルか泣くか迷ったのですがヤスがミコトを喜ばせようとする行動原理を自然に身につけるには、自分がミコトを泣かせちゃった、傷つけちゃった、という罪悪感があると自然かなと思ったので泣かせることにしました。まだ、恋に落ちるというよりはそのほうが自然な年齢や出会いかなと思ったからなのですがいかがでしたでしょうか。
長い期間書いてるので忘れてましたが物語上ではこの二人、まだ出会った当日なんですよね。
悪い意味でやばいっすね。展開が遅すぎる気がしてきました。
ちなみに次話以降、河童が実在するという体の話を書く前振りとしてUMAとか言わせてますけどうでしょうか?
一応そこから新キャラが登場してアクションが連続していく感じの予定なんですけど・・・・・・
まあ、いつになるかわお約束できませんがお楽しみにしていただければうれしいです。