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遺物ナンバー2 河童伝説に隠された幻の調味料を追え 4

お久しぶりです。お待ちいただいている方がいたらすいません。


今回はキャンプ的にはしゃいでいるところへ敵方の兵士がやってくるのですがそこをどうやってしのぐかとうことを描写しています。


逃げるか戦うか。戦うならそれはなぜなのか? ということを話し合う中で、ヤスとアリッサの間に信頼関係が生まれていく様を描きました。


また、男がカッコつけるところ、マウントを取り合う様って、逆にかっこわるいという雰囲気を敵の兵士たちの言動で表現しそこをユーモラスに表現してみました。


ニヤリと笑っていただきながら楽しんでいただけるとすごく嬉しいです。

ヤスはミコトとアリッサに声をかけた。


「やばい、隠れて」

 

 ヤスの言葉に含まれた切実さに、大声で感情を爆発させていたのが嘘のようにアリッサは口を閉じた。三人はかつては整えられた植え込みであったろう茂みに身を隠すとヤスの指さす方を見た。


「ナントネ兵か。やばいね。うちら・・・・・・ っていうか二人ともホクトネのクニの人だよね? 今さらナントネの人とか言わないよね?」


 アリッサの問いにうなずきながらヤスは近づいてくる男たちの様子を観察した。

 

 たいまつが四つ見て取れた。その灯火がそろいの胴当てにヘルメット、そして背中に背負われた槍であろう影を浮かび上がらせている。駆け出したりはしないもののしっかりした足取りで近づいてくる。夜の静寂の中アリッサの鳴き声が聞かれていてもおかしくはない距離であった。


「どうする? あの子、三人乗れるかな」


ミコトはつないである白馬をちらと見ながらヤスに小声で尋ねた。


「たぶん難しいよ。それに全力で走れないと思う。疲れてるし夜で暗いし」


ミコトは口を開かずただヤスの瞳を見た。ヤスはその視線を受けて頷くとアリッサに言った。


「ローラースケートってわかる?


アリッサは頷いた。


「うん。今はもってないけどちっちゃいときはよく乗ってた」


「よかった。二つ持ってきてあるんだ。色違いで。お姉ちゃんが使うかもって」


 ヤスは二人を手で制するとテーブルの下に置いてあったローラースケートをも素速い身のこなしでもってきた。


「二人はこれで行っちゃって。時間は稼ぐから」


「なに言ってんの? 一緒に逃げるよ。」


 手首に伸ばされたアリッサの手を振り払い言った。


「この場所は守らなきゃいけないから」


アリッサは目を見開いた。


「戦うつもりなの? 誰か大人の人たちが助けに来るまで隠れてようよ。それにここにこんなにごちそうがあるんだもん。あいつらだってまずはこれを食べるよ。その隙にどこかに隠れよう」


ヤスは首を横に振った。


「ホントに大人はいないから。それに、あいつらにこの場所をとられちゃだめなんだ。ここが我が家なんだもん。誰にも取られたくないし、それにここが盗られてたらお父さんが帰ってきたとき困っちゃうから」


 アリッサはしばしヤスの顔を見つめていた。長く深いため息をつくと髪をかきむしる。そして髪を振り乱しながら頭を振った。そしてさらにミコトを見つめた。質すような視線だった。


「ねえ、何か考えがあるんでしょうね?」


 ミコトの問いヤスに言った。


「うん。実はレコードとプレイヤーも持ってきてるんだ。手で回せば音が出せるし、持ってきたのは伝説の階段の語り部が語ったやつだから。それのお化けの声のところをリピートで聞かせればあいつらだって逃げて帰るし、お化けの噂が流れれば誰も近づかないよ」


アリッサは首を横に振った。


「大人はお化けなんか怖がらないよ。音の鳴る方に近づいて確かめようとするだけだって。それに、今日はうまくいっても噂が逆に私みたいな物好きな探索者を集めちゃうかもでしょ?」


 ヤスはなにも言わずにいた。アリッサの言ったことは想定の範囲だった。心配をかけないために伝えた方便だ。ここを無抵抗で明け渡す気にはなれない。古代の遺物はまた集めればいい。だが、この場に蓄積された父の想いの代弁だけはしなければならないような気がしていた。


 ヤスはこの気持ちにまだ名付けることができなかった。


 また、ミコトもアリッサも巻き込んではならないと思っていた。


『これは俺だけの戦いだ。俺にしかこの気持ちはわからないんだもん。だから二人とはここでお別れだ。どうすれば勝てるかわかったし』


 追われる振りをしてシェルターの中に奴らを誘い込む。混乱させ、分散させ、さっき拾った拳銃であいつらを一人一人撃つ。


『俺はお父さんみたいに無くしてから取り返そうなんてしない。最初っから無くさないように守り抜くんだ』


 うまく行くかどうかは関係ない。ただやるだけ。


『やつらに、もう何も無くしたくない俺の気持ちをわからせてやるんだ』


 そう決めた。


 思い詰めた顔のヤスの肩にアリッサは手を乗せると言う。


「まだ間に合うよ。逃げよう? 家なんてどこでも自分がいるところが家になるんだから。ね? 花子ちゃん逃げよ?」


「やだ」


 ヤスの強い眼差しを受けてアリッサは緊張の糸が切れたように息を吐き力を抜くと言った。


「やれやれ。しょうがないにゃあ。私が二人に女の戦い方を教えてあげるとしますか?」


 怪訝な顔を浮かべるヤスとミコトにアリッサは続けた。


「ねえ、近くに倉庫的な場所があるんでしょ? 子供だけでこれだけの物を運べるわけないんだから」


 答えずにいるヤスにアリッサは続けた。


「お酒と食べ物をガンガン持ってきて。いい? あとノリのいい曲が入ったCDガンガン回して。古代にクラブで流行ってた奴。あ、花子ちゃん、クラブミュージックってわかる?」


「なんとなく」


 ヤスが頷くのを見て取ると続けた


「みんな無事だったら私も倉庫につれてって。そこにある物を3つ頂戴。これ、契約。どう? 契約なら私にも手伝わせてくれるでしょ?」


「何を?」


「うちら三人とこの場所を守ること」


 ミコトが不安げに言った。


「あたしもここを離れたくないけど・・・・・・でも、あたしにできることなんてあるのかな」


「難しいこと考えないでいいから。あいつらの目を見ながら頷いて、さすがぁ、すごーい、そうなんだぁ。この三つ言っとけばいいから。いい? 男を操るさしすせそってやつ。二人とも覚えといて損はないよ」

 

 意味がよくわからず怪訝な顔をしてヤスとミコトは顔を見合わせた。そこへ、とうとう兵士の声がした。


「おい。そこに隠れてるのはわかってるんだぞ。出てこい。お前等ホクトネの人間だろ? 俺たちはナントネの兵士だ。逆らうと承知しないぞ」


 アリッサは上着を脱ぎ、まとめていた髪をほどいて広げると茂みから姿を現した。上着を脱いであられたタンクトップの胸元は男の視線を釘付けにするほどに豊満であった。満面の笑みで胸を両腕で挟みながら胸を突きだし、それに併せて内股に足をそろえて言い切った。


「いらっしゃいませ。ようこそ、クラブ ラグーンへ。ほらミコトちゃんも出てきてよ」


 戸惑いながらも茂みから姿を現したミコト。伸びやかな四肢を露わにしたビキニ姿、足下にはローラースケートとおい出で立ちであった。


 男たちに動揺が広がった。


「お、おい。お前等任務を忘れるなよ。俺たちは先輩たちの頭を喰っちまった未確認生物を探さなきゃいけないんだからな」


 兵士の一人のその言葉もむなしく、ひときわ体格のいい兵士の太い声が響いた。


「ここで休憩しようぜ。腹が減っては戦はできねえだろ。第一、俺たちはぐれちまったんだからよ。これ以上、体力無駄にするぐらいならここで休んで日が出てから動こうや」


 そして宴が始まった。


「お兄さん、筋肉すごーい。」

 

「いや、ほら俺、ソウニシ出身だから。産湯は波乗りしながらってのが当たり前だし。ソウトンの奴らより激しい波にもまれてっから。あの踊ってる娘に波乗り教えてやりたいなあ」


「すごーい。波乗りできるんだー。ホクトネは死の森のせいで海に近づけないからなー」


 ほかの兵士が顔をつきだし話に割り込んでくる。


「ここの音楽。いい趣味してるねぇ。ちゃんとウェスコス言葉を使っているのがたまらんよ」


 アリッサとソウニシの男が顔を向けると得意げに語り出した。


「ヒップホップだからね。ソウトンは鉄船くろがねせんが来てからあっちの船員が海外の文化をずいぶんと持ち込んだからね。ま、ソウニシまでは届かない文化がいっぱいあるんだが音楽もその一つだ。


「そうなんだー。言われてみればお兄さん、なんだか文化的ぃ。音楽のこと教えてぇ」


「ああ、いいよ。今聞いてる曲と似た曲でニホンゴラップとかいうのも聞いてみたけどありゃだめだね。同じ曲にボウソウ言葉で歌ってるんだけど、元々あちらの言葉のための曲なんだから。ははは。無理があるよ」


 アリッサは本音をおくびにも出さずほほえみながら男の杯に酒を注ぐ。


「すごーい。お兄さん何でも知ってるー。ほらほら、飲んで飲んでぇ。あたし、お酒が強い人がすきー。もう、ホクトネや鈴木組の時代は終わったんだから。ねえ、これからもっとナントネのみなさんと仲良くしたいのぉ、よろしこー」


 このような調子でアリッサは男たちの杯に酒を注ぎ続ける。ミコトは激しいリズムにのりながら踊っていた。男に酌などしたことなく、アリッサのように体を密着させることにも抵抗があった。アリッサに言われたことを守れないことに多少の申し訳なさを感じてはいたが、自分は酌よりも踊りの方が男たちを高揚させられると確信があった。


 ヤスは自転車を漕いで発電している。もちろん汗だくだ。


『もう、なんで俺ばっかりこんなこと』


 恨みがましい目線をアリッサに送るとアリッサは目配せをして見せた。その方向を見てみると兵士の一人が腕を組み、あたかも船を漕ぐように首を前後に揺らしている。見ているとやがて横たわり完全に寝入り始めた。それをからかっていた男たちも、あるものは机に突っ伏し、あるものはいすから転げ落ちた。


 しばらく様子を見ていたが大いびきをかき男たちに起きる気配は見受けられなかった。

なんとはなしに三人は集まり顔を寄せた。


「ねえ、この人たちどうしたの?」


「ああ、お酒に眠り草を煎じたのを混ぜただけ。たぶん明日の昼くらいまでぐっすりだよ」


「でも、どうするの?ここで寝かせたら風邪引いちゃうよ?」


尋ねてくるミコトにアリッサは説明した。


「もう、春だし大丈夫でしょ。それより、こいつらをどっか遠いところにおいてこないと。できれば幻草まぼろしそうが生えてるあたりで。そうすればこいつら今日あったことを幻だと思いこむんじゃないかな」


「それならいいけど。なんか悪いことしちゃった気もする」


つぶやくミコトにアリッサは微笑んだ。


「大丈夫。男なんて夢見させてればいいの。夢の世界に生きる生き物なんだから。それに、ここをキレイに片づけて、しばらくうちらもここに近づかなければ、もし、あいつらがここに来てもわかんないよ」


ヤスが尋ねた。


「もしかして俺たちにも河童探しを手伝えってこと?」


「あ、よく覚えてるね。うん、元々あたし河童探してたけどさ。あいつらも未確認生物とか言ってたでしょ? あいつらより先に見つけてあげないと」


「え? なんで?」


「だって、河童と仲良くなりたいんだもん。あたし」


「え? 捕まえて調味料にするんじゃないの? むっちゃ高く売れるらしいよ?」


「花子ちゃん。あたしはね、もっとビッグマネーをつかみたいわけ」


「それはわかるけど」


「あいつらも言ってたでしょ? 鉄船がなんたらって。海の向こうの土地からいろんな物がナントネに入ってきてるの。海の向こうに行ってビジネスできたら楽しそうでしょ?」


「うん、だから、なんで河童」


「だって、船を使うより河童と友達になったら、安く荷物運んでもらえるかもしれないでしょ。それに人とちがう姿で人のそばで暮らす極意とか聞きたいしさ」


目をきらきらと輝かせながら語るアリッサを見てヤスは言った。


「いいね。ロマンがあるよ」


目を輝かせて見つめ合う二人。ともの海の広さはまだ知らない。


そんな二人に挟まれたミコトだけは首を傾げていたのであった。


『そういえば、ヤスはどうして怖い話のレコードなんて用意してたんだろう? あたしに内緒で。そう、あたしに内緒でっ!』


 ヤスがやたらとシャンプーを勧めてきた理由に合点がいった。思わずヤスに言う。


「ロマンの前にご飯。ご飯の前にお風呂、ね。お姉ちゃんが頭洗ってあげるから」


「いいよ、めんどくさい」


 ヤスはうるさそうにそう言うとミコトを見ることもなくアリッサと海の向こうについて想像を巡らせながら語り始めた。


 そんな二人を見ながらミコトはいつか必ずヤスとミコトのシャンプー中に怖い話のレコードを聴かせてやると心に決めた。


最期までお読みいただいてありがとうございます。


あと7月にこの作品以外にも拙作をいくつか一気読みされたかたがいらっしゃるようなのでここで改めてお礼を言わせていただきます。


ありがとうございます。


今回はヤスとアリッサの切実な想いを匂わせてみましたがいかがでしたでしょうか。


作者的に今回はアリッサのことが少しわかった気がした回でした。ビジネスを考えてる、っていうのなんてほんとあのシーンを書いてる最中にポンっと頭に浮かんだことでした。そのおかげで今回の最期まで書き切れました。


元々アリッサはナンシーという名前にして「ナンシーより緊急連絡」ていう、昔、なにかのゲームで使われていたセリフを言わせたいなー、っておもってたことから投入したキャラなんですが、そのまんまじゃマズイとおもって名前を変えたんですよね。


ただ書いているうちにかなりの苦労人だという気がしてきちゃって長くつきあうキャラになるかなーと思い始めたところです。


まあ、行き当たりばったりでかいてるのでお約束はできないですけど。


そして、やっと次回から河童探しに行けそうです。ほんとお待たせしました。

できるだけ早く書きたいとは思うのですが、俺はどうにもシリアスというか暗い雰囲気の作品になりがちなので明るくしようと意識すると時間がかかってしまいます。


すいませんが気長にお待ちいただけると助かります。


それでは、また。次回でお会いしましょう。


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