片手間に名付け
少し短いです。
「あ、やっぱり買わないで俺が造るか。」
俺は偽装用に色々と買ってから声をあげた。
最初は何処かで適当に見繕うつもりだったが、パッと見ただけでもたいした武器が無かったので自分で作った方が探すより、簡単だと思ったわけだ。
「次はちゃんとしたところで借りるか。」
「?」
少女が俺に抱き抱えられながら疑問を示した。
「あ~、君の武器を造るのさ。
で?君の武器何?造るから。」
「造れるのですか?造ってくれるのでしたら望むところですが。
私に勝つためにわざとナマクラを造って勝ってもあなたを認めたりはしませんが。」
「いや?そんなんしなくても指一本で勝てるし。」
「なっ!?そこまでバカにしますか。
覚悟してください!貴方を確実仕留めてあげますよ。主様。」
何故かバカにされていると感じたらしい。
いや、確かに指一本はそう感じるか。
でも事実だしな!思い知らせればいいことか!
そう結論付けて適当な鍛冶屋に入った。
「失礼だが火事場を貸して貰えないか?」
そう言うといきなりの闖入者に驚いたのか目を見張っている。
話しにならなさそうなので他の場所を探そうかと思っているといきなり声を掛けてくるやつがいた。
「おい!いきなり何だ?いきなり入って作業場を貸してくれだと?
ここは素人が来る場所じゃないんだ!帰った帰った。」
嫌に反抗的なドワーフのまだまだ青年っぽい人物が威圧的に帰った宣言だ。
こいつも素人と大差無いだろ。
「おいおい。お前はいつ人に素人と言えるくらい上達したんだ?
それに、貸して欲しいってことはそれなりに腕に自信があるってことだろう?
1品造らせて決めたら良いだろう。」
がっはっはっは。と豪快に笑いながら他とは一回りも二回りもムキムキな、いかにも好々爺といった見た目のドワーフが出てきた。
「ボス!」「親分!」「棟梁!」「大将!」
次々に周りのドワーフが叫ぶ。
何か呼び名が盗賊のお偉いさんみたいなんだが‥‥‥。
「え?貸してくれるのか?よし!得意な武器は何だ?」
「え?えっと‥‥‥取り合えず籠手で。」
「んじゃ、貸してくれ。」
「は、はい。こちらです。」
そして案内された火事場に魔術を掛けた。
「はっ?」「えっ?」
見学のドワーフ達と少女が同時に困惑の声を上げる。
「どうかした?」
「いや!どうかした?じゃねえよ!何造る気だ!大量殲滅兵器でも造る気か!?」
「はっ?こいつの籠手だが?」
「いや、どう見てもただの籠手にそんな魔術を使わねえよ!」
一人のドワーフが鼻息荒く捲し立てる。
「まあ、造れば分かる。
あ、お前ら。熱に強くなければ出ていった方がいいぞ。へたすりゃ死ぬぞ。」
そう言いながら取り出したのはミスリル、オリハルコン、アダマンタイトだった。
「‥‥‥‥‥‥‥。」
一同は何も言わずに黙り、一人また一人と次々に外に出ていった。
素人でもこの伝説の希少金属を変形させるには高温が必要だと分かっているからであろう。
「何でそんなもん持ってんだよ。マジで何もんだ?兄ちゃん?」
「自由な旅人だ。」
そう言って作業を始める。
少女もドワーフも熱くなり始めて、5分も経たずにいなくなった。
何故か少女は悔しさと嬉しさが混ざったような顔をして、微妙な足取りで出ていったが。
「完成!」
出来たのは狼の爪を象ったかなり強い武器だ。
「「「「「いや!早すぎるだろ!」」」」」
俺がこの籠手を造るのに掛かった時間は30分程度。
普通だとこの50倍はかかる。
「ほら、着けてみろ。」
ポイっと籠手を投げ渡す。
それを危なげなくキャッチして少しぐらつく。
「こ、これは‥‥‥!」
かなり驚いているみたいだ。
まあ、オリハルコン、アダマンタイト、ミスリルの3種類を全部使って出来た武器なんて国宝になってもおかしくないからな。
まあ、その3種類は全部、希少金属だったから持っている者すら珍しいんだよね。
「「「「「「し、師匠と呼ばせてくれ!」」」」」」」
「却下。」
「そうだぞ!お前ら!俺達が師匠と呼ぶには実力が離れすぎている!
立場を弁えろよ。」
「あ?お前は問答無用で場所を貸そうともしなかっただろうが!」
「ふっ、俺はあれを見て心を打たれたのさ。」
最初に俺を素人扱いしたドワーフが調子にのって他のドワーフにボコボコにされていた。
それを横目にドワーフ達の熱心な勧誘?を抜け出して、纏め役っぽいドワーフに話し掛けた。
「これで目的は達成したからもう行くわ。
場所を貸してくれてありがとな。」
「ちょっ!名前だけでも教えてくれよ!
希少金属を持っているだけでなく加工の技術まで持っているなんてそこらへんの国の王より珍しい。」
「あ~?俺はユウ。それじゃあな。行くぞ。」
素っ気なく答えて、再び少女を連れて歩きだした。
少女って呼び方は何か素っ気ないな、と言うか呼びにくいな。
取り合えず何か一応の名前を決めるか。
「んー、君には一応の名前を決めとこう。
ときどき何て呼べばいいか迷う時があるし。」
「べ、別にいいですよ。貴方が私に主と認めさせればいいんですから。」
「よし!それじゃあ君の名前は零華だ。
よろしくな!」
少女の名前は銀色の髪の毛から、氷。氷から零度の零。華は第一印象が華があると感じたからだ。
「よ、よろしくお願いします‥‥‥。」
零華の顔に少し赤みがかかり、口の端をつり上げていたのには気づかなかった。
それからダンジョンに入った。
先日のように絡んでくるやつらはいなかった。
優は奴隷だと分かっているからだと思っているが、実は先日叩きのめした相手は、この辺りでは有名な悪で何人もの人間がその毒牙に掛かって悲劇を生み出していた。
そのお陰で優の顔は結構広く知れ渡り、ある者は英雄、ある者は敵、ある者は化け物として見られていた。
今回は魔獣を片手間に殲滅しないで零華に倒させて既に15階層までいた。
「私はサポーターとして買ったと聞きましたが?」
ギルドに寄ったときや、奴隷商人と話をしていた時等に聞いたのか分からないが、一応買われた目的は知っているみたいだ。
「そうだけど?零華が強くなるには手っ取り早いと思ったんだけど。」
「いえ。そう言うことではなく、戦闘能力を期待しているわけでもないのに戦闘をさせる意味が分からないのです。」
氷魔法で近くのスライムやフレイムと呼ばれるパッと見、人魂みたいな魔物を纏めて倒して聞いてくる。
確かに零華を買った目的は戦闘面ではなく、知識面だ。
しかし、ダンジョン上層で何かハプニングが起きて、俺が零華を守れなくなったら直ぐに死んでしまう。
これだけと言うわけではないが、簡単に言うと不安を払拭するためであった。
「零華がまだまだ弱いからだよ。」
この言葉に零華は少しむっ、としたが直ぐに黙った。
最初に見せた俺の剣技と体さばきを見てから、驚くほど従順になった。
「まあ、もう時間無駄だし一気に20階層まで突き抜けるか。
零華、俺の手に掴まれ。」
すぅ、と手を零華の前に差し出した。
片足しかないから速く移動することが出来ないからである。
「はい。」
彼女にどんな心境の変化があったのか分からないが、にっこりと満面の笑みで俺の手をとった。