聖女は俺の嫁?
ダンジョンって不思議だよね?
地下なのに空気もちゃんと通っていて、宝箱には宝石や剣とかが入っている。
回収されても、ある程度期間が経つと新たに何かしら入っている。
ボス部屋と他のエリアに別れていて、10階層ごとにボスが存在する。
魔物を完全に殲滅しても次の日には、元通りになり、いなくなることがない。
そこでこんなことを考えた事はないか?
誰かがダンジョンを管理して、補充しているのではないのか?と言うことに。
はい!そう考えた貴方!正解です!
ダンジョンマスターはいるのです!
‥‥‥と言うことで俺は忙殺された昔の思い出に残っている年齢不詳のダンジョンマスターに挨拶するために、迷宮都市モンダスに来ました!
「おお~、懐かしい。ホント変わってねえな、この都市。」
転移魔法で一瞬でモンダスに来たんだけど、朝起きたら縛られたままのリーサウェルがどうやってか裸になって、俺の布団に潜り込んで、身体の上に乗っかっていたから驚いた。
大きな胸が俺の身体の上でひしゃげていた時は、危うく理性を失いかけた。
胸を揉みまくって、濃厚なキスしまくったけど。
そこからリーサウェルが服をフリフリのワンピースを着て来た時は、あまりの可愛さに、またも理性を押し留めるのに苦労した。
閑話休題、
俺の目の前には、レオドラ王国とは、比較になら無い豪華な建物が所狭しと並んでいた。
庶民の建物1つでも、レオドラの貴族の館と同レベルに見える。
モンスターから採取出来る魔石が、国の主な収入源となっていて、魔石は多くの魔道具に使われるため需要が高い。
それによって金持ち国になったらしい。
ここでは冒険者は探索者と呼ばれ、ダンジョンでモンスターを倒して、そこから採れる魔石で生活している者が、酒場や娼館で楽しんでいる。
奴隷商人等も、沢山の奴隷を引き連れていて、大きなが有ったりと、盛んなようだ。
見ていて気分の良いものでは無いが、俺から何かするつもりは無い。
個人的にムカついた奴が奴隷商人だったら嫌がらせで何かするかもだけど。
「よしっ、先ずはルールに乗っ取って冒険者登録し直しますか‼」
昔も冒険者登録していたのだが、3年以上音沙汰が無いと、登録が削除される。
なので、再びギルドに登録しに行くのだ。
「そう言えばリーサは魔王だろ?こんな都市に着ていいのか?」
魔道具で、尻尾や羽根を隠しているが、魔族がこんなところに来て良いのだろうか?
「大丈夫よ。既に魔王は数年前に譲ってるのよ。」
そうなのか!魔王城に入っても良かったのか?
すると俺の考えをよんだのか‥‥‥
「今の魔王は私が先代魔王と言うことを考慮してか、城に入っても何も言われないの。」
そうだよな。魔王の座を取られたのではなく譲ったのだから実質、魔族の中でも最強ポジションの筈だ。
文句を言おうものなら、問答無用で吹き飛ばされそうだ。
「ふーん、俺がいない間に色々とあったみたいだな。」
「ええ、国を纏めたり、厄介な魔物を倒させたり、弱い自称勇者を吹き飛ばしたり、色々大変だったのよ。」
そう言いながら腕を組んでくる。密着して身体のあちこちが当たる。
柔らかな感触を堪能しながら、ギルドに向かって歩く。
リーサが目立つため、弱い認識阻害の魔道具を付けさせたが、幸せオーラを振り撒くリーサの魅力を抑えきれる筈も無く、視線を向けられる。
好奇な視線、見惚れる視線、殺気の籠った視線、敵意剥き出しの視線、様々な視線が向けられる。
俺は元の世界からもよくきつい視線で見られていたが、ちょっとイラッとしたので殺気を周囲にばら撒くと、散り散りに、一目散に逃げていった。
そんな一悶着がありながらギルドに到着し、中へと入る。
入った途端に好奇の目が一斉に向けられる中、悠々と受付まで歩く。
「こんにちは、今日はどう言ったご用件でしょう?」
受付の美人さんが完璧な営業スマイルで聞いてくる。
冒険者ギルドの受付は滅茶苦茶仕事が出来る人以外では、容姿が優れた人が多い。
理由は良く知らないが、彼女自身の安全の為や冒険者の士気向上の為だと思われる。
上手く考えてるな。
強い冒険者と結婚を目的としてる受付嬢もいるらしいが。
「今日は冒険者登録をしに来たんです。実は大分前に登録していたのですが、3年間以上、活動していなかった為、停止してしまったんです。」
そう言うと、訝しげに此方を見ていたゴツイ冒険者パーティーがやって来た。
「坊主、ガキの頃から親のために、苦しい冒険者なんてやっていたのか。
可哀想に。」
はっ?こいつらは何を言い出すんだ?
俺の困惑を他所に流暢に話を進める。
「そんな坊主に相談だ。
そこの綺麗な美人さんを俺達に1日だけでいいから貸してくれねえかな?
金は言い値を出すからよ!」
成る程、そう言う奴か。
ギラギラと瞳の奥に宿る欲望が1日だけで終わらないことを示している。
それどころか、金を払った後、尾行して囲って証拠隠滅しそうだ。
後ろで手を出しそうなリーサの手をがっしり掴むと、口元が緩んで、背中にもたれ掛かってきた。
「ドーマンさんもアードナルさんも、こんなところで堂々とそう言うことを言うのは止めて貰えますか?
冒険者の資格を剥奪しますよ?」
受付嬢が怒気を孕んだ声で脅す。
「おーおー、ナタリーちゃんはお堅いな。
それともB級の俺達に相手でも‥‥‥っと、怖い怖い。」
周りからの殺気が膨れ上がり、二人のゴツイ冒険者は颯爽と去っていった。
結構な人気のようだな。
「すいません。ご迷惑お掛けしてしまい。」
謝られても、受付嬢‥‥ナタリーさんが悪い訳では無いので反応に困る。
「いいんですよ。それより俺の登録をお願いします。」
そう言うと、直ぐに紙を用意し準備を整えてくれた。
「先ずはこの紙に名前、出身地、戦い方、等を記載してください。書きたくなければ結構ですが、名前だけは最低でも入れてください。
代筆サービスもありますがご利用なさりますか?」
「いえ、結構です。」
俺は名前にユウ、戦い方を魔法剣士と書き、他の欄も適当に書いた。
「はい、それでは今回は初回と言うことでお金は取りませんが、なくさないで下さいよ。再発行に銀貨5枚はかかりますので。」
そうして渡されたのは、銅色のプレート。
色でランクを表している。
F~Dが銅色、C~Bが銀色、Aが金色、Sが虹色となる。S級は滅多におらず、世界に10人程だと言う。
「ここは、探索者と呼ばれる冒険者が多いですが、冒険者の依頼の種類について聞きますか?」
「はい。」
昔は5種類の依頼しかなかった。
通常依頼(雑務などの住人が出した依頼)
採取依頼(ポーション等の作成に使う薬草を採取する依頼)
討伐依頼(モンスターの討伐を行い、特定部位を持って帰ることで報酬を貰う依頼)
護衛依頼(王族や商人などの重要人物が移動時の護衛をする依頼)
指名依頼(C級以上の冒険者が貴族などに半ば強制的に受けさせられる依頼。指名された者はそれ相応の理由がないと断ることができない。)
聞いてみたが、昔と変わっていなかった。
「はい、これで冒険者登録は完了致しました。」
「有り難うございました。」
そう言ってギルドを出たところには、先程のB級の冒険者がいた。
壁に寄り掛かって何かをくわえている。
煙草のように煙が出たりはしていないが、ああ言ったものは大抵、人体に害のあるものが多い。
無視をして横を通り向けようとしたところ、「おい、坊主。さっきも言ったがそこの女を譲ってもらえないか?
金は言い値を出すからよ。何枚だ?
金貨10枚か?100枚か?」
懲りずに詰め寄ってくる。
リーサがめんどくさそうな顔をして、殺していいかな?と目線で問い掛けてくる。
どうせ、女を犯し尽くした後は、奴隷商人に高値で売り払って、俺を後から襲って金を取り戻すつもりなんだろう。
俺が殴っとくと言う目線を送る。
「失せろ!ゴミ屑と話すことなんか一切無いんだよ。」
周りがザワッとなり、次第に広がっていく。
こいつはよく知られた冒険者らしい。
今の俺の格好は、普通の服に剣や籠手等の武装を一切していない。
要するに俺をなめきっているのだ。
その余裕もあってか上から目線で睨み付けてくる。
「ガキが‥‥‥。調子に乗らなければ長生きできものを。」
何だか可哀想な奴を見る目で俺を見て、呟いた。
実力差が分かっている俺にとっては、俺の台詞だ!と言いたくなってしまう。
「死ねや!」
冒険者が剣を振り上げて袈裟懸けに降り下ろしてくる。
俺はそれを余裕を持ってかわし、剣を握った手を捻りながら横に投げ飛ばした。
余裕で10メートルぶっ飛んで道の真ん中を何度かバウンドしながら転がった。
一般人なら手を捻った時点で手首が捻れて多量失血、手がネジ切れていた。
下手すると死んでいただろう。
腐ってもBランクと言うことか。
どうやって俺がどうやって殺られるかを賭けていたらしき青年たちは、俺がニッコリと笑いながら殺気を飛ばすと、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
それよりも、かなり手加減したはずなのに思ったより力が入ってしまった。
そうだ!丁度良いスキル持ってたな!
その名もセーブ。
今の異世界組の5倍位にしておいた。
これで日常生活には支障がでない。
ダンジョンに向かおうとリーサと歩き始めたところで重要な事に気がついた。
「しまった。装備が無い。」
先程言ったように剣も鎧も身につけていない。
あ、別に持っていない訳じゃあ無い、収納で全てしまっている。
何がダメなのかと言うと、剣で言えば聖剣デュランダル、エクスカリバー、妖刀 雷華、レーバテイン。
名前からしてやばそうだろ?
何でダンジョン攻略に来た、ただの冒険者が世界で数番目に強い剣を持ってるんだって話になるじゃないか!
他にも世界樹の杖、死神の鎌、狼王の籠手。
この世界で神器と呼ばれる武器を俺がほとんど持ち、管理していた。
俺がこの世界のパワーバランスをとっていると言っても過言ではない!
だから、俺には普通の装備が必要なのだ。普通のな。
「この都市で鍛冶屋なら幾らでもあるんだし、優が自分で造ったのでいいんじゃない?」
‥‥‥その手があったか!
その手を失念していた。
「そうだな。そうすればただ頑丈なだけの武器が造れる。
悪いなリーサ。
ちょっと時間くれ、一時間で帰ってくるから好きにしていいぞ。」
俺はそう言って、あらゆる方法を頭の中で考えながら軽く走り出した。
‥‥‥‥‥‥一時間後
「すまん。待たせたな。」
俺は武器を即行で造ってモンダスの中にいるリーサの場所を神眼で見つけ出した。
「いいのよ。夫の我が儘くらい受け止めるのが妻の甲斐性よ。」
ウフフフ、と不敵に笑うリーサ。
何だか分からないがドキッとしてしまった。
えっ?どうやって造ったのかって?
そこは‥‥‥あれだよ、あれ、裏の人間を色々やったんだよ。
どんな場所にもGみたいにいるもんだ。
そんな訳で装備も揃えたのでさっさとダンジョンに行くことする。
少し進んだらダンジョンの入り口に着いた。
洞窟のように地下に続いていて、最下層にダンジョンマスターが住んでいる。
入り口の前には沢山の人が集まっていて、その全てが結構弱い。まさに有象無象、烏合の衆と表現したくなる。
この町はダンジョンによって成り立っている町なので一大産業となっている。
ポーション屋、鍛冶屋、武器屋、宝石商、魔導師、ベテラン冒険者がこぞって集まり、
「いらっしゃい!装備の修理は任せな!」
「ポーションがお買得だよ!」
「魔石を買い取ります!」
入り口で他の冒険者とリーサのことで、少し揉めたが、献身的な説得(物理)によって事なきを得た。
ダンジョンに入ると、そこには壮大な自然が広がっていた。
「フフフッ、綺麗なところね。」
所々に人が串刺しになっている木とかあるんだけど‥‥‥。綺麗か?
こんな危険な場所でも、普通より稼ぎがいいから辞められないのだろう。
第1層から第10層まで、突き抜けているらしく、その下には10層毎に深林エリア、火山エリア、海エリア、吹雪エリア、その全てが合わさった最終エリアがある。
公式に攻略できた階層は41層吹雪エリア。
階層に入った途端、装備が凍りついて使えなくなったらしい。
閑話休題
俺は昔、ダンジョンマスターに会ったは会ったんだけど、ある奴に地面に埋められた時、掘り進めて行ったらダンジョン51層でした。
その時は結構長い間、世間話に興じていて、仲良くなった。
そして俺が出ていくときにこう言われたのさ。
『次来るときは、ちゃんと通常ルートから来てね。』と。
だから俺はこうして、正面から来ているのです。
とは言っても、襲い掛かってくるトレントやら、大蜂、人喰草、粘液生物、木を1発で仕留めているので、最早戦闘とは言えない。殲滅だ。
ときどき色違いのモンスターや、何か分からない人間と犬と魚が混ざったような、見ていて気持ち悪くなる化け物がいた。
時々残るドロップアイテムを拾う。
スライムのドロップアイテム[スラオイル]
ビックビーのドロップアイテム[毒針]
マンイーターのドロップアイテム[初級ポーション]
トレントのドロップアイテム[赤い木の実]
以上が出てきたアイテムである。
殲滅してない時にはちゃんと取っておいたのだ。
いや、最初の方は人目があるから自重してゆっくり動いて剣でバッサリとかやっていたんだが、もう人がいないのは神眼で確認済みだ。
入って1時間で10層突破したよ。
下に降りる階段は、隠されていて、本来そこを見つけ出すのも試練の内なのだが神眼が場所を教えてくれる。
神眼超便利!
「ふぅ、歩き疲れたな(精神的に)
ここら辺で休憩するか。」
下に降りる階段の直ぐ近くに広場があったので、そこで休憩することになった。
持っていたシートをリーサに敷いてもらい、邪魔な荷物や道中殺した魔物の魔石やら素材やらを置き、腰を下ろす。
「食事にするか。」
疲労が滲んだ声で呟く。
朝から絡まれたり、脅されたりと色々あったので、精神的に疲れてしまった。
俺は殺した魔物の中でも美味いと言われている鹿や猪等の魔物の肉を焼く。
この階層は森が広がっているだけあって、植物系のモンスターが多いが、森に住む動物型の魔物も結構いる。
そんな動物型の魔物は食べられるのだ。
「あら、優は食事にするの?なら私も食事にしてもいいかしら?」
ニッコリと笑いながら扇情的な身体を腕に絡ませてくる。
一瞬、どういう意味だ?と思ったが直ぐにリーサが吸血鬼だと思い出した。
「優の血、飲んでいいわよね?」
俺は、サー、と血の気が引いた。
吸血鬼にとって、吸血とは愛情の証らしい。
だがこの世界にとってはおかしくも何ともない。
獣人は愛情を表すとき、相手を噛む。
強く噛めば噛むほど、強い愛情を示す。
ここで重要なのは吸血鬼も多く吸血すればするほど、強い愛情を示す。
これで分かるかと思うが、要するに俺の軽い命の危機だ。
だが、目を潤ませながら、上目遣いでお願いしてくるリーサを断りづらい。
「それじゃ、行くわよ。」
「えっ?ちょっ!まっ!」
その時だった。
森の奥から「キャアアアアアア!!!」と甲高い悲鳴が聴こえてきた。
直ぐ様リーサの肩を押さえて横にどかして、立った。
「何か女の人がヤバそうだから行って助けてくるわ。」
そう言い、ポカンとしているリーサを置いて、逃げるように(実際逃げたけど)悲鳴が聴こえた方向に走り出した。
神眼で悲鳴があった場所を確認してみると、1人の貴族らしき金髪で小綺麗な少女が如何にも“盗賊”と言った格好の複数の男に取り囲まれていた。
大体俺と同い年位かな?と思ったが気付かれないように声はあげない。
その周りには、少女の護衛と思われる男達が死屍累々と倒れていた。
近くに着くとひとまず、木の葉に隠れて様子を見ることにした。
すると、こんな会話が聴こえてきた。
「ハハハッ!こんなところにこんな高価な物持ったやつがやって来るとはな。」
盗賊の親分らしき男が高笑いする。
少女は恐怖のあまり、カタカタと身体を震えさせて、口を閉ざしている。
そんな様子を快く思ったのか、
「クククッ、てめえらの服や武器は金に替えて、お前らは奴隷行きだ。
その前にお前はたっぷり犯してやるよ!」
それを聴き、少女の顔は悲痛な顔に染まり、今にも泣きそうなのを我慢しているようだった。
そろそろ事情も分かったし頃合いかな‥‥‥と思って少女の前に出た。
「ああん?誰だてめえ。殺されてえブバベグバァ!」
先ずは親分らしき人物の腹を殴って昏倒させる。
「親分!くそッ!何者だ!」
「誰でもいい!殺れ!殺せ!」
「死ね!」
剣を抜いて襲い掛かってくる盗賊の1人の町の冒険者と同じように手首を掴み、足を引っ掛けて転ばせ、遠心力を最大限利用し、ぶん投げる。
地面と平行に飛んでいった男は木に勢いよくぶつかり、動かなくなった。
そして次襲ってきた男には、すらりと頑丈なだけの剣で受け流し、背中に叩きつけて意識を奪う。残りの盗賊達もするりと懐に入り込み、雷魔術で昏倒させる。
「ホイッと、んー、大丈夫?」
声を掛けられてピクッと身体を震わせた。
「う‥‥‥うう、うぇ~~ん、えーん。」
溜まっていた物が噴き出したように少女が泣き出した。
そのまま泣き止むまで取り合えず頭をゆっくりさすって落ち着かせる。
「もう大丈夫、大丈夫。なにも心配はいらないよ。」
「ぐすっ、ぐすっ、すいません。」
泣きながら顔を上げた少女の顔を見て、吃驚した。遠くから見るよりずっと可愛い。泣いている顔が庇護欲を掻き立てられる。
顔が何だか微笑ましい
そしてその少女が立とうとすると、恐怖で足がすくんでいたせいか、倒れ込んできた。
咄嗟に受け止める、そしてそのまま子供を持ち上げるように抱っこする。
「ふぇえええ!な、何するんですか!?」
「何って‥‥‥ただ安全な場所に君達を運ぼうと思っただけだけど?」
一体どうしたんだ?まあいいか、取り合えず護衛っぽい奴等を運ぶか‥‥‥。
[クリエイトゴーレム!ヒーラー]
俺がそう叫ぶと、地面の土が盛り上がり、ゴーレムになっていく。
ゴーレムに思念で男達を治療させ、運ばせる。
「ゴーレムがヒールを!?」
さっきからどうしたんだこの子?昔は周りの奴等もよく大勢を治すときに便利だって言ってたんだけど‥‥‥。
驚いていた少女と護衛達をダンジョンから連れ出した。途中で妙にキョロキョロして何か探していたが‥‥‥。
一先ず宿に護衛を置いて、宿の一室で少女に話を聞いてみた。勿論リーサにも言っている。
「さてと、自己紹介が遅くなったが俺の名前は‥‥‥ユウ。冒険者をやっている。君は?護衛がいるくらいなんだから高貴な身分なんだろ?」
「わ‥‥‥私の名前はフィリア。フィリア=スピリチュアル。実は聖女として、召還された勇者様の教育を頼まれまして、レオドラ王国に向かう途中だったのです。」
‥‥‥マジスカ。聖女って‥‥‥。
俺が後何日かいたらこの子と会ってたのか。
「それって俺に言っても良いものなの?結構重要じゃない?」
「いえ、勇者様のことは既に結構知られてますし、昔の聖女が勇者様と一緒に冒険したのは有名ですし‥‥‥まあ、少し一緒に戦っていたら勇者様の足手まといになると思った私の先代様は抜けられたと聴いていますが。」
勇者達と冒険してみたいけど足手まといにはなりたくないと心で葛藤しているようだった。
神眼でも見たが、心が清い。
慈愛に溢れて優しい心を持っている。
この子なら“あれ”を使いこなせるだろう。
「‥‥‥そっか。フィリア。別に無理に横に立たなくていいと思う。」
「えっ?」
「後ろで支えたり、援護、回復するのも十分役に立つ。だけど、それでも勇者と一緒に役に立ちたいと思うのなら、これをあげよう。」
俺が取り出したのは慈愛の杖と呼ばれる伝説級の武器だ。
フィリアも杖の力を感じたのか、目を見開いて驚いている。
「こ、こんなもの貰えません。」
「いいから、これは慈愛の杖と言って、条件に合った人物しか使えない。その代わりに強い威力を出す。俺は触れることが出来るけど使えない、多分、他の人が触ると弾き飛ばされる。」
ちなみに、これは昔に俺が作った武器だ。
昔、落ち込んだ聖女のために俺が3日3晩寝ずに魔力を込め続けた結果出来たものだ。
「そうなんですか。こんな武器を何処で‥‥‥いえこう言う詮索は失礼でしたね。」
冒険者に何かと詮索するのは御法度と言われている。
「まあ、そう言う訳で貰ってくれない?フィリア自身はまだまだ弱いからね。」
「う~~、でもそれだと~~。」
勇者の元に向かうと言うことは、姉ちゃんや美紅の役に立つかもしれないからな。
それでもまだ納得できない様子だ。
少しからかうか。
「しょうがないな。じゃあさ、フィリアが立派に成長したら‥‥‥俺の嫁にでも来てよ。」
「ふぇえええ!な、何を言って‥‥‥!「駄目か?」
彼女はうう~、と葛藤する様に唸る。
「冗だ‥‥」分かりました!」
「‥‥‥へっ?」
何故か変な声が出てしまった。
「分かりました。わ、私が立派に成長したら貴方のお嫁になります。」
冗談だったのに‥‥‥どうしよう?
「だから‥‥‥待っていてください。うう~、し、失礼します!」
フィリアが顔を真っ赤にして何処かに行ってしまった。
「は~、マジでどうしよう。」
俺の呟きは空しく響くだけだった。
この量を考えるのには結構苦労してるんだよね。
長いわ~。