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ダンジョン創造 (下)

この後、他にも色々なアイデアを出して、それに合った魔物を産み出し続けた。

幻覚を使って仲間割れを引き起こす、視覚を完全に閉ざす、攻撃が届かない場所からの一方的な攻撃(上空、一本道、遠距離)、壁抜けでの不意打ち、状態異常を引き起こす、等だ。


これで10階層までの魔物魔獣はあらかた産み終わった。

10階層までは格下の相手との立ち回り方や、仕留め方を学ばせる事が目的だったが、それ以下の階層は格上相手への対処の仕方だ。

格下ならば最悪力任せでもどうにか出来るが、格上相手ならばそうも行かない。

ここまで考えて、その目的に合った魔物魔獣を産み出すのに約半日掛かった。

だから今は少し暗くなって仕事している人は家に帰る時間帯だ。

夜行性の獣を狙う狩人(ハンター)達もいるが、ほとんど街の外に出る人は居ないので、誰かに邪魔される事無くダンジョンを創れる。


「ちょうどいい時間帯だからダンジョン創りに行ってくる。

零華は何処にいる?」


この中ならどこに居るのかは、コイツなら簡単に分かる。

自分の領域なら好きに出来るのは、ダンジョンマスター以外にもいる。


「今ブーさん相手に訓練し終えて休んでいるみたいだよ。

横の部屋に繋げといたから。」


俺は部屋を出て、すぐ横の扉を開ける。

そこにブーさんと零華が対峙していた。

ブーさんは食事時のときと同じコックの格好で、鮫切り包丁と言うべき巨大な包丁を持って、白いコック服と包丁が血塗れだった。

コック服の脚と腕の部分から先が斬られたように無くなっており、血の線が走っていた。

正直言って、どこかの殺人鬼にしか見えない装いだった。


対する零華は、ところどころ軽い怪我を負っていて、魔力と体力のほとんどを消費しているようだが、特に何も問題は無さそうだった。

俺はそれを確認してから零華に声をかけた。


「零華。今から出掛けるから付いて来い。」

「!は、はい!」


声をかけられたところで、やっと俺に気付いて、体中の汚れと籠手についた血をサッと拭いてからすぐに俺のそばによって来た。


「用意出来ました!」


奴隷である零華に大した持ち物は無かったな‥‥‥と今更ながらに思い出す。

俺は頬についている血を取り出したタオルで拭き取る。

一瞬、身体をビクッと震わせたが、あとはされるがままにジッとしていた。


「それと、これ飲んどけ。」


俺が取り出した毒々しい液体に目を丸くする。

まさかこんな危なそうなものを・・・と言いたげに薬の入った容器と俺とで視線を交互させる。


「それは成長薬だ。鍛錬した後に飲めば能力の向上値が少し上がる。」


分かりやすく言えば効果の高いプロテインみたいなものだ。

それを聞くと同時に一気に飲み干した。

その様子を一瞥して、零華の手をとった。


「それじゃあ行くぞ。」


そう言って目的地を思い浮かべながら、転移魔法を使った。

跳ぶ(転移を飛ぶと言うのか分からないが)最中に結界を壊した感覚があっても、気にするつもりも、謝るつもりも、一切無かった。




「着いた。」


一瞬の浮遊感を感じた後、俺が目的地としていた王都の近くの森にいた。

国の名前は忘れた。

零華は転移を経験したことが無いのか、ポカンとしながら固まっている。

異世界から勇者を召喚する事が出来るくらい発展しているので、転移魔法くらいなら国なら持っている筈なので、どうしたのかは分からない。


「まあいい。少し離れて見ていてくれ。」


そう言って零華を下がらせて、片手に持ったコアに魔力を注ぎ込み、イメージをする。

10階層までを薄暗い洞窟エリアに、そこから下は様々な過酷な環境を用意するつもりだ。

なので、一先ず10階層までの迷路を想像し、コアを地面に押し当てる。

すると何の抵抗も無く、スッと地面に入って行き、直後に地面が盛り上がって地下へと続く階段が出来た。


「行くぞ。」


零華に一声かけて、壁の強度などを軽く確認してから入る。

入った途端に不思議な感覚に包まれた。まるで神になったかの様な全能感と優越感が全身を駆け巡る。

しかしこれも何度か味わったことのある感覚だ。


「出て来い。」


無造作にテストケースとして産み出した魔物達を、放出する。

コアからいきなり出されても、知能が無いせいか、戸惑う事も無く直ぐに指示した階層へと降りていく。


「さて、俺はここの環境を整える必要があるから手が離せない。

零華はブーさんと訓練して疲れているだろうから休んでて良いぞ。隣の部屋に寝具を創っておいたから。」


最下層に創ったダンジョン管理用の部屋に転移して零華に尋ねる。

別に休まなくても良いが、今はやって欲しいことは特に無い。


「‥‥‥分かりました。それでは私は休ませて頂きます。」


零華がちゃんと用意したベッドを使っている事を確認して、再度ダンジョンの整備をする。

10階層までは薄暗い洞窟型で格下や厄介な相手への立ち回り方を学ばせて、それより下層はあらゆる環境に適応してもらう為の訓練所だ。


「まあ、休む場所も創っとかないといけないな。」


まあ、全員が息抜きできる場所が無いと義姉ちゃんも美紅も落ち着いていられないだろうしな。

そう思考し、作業を再開した。


圧倒的速度で造られた迷宮は朝になって、近くを通り掛かった冒険者達に発見され、新たな迷宮であり、何故か迷宮の前に建ててあった立て札に【勇者にしか入れません】と書いてあった事が、王城へと報告された。

ダンジョンのモンスター、罠、階層の環境は勇者達の攻略中に出させて頂きます。

それと共に勇者の能力の一端も発現させるつもりなので期待していて下さい。

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