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調整を間違えた。

クラス一丸で戦う事になった優達は、まず戦う術を学ばなければいけなかった。

当然の事だ、いくらこの世界の人物より強いと言っても元はただの高校生だったのだから、怯んでまともに戦えない事がほとんどだろう。


その辺の事情は考えられていたらしく、この洞窟(儀式を執り行う)がある山の麓にある〔レオドラ王国〕で受け入れてもらえるらしい。

俺が昔に召喚された国とは違う国だった。

昔の記憶を探ってみてもレオドラ王国なんて国は記憶にない。


突然、キュリアル達が全員を囲んで膝まずいてなにやら呪文を唱え始めた。

すると中心から外側へと魔方陣が地面に広がって行き、この世界に来たときと同じようにピカッと光り、‥‥‥そこは王国の門の一つだった。


鉱物を媒体として瞬間移動の魔術を使うらしく、その質によって移動できる距離が変わるらしい。

そして門の中には転移阻害の結界が作動しているからだそうだ。


優達は王国の裏側からキュリアルに連れられて入ったのだが、そこでは激しい歓迎の嵐が待っていた。

どこもかしこも、お祭りか!と言いたくなる位の飾りや雰囲気だった。


どうやら国の民は勇者達が魔人を倒してくれると信じているようだ。

あまり期待しない方がいいよ、と言いたくなるがそんなことをこの雰囲気の中で言うほどバカではなかった。

そんなこんなで王宮の中に入った俺達は、謁見の間に連れていかれた。


黄金色に輝く柱が何本もあり、様々な装飾品が置いてあった。

ゴテゴテの装飾が無造作に散りばめられており、優雅さの欠片もない成金の屋敷と言った印象を受けた。

王が座っている場所までいくとキュリアルが膝まずいた。

事前に聞いていた通り、全員同じように膝まずいた。


「面を上げよ。」


偉そうな声だ。

王の横には王子と王女が座っていた。

まだまだ俺と大して変わらない見た目の王子が偉そうにふんぞり返り、見下していて、聖女のように優しげな見た目で出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる美女と呼ぶに相応しい見た目の、巨乳の少し年上っぽい王女が優雅に座っていた。


服のサイズがあってないのか、胸の部分にしわがより、それの大きさを更に強調していた。

男達はその二つのメロンに目を釘付けにしている。

王女の方はそんな視線に馴れているのか優雅に手を振ってくる。


「ようこそ客人、いや勇者達と呼んだ方が良いか。人類を救う希望なのだからな。わしはこの国の王である。身勝手な願いであると承知しているがこの世界の危機だ。30年前に召喚された勇者以上の戦いを期待しておる。」


この後、勇者一行の教育係としてガランド騎士長の挨拶やら、王子と王女の挨拶、と順調に進んでいった。

まあほぼなにも聞いていなかったが、この世界を救ってくれたら褒美として王女が気に入った勇者に嫁にやると言われたとき、もとの世界に恋人や好きな人がいるやつでさえ目をギラギラさせていた。

目の前の欲に眼が眩んだか‥‥‥。

男は悲しい生き物だな‥‥‥。




王への謁見が終わるとガランド騎士長に広い場所に集められた。

どうやらここは鍛練場のようだ。

魔術師らしき人物が何人も入ってきて水晶のような物を取り出し、説明を始めた。


「この水晶はマジックメジャーといってどの魔力に適性があるかと、魔力の量が測れる物だ。君達は私達より魔力も多くて適性数も多いはずなので期待できる。凡人は普通赤色になるが君達は勇者だから最低でもオレンジにはなるだろう。」


にっこりプレッシャーをかけてくる。

もしかしたら無自覚なのかもしれないが、それはそれで質が悪い。

水晶は、魔力がが少ない順に黄色、赤、青、オレンジ、紫、白、黒、金、となっており最低でもオレンジというチートだ。

姉ちゃんや美紅、柊とその取り巻き3人は白だった。

適性は無と聖は全員持っていて、それ以外は人それぞれだった。


そして柊は適性数全てだった。

それも勇者なら妥当だろう、奴の周りでは騎士長ガランドが「はははは、流石勇者だな。30年前の勇者も全属性の白だったと聞いてるぞ。」と敬語なんか面倒だと言わんばかりな口調で喋っている。


まあ、年上に敬語を使われると何か変な感じがするので良かった。

今の時点で黒、金は化物、怪物と称しても良い。

俺は昔こそ白で、今は金を軽く越えるが、この魔道具は手を添えることで無意識に流れる魔力の量より判断しているから調節してやれば良い。

あ、抑えすぎた。

流れる魔力が思ったより少なくなって、その結果、

赤色になっていた。

そして適性数はたった一個しか表示されていなかった。

あれ~、これってバカにされて虐められる可能性大だよね。

どうしよう?


「あいつ赤色だぜ。」

「ふっ、雑魚で落ちこぼれか。」


うわー、やっぱりバカにされそうだ。そこのテンプレ厨二病野郎は黙ってろ。


「あー、うん。これはどうしたものか。」


騎士長まで俺の処遇に困ってんじゃねえか!

その後、他の奴等がマジックメジャーで魔力を測っていたが、最初に言われた通り、最低でもオレンジだった。

流石に40人以上の人間に下に見られるのは不快だが、それもこれも調節を間違えた俺が悪いのだし、これ以上目立つのは避けたかったため、あらかじめ用意された部屋にそそくさと戻った。




それから数日経った。

懸念した通り(テンプレ通り)何人かのバカが俺に魔法の練習やら憂さ晴らしと言ういじめを実行してきた。

ちなみにそいつらの名前は松田 悠栄、多田 賢治、水口 隆也。

反撃せずにされるがままにされている。


「ファイアーボール!」


野球ボール位の大きさの火の塊が俺の腹に見事命中。初歩中の初歩魔法でも結構威力がある。


「ぐはっ!」


魔法の威力によって倒れた‥‥という演技をして、うつむいた。

傷とかは、自分の魔法でわざとタイミングを合わせてつけたり、幻覚で偽装したりといった方法で誤魔化した。


正直、訓練など全く意味を成さない程強くなっていたので、赤色相当の魔法を訓練時に怪しまれない程度にポンポン出してるだけでは、暇だった訳でバカに何をしたのかを後に思い知らせる為の布石を打ってるだけである。

先行投資というやつだ。‥‥‥悪い意味の。

そんなある意味バカな考えをしていた。


一通り魔法をぶつけて満足したのか、「くはははは、落ちこぼれはそうやって這いつくばるのがお似合いだ。」なんてくさい台詞を言いながら自分の部屋へと戻っていった。

俺も、自分で傷を治し、大きく伸びをして立ち上がった。

あの程度の魔法は効かないが、小さな衝撃だけはある。


よってそれを利用して肩に当てたり、腰に当てたりとした方法で適度に調節すれば、身体を簡単にほぐす方法として良いとすら思っている。

攻撃魔法をマッサージ機扱いする俺って……(笑)。


‥‥‥という風にいじめ3人組こと松田達は、俺にとってもマッサージ機以上の価値は無いのである。もうマッサージ機3人組と呼ぼう。

っていうか、大切なのは幼なじみである吉田 美紅と、義姉の柳 雪菜だけで、その二人以外はどうなっても別に何も感じないのである。


勘違いしないでほしいが、最初からこういう思想だったのではなく、前に召喚された時に現実を突きつけられた訳で理想主義者から、現実主義者になってしまったのである。

そろそろ王国が使えない俺をどうするか方針を決めるだろう。

その前に俺から何処かに行きたいと言ってみるのも一つの手かな。


そんなことを考えていると‥‥、「あーー、優くんいたーー。」と間延びした声が聞こえてきた。

この声は‥‥‥。

そこにいたのは、ある意味王国を出ていくのに一番の壁である従姉の雪菜姉であった。

そう!日本で3年前にこのバックワールドに転移して、数日行方不明になったことで過保護に磨きがかかった義姉であった。


「あれ、姉ちゃん。部屋に戻ったんじゃないの?」


その俺の疑問に「えへへへ、優くんが同じところにいないとやっぱり落ち着かなくてね~~。」と子供っぽい口調で答える。

義姉は寂しがりやでもあり、朝起きたら布団に潜り込まれているなんてことは日常茶飯事レベルの頻度で行われていた。

それを羨むバカに言ってやりたい。

義姉だろうと、それは義姉という生物だ!と。

この世界に来て数日は人の目があるからと自重していたようだが昨日落ち着かなくなり寝ぼけながら俺の部屋までやって来たのがばれて男達に冷たい目で見られた。(嫉妬9割軽蔑1割)


「フフフッ、」


何故か姉ちゃんが不敵に笑う。


「どうした?姉ちゃん?何か良いことでもあったのか?」

「ん?あのね、この世界では危険が多いから、優君は私が守ってあげる。

昔は優君に守られてばっかりだったから、この世界では優君の役にたてるから嬉しいの。」


相変わらず優しい。ついつい頬が緩んでしまう。

やはり姉ちゃんは俺の守りたい存在だ。


「大丈夫、この世界でも姉ちゃんが危険になったときは直ぐに駆けつけてあげるから。」

「そっか、頼りにしてるよ。でも優君も私を頼りにしてね。」


その日は一度部屋に戻った。

朝起きたら案の定姉ちゃんがいたけど。

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