表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/35

3度目のボス戦闘②

悲痛な叫び声を上げると同時に斬り落とされた足の先からポコポコと泡がたって急に暴れ出した。


「オオオオオオオッッ!!!!」


一瞬で再生した足を振り回して、零華が跳ね飛ばされる。

どうやら無理矢理再生を早めたせいで、体力が少し減っている。


「再生した!?くっ!ぐはっ!げほげほっ!」


生えてきた足は斬り落とされた足と比べると皮膚が硬くなっているように見える。

叩き落とされて、水に落ちそうになったところ、水を氷らせて防いだ零華に、追撃とばかりに追い打ちで足を4本使って叩きつける。

何とか避けたものの砕けた氷が礫の様に飛んで行き、零華は防御する。


「ハルルルアアァァァ!!」


そこにクラーケンは頭の前に水の塊を幾つか溜めてその1つを零華に飛ばす。

横からはイカ足、正面からは水魔法。

氷の礫でバランスを崩していた零華には、避ける事が困難な状況で、斜め後ろに飛んで片方からの足を避けるが、水魔法に跳ね飛ばされ、その後もう片方の足に弾き飛ばされた。


「くっ!カハッ‥‥‥!ゴホッゴホッ!!」


壁に叩きつけられて激しく咳き込む。

そこへ左右上下からイカ足が零華に襲い掛かる。


「っ!」


咄嗟に腕を前にしてガードしたが、クラーケンの攻撃の重さに再び壁に叩きつけられる。

そのダメージで零華は片脚をつく。


「【雹槍(ひょうそう)】!」


周りから水が集まり、凍りながら槍の形をとっていく。

それを襲って来た足にぶつけて、凍らせ、そのお陰で出来た隙に走って足の猛攻を掻い潜り、接近を試みる‥‥‥がクラーケンは口らしき場所から紫色の液体を飛ばして来る。

それを零華がギリギリで躱すと足場にしていた氷が白い煙を上げながらポコポコと気泡をたてながら溶けていく。


毒のようだ。

ボボボボッと連続で放たれ零華はそれを躱す。


「【氷盾(ひょうたて)】!」


出てきた氷の盾に毒玉が当たって溶けるが、防ぎながらも着々と近付いている。

ある程度近づき、攻撃を加えようとジャンプしようとしたところで、零華は身体の不調に気付いた。


「こ、これは‥‥‥。身体‥‥‥が‥‥っ!!」


突然膝がガクガクと震え、身体中に張り巡らされた身体強化や筋力強化の為の魔力がコントロールを失い、空気中へ霧散していく。

眼をよく凝らしてみれば小さい紫色の粒子が花粉のように空気中に蔓延しているのが分かったはずだ。

吐血や血色が無いので恐らく麻痺系統の毒だろう。

空中に散布すれば自らも毒で動けなくなってしまうが、毒耐性によって無効化されている。


「ど、毒?いつの‥‥間に‥‥‥。」


少し前から用意していた水魔法が先程とは比べ物にならないほど大きい水球を毒で動けなくなった零華へと行き、爆散した。

轟音を響かせながら煙がモウモウと立ち昇る。

勝利を確信したように、足を空中でヒラヒラさせて視線を俺の方に向けてくる。


「ん?お前の相手は‥‥‥まだ俺じゃねえよ。な?」


「はい!」


煙が晴れた先には空になったポーション瓶2本を口に咥えて、魔力を限界まで籠手に集めている姿だった。

咥えているのは、街で買った解毒と回復ポーションだろう。

集まる強大な魔力はまともに当たれば膨大な体力を持っているクラーケンさえ一撃で葬る事が出来る威力を秘めていた。


「再生するならばそれ以上の速度で破壊して行けばいいだけです!」


クラーケンはその強大な魔力を肌で感じて、危険だと感じたのか水上に出していた頭部を水中に潜ろうとする。

しかし突然周りの水が凍りだし、クラーケンの動きを止めた。

並の魔術師では一瞬で砕かれてしまうが、零華は文字通りLvが違う。

突き刺さって、身体を巡っている水までも瞬時に凍らせる。

そして瞬時に凍らせたにもかかわらず、氷の中に強度を落とす原因の気泡が無い。

魔法とはLvが高くなればなるほどこういう不思議現象があるのだ。


「ビギギギイイィィッ!!」


足ごと凍らせられているせいで、身動きが出来ないクラーケンはどこからか声を上げて無差別に水魔法を放ち、氷と零華を同時に攻撃するが、氷は水面から数メートル凍っており、零華は最小限の動きで避ける。

その動きは可憐で見る者を引き込み虜にする魅力があった程優雅に舞っていた。

そして一瞬止まって脚に力を込める。


氷河槍(ゲルボウグ)


余剰魔力によって強化された脚で、籠手を前に突き出して吹っ飛んで行く。

クラーケンは何とか身を捻って躱そうとするが、圧倒的な速度で迫って来る零華を躱すのは無理だと判断したのか、直ぐに切り替えて毒を放った。

ビチャッと零華にかかるが、その程度で速度が落ちるはずも無く、そのままクラーケンの頭部を撃ち抜いた。

そこで零華の魔力が尽きたのか、気を失って水に落ちようとするのを、直前で受け止める。


「良くやったな。及第点だ。」


そこで俺は全身から力を抜いて、死んだふりをしているクラーケンを見る。

神眼を持っている俺には生き物の生死なんか一目で分かる。


「経験値量としては十分だな。」


そう俺が呟いた途端、倒れ伏していたクラーケンの姿がブレて、頭部の右半分を失ったクラーケンが起き上がった。

零華は最後の最後に毒をもらって、幻覚を見せられたのだろう。

俺はニヤリと笑って剣を構える。


「seeyou(消えろ)!」


剣が振り下ろされ、豪音と爆音が響き、衝撃波が水に伝わり波紋が広がる。

まるで爆弾でも落ちたかの様に水蒸気がたつ。

水蒸気が晴れると、クラーケンの身体が真っ二つになり、完全な骸となって姿を見せた。

今頃になって血が吹き出し、水面を赤く染める。


「またつまらぬ物を斬ってしまった‥‥‥。」


弾丸すら斬り落とす剣士の真似をしながら、零華を背負い直す。


ピロンッ!

レベルアップのファンファーレが脳内に流れる。


「お!やっと俺のレベルが一つ上がったな。

数年前から一切上がってなかったからな〜。そういや俺のステータスってどうなってるんだっけな?」


そうして俺は自分の手を見る。



続くっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ