3度目のボス戦闘①
取り敢えず邪魔者を片付けたので、自重せずに進むことにした。
すると当然、移動速度が比較にならない程上がる訳で‥‥‥ボスと闘っていた‥‥‥零華が。
「グロアアアァァ!!!!」
奇怪な叫び声を上げるのは中心にあいた池から顔?を出している20メートル近いイカだった。
そのイカは人の顔位の大きさの吸盤が付いた足をウネウネと動かして、水面近くに出ている眼がギョロリと動いて、こちらを見据えてくる。
「え?あの‥‥‥こいつを私が倒すんですか?」
零華が俺とイカ‥‥‥クラーケンを交互に見ながら疑問を呈する。
「うん。大丈夫。危なくなったら直ぐに消すから。」
「いえ、道中とあのボス魔術師の戦闘で勘と能力を取り戻しましたが、あれは私の手にはおえません。」
うん。そうだろうね。
「大丈夫だって。さっきも言っ『キャラルルラララ!!!!』た通り‥‥‥うるせえ!!」
俺は氷の魔術で周りの水ごとクラーケンを凍らせた。
喋ってる最中に邪魔してくる奴は嫌いだ。まったく‥‥‥。
「いいか?これは零華の戦闘力上げだ。
雑魚でも上げられないことはないが、チマチマ殺して行くくらいなら経験を積めて、なお且つ経験値も多く貰えるボスの方が効率が良い。」
「は、はい!確かに‥‥‥!」
「そして‥‥‥これが一番重要な話しだが‥‥‥。」
ゴクリと緊張で喉をならす。
「俺が戦闘シーンが見たい!」
「え?」
そう!俺は昔っからテレビでやってるプロレスみたいなのを観るのが好きだった。
この世界では、地球では出来ないハイスペックな動きと長い争いの中で築き上げられてきた高度な駆け引きがあった。
来たばかりの俺はその速いスピードを見るために、自らも強くなったと言うのが理由の一つだ。
「だから頑張って俺を楽しませてくれ!」
そう言って俺は零華を送り出した。
タイミング良くクラーケンは氷を砕いて動き出していた。
尚、パーティーでは、経験値はその相手に与えたダメージによって変わるので体力を一切奪わない拘束するだけに留めている。
「グキャロロロオォォッッ!!!!」
無数の足を振り上げて俺を狙って来た。
最小限の動きで避け、反らし、後ろに下がる。
「!! ユウ様!!」
俺が襲われるのを見ると、一瞬で呆けた顔を引き締め、水を凍らせてその上を走る。
その後ろ姿を俺は見る。
名前 零華 種族 銀狼族
状態 怒り
Lv 60
体力 5800
攻撃 6300(怒り+200)
俊敏 6500
防御 5600(怒り+200)
魔力 4800
魔耐 4500
スキル
ユニーク
賢者の知恵
エクストラ
銀狼流武術 獣化 限界突破
アクティブ
氷魔法Lv7 雷魔法Lv5 身体強化Lv5 狂化Lv1 パワーLv5
パッシブ
気配察知Lv7 直感Lv4 状態異常耐性Lv8 体力回復速度上昇Lv6 氷属性耐性Lv4 雷属性耐性Lv3 料理Lv5
称号
銀狼族の神童
なんだかんだ見て来なかったが、零華はA級よりも少し弱いくらいのステータスだが、スキルが良い。
恐らく、最初に会った時に調べた知識量はユニークの賢者の知恵から来ていると推定される。
スキルとは殆どの人(A級冒険者含む)はLv5になると一気に上がり難くなる。
だが、零華のスキルが軒並み高いのは称号のおかげのようだ。
【銀狼族の神童】
スキルの取得確率とLvが上がりやすくなる。
と言った様子だ。
今は何故か怒りによって攻撃力と防御力が少しアップしているがそれでもクラーケンには単純にステータスの差で敵わないだろう。
名前 無し 種族 クラーケン種
状態 半拘束
Lv100
体力 35000
攻撃 7800
俊敏 1000
防御 3000
魔力 6700
魔耐 8000
スキル
エクストラ
墨吐き 触手操作
アクティブ
水魔法Lv6 狂化Lv7 毒Lv3 怨裟の叫びLv5
パッシブ
体力回復速度上昇Lv2 魔力回復速度上昇Lv2 毒耐性Lv3 水属性耐性 再生Lv8
称号
ダンジョンボス
体力がずば抜けて高い。
それ以外も少なくとも零華よりは高いのが多い。
ん?俺?セーブしててもスキルの量と質が昔と変わってないから、クラーケンのステータスの半分でも余裕で勝てる。
そうこうしている間に、零華がクラーケンに篭手の爪で斬り掛かる。
それをクラーケンは何本かの足で叩き落とそうとするが、しかし零華は空中で急にスピードが上がり、クラーケンの攻撃は全て不発に終わる。
零華には空中で動きを変えるスキルは無い。
これは零華が装備している篭手の効果だ。
そしてその効果でクラーケンの頭の部分を斬りつける。
『グルラァァァォォォ!!!!』
クラーケンが頭に響く不快な叫び声を上げて、痛みでのたうち回る。
傷口はこれまた武器の効果で凍っていた。
血が出ないから体力が減らないのではないかと考えるかもしれないが、血が出るよりも冷気による継続ダメージの方が長時間で見れば効果があるのだ。
「はああああっ!」
零華は下階層のボス戦と同じように、スピードで翻弄し駆け回る。
それをクラーケンは変わらず足で迎撃しようとする。
それを掻い潜り、ダメージを与える。見事なヒットアンドアウェイ。
そのループを繰り返していたが、クラーケンも学習したのか氷で作られた足場を壊し始めた。
「!!くっ!何て面倒な事を!!」
『キャルラララララ!!』
先程とは違う甲高い鳴き声に零華は顔をしかめる。
スキルにあった怨裟の叫びとは、人に不快感を与え、動きを止めるスキルだったようだ。
『『『『『『キュルキャ!ラルリ!ラキュルロロ!!』』』』』』
そして水の底から小さいクラーケンが大量に湧いて出てきて、一斉に零華へと飛び掛かった。
怨裟の叫びには同族を呼び寄せることが出来る効果もあるようだ。
「っ!【絶対零度(劣)】」
零華から放射状に冷気が溢れ出し、襲い掛かってきた小さいクラーケンをが空中で凍りついて地面に叩きつけられて割れる。
それと同時に襲って来ていた足も内部まで完全に凍りついていた。
それを見逃す零華では無い。
足を伝ってクラーケンの死角に周り、また魔法を発動させる。
【絶対零度(小)&雷撃!】
零華が、放った魔法は氷属性の継続ダメージと雷による麻痺を狙った物だ。
そしてその効果で足がピクピクとし、動きが麻痺している。
そしてその隙を狙って6500の俊敏で頭部、足、眼球をバラバラに斬り刻む。
「ユウ様に愚かにも攻撃した愚行を後悔しなさい!」
足を根本から斬り落とされ、身体中傷だらけのクラーケンは悲痛な叫びを上げた。




