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最早周回イベントだな

ボスを倒した優と零華は、下に降りて、海エリアに繰り出していた。



「おらっぁ!!」

「はあっ!!」


周りを水に囲まれた状態で左右から弾丸のように、魚が飛んでくる。

その弾丸魚を俺は剣で、零華は籠手で叩き落として進んでいた。

叩き落とす際に金属と金属がぶつかったような硬質な音が出ている。


「まったく、何でこんなに襲ってくるんだ?一本道で左右が生け簀みたいになってるって造ったやつの性格が分かるな。」

「‥‥‥恐らく私達は餌だとしか思われていないのでしょう。」


零華がそう言ったところで再び弾丸魚が飛んできたので叩き落とす。

この魚は鋼鉄並みの硬度があるので、普通なら叩き落とすのも無茶な筈だが、この階層に来る技量があれば大丈夫なのだ。


まあ、大パーティーで力押し等は、大抵ここで失敗して餌になるのだろう。


そう考えていたら、何故か弾丸のように降り注いでいたのが、急に止まった。

何かな‥‥‥と思って周りを見回してみると、少し離れた場所に5人の熟練者パーティーと思わしき冒険者達が、弾丸魚の攻撃を受けて必死に防御をしているが、防御出来ずに討ち漏らした魚に当たって、段々と体力を削られている。


『がっ!くそったれが!急に一体何だってんだ!』

『チッイイィ!こいつ等硬え!』

『ロッツさん!速くここを抜けましょう!

このままじゃ体力を削られるだけですよ!』

『クソ!不本意だが仕方ねえ。

全員背を屈めて左右を警戒しながら走り抜けるぞ!』


水の音に掻き消されているが、聴力が強化されてる俺なら聴き取れる。

どうやら俺達を襲っていた魚まで、あちらのパーティーに行ってしまったらしい。


「やっべ。どうしよっか。」

「ほっておいてよろしいでしょう。あの方達も自らの意志でこの迷宮に潜ってきたのですから、ユウ様が何かする必要はありません。」


でも、俺の所に来ていた魚まで、あちらに行ってしまったようだ。

流石の俺も、凄く少しだけ罪悪感がある。

確かに零華の言うとおり迷宮にいる以上、何が起こっても自己責任だ。

少し考えてから、俺はあのパーティーが戦闘不能になるくらいの怪我を負うくらいになったのならば、助ける‥‥‥と言うことにした。


『!ッ、おいバカ!』

『?、キャッ!!』

『グッ、しくじった‥‥‥。』

『不味い!このままじゃここでやられますよ!』


その機会はそう考えてから一分にも満たなかったようだ。

俺は取り敢えず、水の上をトトトッと走って近づき、飛んでくる魚を全て3枚に卸した。

魚のピンク色の肉がボトボトと池に落ちていく中、一口サイズに切り分け、即興で造った皿に乗せる。


「よし。結構旨そうだな。殺した途端に身が柔らかくなったな‥‥‥。魔術か何かで身体を硬くしていたのか。」


冷静に魚の分析をしながら‥‥‥一口。

うん。美味い。

しっかりした歯ごたえにほのかな旨味、これを売ったら一財産築けるだろう。

それほどまでの出来だ。

全く、良いもの作るぜ。


「‥‥‥誰?」

「いや、誰でもいい。兎に角助かった。礼を言う。

俺はガラン。このパーティーのリーダーをやっている。」


名前 ガラン

種族 人間

Lv 51

体力 4600

筋力 5300

敏捷 4400

防御 4800

魔力 3100

魔耐 2700


おっと、昔の癖でついステータスを見てしまった。

一応、不公平だから命の危険が無い時に、これは使わない事にしていたんだが‥‥‥。

昔の癖は簡単には変えられない。

他の人達も大体同じ様なLvとステータスだ。


「チョッ、ガラン。」

「大丈夫。この人に悪意は無い。」

「そう、それなら大丈夫ね。ごめんなさい。」


何故かガランと言う人物が言っただけで、すんなり信用された。

恐らくはそういったスキルを持っているのだろう。


「ユウ様!」

「あ、悪いな零華。」


すこし遅れた零華が水面を走ってやって来た。まるで氷の上をすべっているようなスムーズさだ。


「・・・え?ど、どうやって水の上を?」

「お、落ち着け!いいか!今見たのは幻覚だ!弾丸魚(バッレトフィッシュ)に頭をやられたんだ!俺たちは何も見ていない!」


よく分からないが、現実逃避の真っ最中らしい。


「まあ、とにかく大丈夫か?」

「ああ、助かった。」

「で、ここからが本題だ。ここまで来れるくらいなんだから、結構稼いでるんだろ?

少し俺達をやとわないか?」


これはこのパーティーの現状を考えてのことだ。

盾、鎧が、ほとんど破損していて、全員疲労で動きが鈍っている。

回復薬のストックも切れているようだ。

この状態では、ダンジョンから脱出どころか、この階層からの脱出も困難だ。


「そうですね‥‥‥。確かにこの状態じゃあ危ないですね。」

「ナナ、今は考えている時間が惜しい。先ずはこの危険地帯を抜ける。

あんたを雇う。助けてくれ。」


うじうじ悩まないで、即決する所は、流石の判断力であり、評価に値する。

ニヤッと笑い承諾する。


「契約完了だな。なに、契約は完全に遂行するさ。

チャッチャと移動するぞ。零華もな。」




そうして水の上の道を移動する。

飛んでくる魚を全て叩き落として連れ歩く。


「こ、この剣は一体何で出来ているんだ?ここまで丈夫な剣は初めて見た。」


そう、ガランが剣に興味を惹かれている間にも俺は魚を叩き落とす。


ガンガンがんガンガンガンキンカンキンキンガッカンキンキンカンゴンカンカンキャンギンゴン


‥‥‥終わらない。

零華と一緒に両側を守って落としているのに、一向に減る気配がない。

これは精神的な疲労を誘う嫌らしい手法だろう。

最早これは周回イベントだな。

いや!自分から進んでやるわけでは無いから、更に質が悪い。


そうして右曲左曲しながら、水の上からパーティーを連れて退去する。


「よし、ここまで来たら大丈夫だろう。」


そう言って異空間から上級ポーションを取り出して、適当にぶっかける。


「うわ!」「キャッ!」「おわっ!」「な、何だ!」「‥‥‥?」


三者三様な反応をして、急速に治っていく自分の身体を見つめる。


「これって上級ポーションか?こんな高価なモンを‥‥‥。こんな無造作に‥‥‥。」

「すごい効き目だから高いのに‥‥‥。」


「別に気にすんな。どうせ俺が作ったやつだし。」

「うそ!貴方、1流錬金術師(アルケミスト)なの!?世界に100人いるかいないかのあの!?」


何それ、上級ポーションなら確かに作れるのは者は少なかったが、錬金術師(アルケミスト)ならば作り方は知っている筈だ。

そこまで減ることは無いと思うのだが。


「ありがとう。俺達はAランク冒険者パーティーの【一凪の風】だ。

全員がBランクになっているからな。

まあ、あんたがいなかったら確実にやられていたよ。」

「そうね。改めて自己紹介するわ、私はヒーラーのナナ。助けてもらったのにお礼が言えず申し訳ありませんでした。」


ティナと名乗った女性は長い髪を弄りながら自己紹介する。

助けられたのが気恥ずかしいのか、頬をピンクに染めてうつむいている。


「じゃあ次は私!剣闘士やってるミーナです!」


さっきポーションをぶっ掛けた時にフリーズしていた少女だ。

最初は何も喋らなかったからクール系美少女かと思いきや、余裕が無い時は無口になるらしい。


「俺はロッツ。剣士やってる。ガランと同じ村の出身っていう縁でこのパーティーにいる。さっきは助かったぜ。」


茶髪の快活そうな青年で、今にもガッハッハッ!と笑いそうな感じがする。


「僕はソレキアと言います。魔術師で後衛やっています。

どうぞよろしくお願い致します。」


眼鏡を掛けて、元の世界で言うと、失礼だがガリ勉、オタクとか印象だ。

ローブ姿が良く似合っている。


「そして俺がさっきも言ったようにリーダーのガランだ。改めて礼を言わせてもらう。ありがとう。」


彼等は恐らくはこの階層に進出したばかりであろう。

そうでもなければ、魚の対処法くらい考えているだろう。


「どういたしまして。」


取り敢えず返事をしておいた。




こうして、彼等を助けた俺はパーティーに一時同行することとなり、下への行き先を探していた。


「それにしてもここにたった二人で来れるとか、よっぽど強いんだな。

Aランク冒険者なのか?」

「いや、零華は俺の奴隷だし、俺は昨日登録したばっかりだからEランクだな。」


聞いてきたロッツが目を見開き、死にかけの魚のように口を開け閉めする。


「どうした?死にかけの魚みたいな顔して?」

「その例えは酷いだろ!」


おう、悪かったな。


「で?どうした?」

「どうした?っじゃねえよ!登録したばっかでもう30階層まで来るとかどんなバケモンだよ!

滅茶苦茶だな。」


早口で思いっ切りまくしたててくる。


「そうか?実力があるやつが急に出てくるってよくある話だろ?」

「いや、そんなの2〜30年前の話だよ。実力があると分かれば親か教会の司祭が上に報告して、取り敢えず冒険者として登録させるらしいんだ。」


俺がいない間に随分とブラックな社会になったもんだ。

素質がある子供を見付けやすくするシステムであろう。


「そんな訳で知られていないのはギルドも近くに無い、かなりの辺境出身の奴等だけだ。」

「そうなのか‥‥‥。」

「そうそう、私が‥‥‥っ!魔獣!」


俺も気配を掴んでいたが、数秒遅れてミーナが気付いた。

ミーナが向いた方向を見ると、そこには陸に進出したばかりの魚――シーラカンスっぽい――がヒレを足のようにしてペタペタと歩いていた。


「後ろの水の中にも何匹かいる!」


そう言うが早いが、全員が武器に手を取り、戦闘体勢をとる。

そして集中力を研ぎ澄まして、相手の力を見極めようとしている。


名前 無し

種族 キュィーヤンス

Lv 28

体力 1570

筋力 1320

敏捷 540

防御 2330

魔力 460

魔耐 500


はい、雑魚だ。

魔法で簡単に倒せる。

取り敢えず、彼等の戦いぶりを見るために先手を譲る。


「キュヤー!!」


奇怪な叫び声をあげて、先ずは一番先頭にいたガランに襲い掛かる。


「はぁっ!」


袈裟がけに振り下ろした剣が、キュィーヤンスに当たって、地面に叩きつけられる。

だがまだ死なないらしく、フラフラしながら立とうとする。


「死ね!」


そこにロッツが介入して、足で魚を押さえつけて容赦無く止めを刺した。

あっ、ロッツがレベルアップした。


「よし!この調子でガンガン行くぞ!」


そうロッツが言った時だった、後ろにあった穴から魚や蛙、タコ、亀が飛び出してきて、ロッツの背中にぶち当たった。


「ごへっ!ぐばばばばば!!!!」


ロッツはそのまま飛んでいき、口に砂を掻き込みながら地面を転がっていった。

あれは痛いな。


「まだいます!」


彼等が向いた方には、池があり、そこからゾロゾロと出て来ていた。

わ〜、大群だな〜。


「こ、こんなに出てくるなんて!このエリアは他のエリアよりも魔獣の遭遇率が異様に高いわね!」

「そうですね。僕の広域殲滅魔法ならば当てることさえできればっ‥‥‥!」


俺はスッと近づき、先ずは10匹。


「零華は池を凍らせておいてくれ、魔獣はさっさと潰す。

さっさと殲滅してくれ。」

「お、おう。みんな!魔獣を1箇所に集めろ!

ソレキアの魔術で止めを刺すぞ!」



‥‥‥10分後、

「殲滅完了ってな。まじで同じ事の繰り返しだった。」


周りには焼け焦げた水生生物の死体が大量に転がっていた。

伝え忘れていましたが迷宮の構造は


_____

    \_____

         \_____


こういう風に丸いフィールドを積み重ねた形になっています。

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