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転移しました。お気楽な思考

通学中に書き貯めてるつもりですがいつまで持つかは分かりません。

更新期間はかなりランダムになりますがご了承ください。

今月で10月になって少し肌寒くなってきた季節だ。暑すぎ寒すぎもなく多くの生徒達が好みの温度だ。

そしてそれは柳 優も例外では無かった、だが彼は、学校に来るのはとても憂鬱だったであろう。

柳 優は誰もいない時間に早く来ては、そのまま机に突っ伏して寝息をたてはじめた。


その後、次々と入ってくる生徒達はおもむろに舌打ちやギロリと睨み付けてきたりするが、決してなにも言ってこない。

最近、この技に気付いて実行している。

効果はこの通り、対応は変わらないがその視線を気にすることが無くなった。

まあ、寝ているからなのだが。

何故俺がこんなにクラスから嫌われているかは今から起きることを見たらすぐに分かるだろう。

突然扉が勢い良く開かれて少し背が高く顔立ちが整っていて妖艶な雰囲気を醸し出した美女と呼ぶにふさわしい上級生が入ってきた。


そしてキョロキョロと教室を見回し何かを探しているように見える。

そしてその首が俺の方に固定された瞬間「優~~~く~~ん~~」と言う見た目とのギャップの激しい声が飛んできて、俺は飛び起きた。そう、彼女が俺が侮辱の目で見られる原因の一端である。


「朝早くに急に出かけて行ったから心配したんだよ!」


別にいつもより30分程早く出ただけなのだからそんな心配するほどのことでも無いと思うが、彼女がこうなったのは、俺が昔に知り合いのおじさんと山登りに行った時、数日間行方不明になったからだ。

その時から俺は冗談だと思うくらい、でかい隠し事をしていた。

そういえば彼女の紹介を忘れていたな。

彼女は、俺の従姉でやなぎ 雪菜せつな、子供の頃、彼女の両親が事故にあって亡くなって、それから俺の家に住むことになった。


「げっ!姉ちゃん!ちゃんと置き手紙を置いてたはずだけど?」

「ごめん、ごめん、見てなかった。そんな余裕無かったから。」


テヘッという効果音がでてきそうな態度だ。

そこに、スルッと扉が開いてこれまた美人な女の子が入ってきた。

そしてこちらの方を見ると「はあっ~」と盛大にため息をついてづかづかとこちらに近づいてきた。


「雪菜さん!バカ優に絡むためにわざわざこのクラスにまで来ないで下さい!このクラスの委員長として、クラスに迷惑が掛かる行動は見逃せません。」


この女の子は吉田 美紅、このクラスの委員長で、小学校からの腐れ縁の幼なじみだ。

この二人は、どちらも美人な上に面倒見が良いから学校中の人気者であった。

学校の人気者にいつもかまってもらえる俺に負の感情しかわいてこないだろう。

俺からしたら迷惑このうえ無い話なのだがな!(ここ重要)


さて、朝早くから心身の疲労がピークに達していた俺は授業中、深く眠っていた。一度も起こされなかったのは日頃の行いのお陰だ。

まあ、先生も毎日言っても一向に改善しない奴にあきれてしまっているのだろう。

その様子を俺の席の斜め後ろにいる超絶イケメンな男子にギロリと睨まれていたなど後で聞いたことだ。

昼休みになって雪菜姉ちゃんと美紅が近くにやって来た。


「あら優、あなたのお姉さんの、雪菜さんの行動をどうにかしてくださいませ!」


なぜか行動という言葉を強調する。そして何故敬語?


「優君~。一緒に御飯食べようよ!」

「はあっ~、雪菜さん!あなたが優に対して過保護になる理由は分かっているんですが場所を考えてください!」


見ると横に美紅がお弁当を持って立っていた。

その姿はエプロンでも着ければ初々しい新妻といったところだろう。

そんな言葉に全く気にしていないようにお弁当の蓋をいそいそと開け始める。


「良いじゃない美紅ちゃん。それよりも一緒に食べない?」


話題を変えようとしているのもあるのだろうが、それと本心でも一緒に食べようと誘っている。

それが分かっているから美紅も断れないのだろう。

渋々と話題を変えた。


「分かりました。私もお弁当ですから」


近くの椅子を音もたてずに引き寄せて、俺の机に弁当箱を置いた。

そこに先ほど俺を睨んでいたイケメンが近づいてきた。


「雪菜さん、美紅さん、僕達と一緒に食べませんか?」


さっきまで気づかなかったが、このイケメンの後ろに何人か取り巻きがいる。

このイケメン野郎の名前は柊 輝。他の取り巻きは飯田 竜助、真田 達也、西岡 優磨の3人だ。

全員、違ったタイプのイケメンで飯田は茶髪に爽やか系、真田は丸刈りの体育会系、西岡は少し小柄な癒し系、そして彼らをまとめていると言える柊は容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。

こいつは、美紅が雪菜姉ちゃんの誘いを断らないし、姉ちゃんが俺と離れないのも分かってない。

俺としては二人とも話していると疲れるのでどうぞ連れていってくださいっていう心情が猛烈に顔に出ているのに、それに気づかない位二人とも鈍いのだ。


「ごめんなさい。誘ってくれるのはとても光栄なのですけど今日はもう決めてしまいましたの。」


少し面くらった顔をして「そ、そうですか。ではいつかご一緒させてもらうのを楽しみにしています。」

二人には満面の笑みを浮かべて俺には厳しい目を全面的に出してくる。

基本的には誰にでも優しいがいつも寝てばかりいる不真面目な生徒には厳しい。まあこの場合、個人的な感情も少し入っているが。


少し嬉しそうなのは、どうやらさっきの表情がどういう意味か少々過剰に受け取ったらしい、思い込みが激しいタイプなのだ。

まあ実際、美紅はよく友達とそのグループに加わっている。

やはり俺がいない方がクラスの皆もせいせいするのだろうと自虐的なことを考えながら昼休みを過ごしていた。

6限が終わって担任の田中 結衣先生が連絡を喋っている。

優としては梅雨の時期のようにじめっとした不快感を感じる視線から逃れられると内心、かなり喜んでいた。そして、「これでこいつらと離れられる!」という言葉をぼそりと呟いた。


挨拶を終えて全員立ち上がった所で・・・・まるで時間が止まったかのように動けなくなった。唯一動かせる目を動かすとクラス一同変わらぬ状態だった。

そして地面が眩しく輝き始め周りが光に包まれた。

その後の教室には生徒は一人もいなくなっていた。倒れた椅子、机にある鞄、散乱した教科書類、その場には静寂のみが漂っていた。




その場で目をつぶっていた優は、ゆっくりと目を開けた。

まず目に飛び込んできたのは暗い空間だった。

ずっと奥まで続いているようだ。周りを見回すとクラスメイトと先生が何が起きているか理解できないという表情で一言も喋らずキョロキョロとしていた。

どうやらあの場にいた全員がこの訳がわからない状況に巻き込まれてしまったようだ。

そこで少し離れた所に教室にはいなかった人物を見つけた。


「な!なんで雪菜姉ちゃんがここにいるんだよ!?」あまりにも驚いてつい静寂の中で声を張り上げていた。


「ゆ、優君!」


見たら周りと同じように呆然としていたが声を掛けると同時に安堵の表情を見せて抱きついてくる。


「お、おい姉ちゃん?」


それを見てこんな状況でも俺に鋭い視線が突き刺さる。

俺が困惑してないのは一回、同じ風に召還されたことがあるからだ。

二回も召喚されるなんてついてない。

そこで何人かの足音が奥の暗い道から聞こえてきて、空気に緊張が走る。その一行は白く綺麗な服を着ており煌めいて見えるようだ。


「ようこそ、皆様。バックワールドへ」


彼らは一人を除いて片膝を地につけ、頭を垂れている。

そこで立ったままの人物が口を開いた。


「私はキュルアル。君達をここに呼び出したものである。」


抑揚のある声で喋っているがあまり元気が無いように思える。


「いきなりこんなところに呼び出されて、さぞ混乱しているだろうが落ち着いて話を聞いてほしい。これから呼び出した理由をお話しします。」


唐突に始まった話を聞くと人間は緑溢れる大地を、魔人は大地とほぼ同じ面積の土地で暮らしている。

この二つの種族は仲が悪く、もう何千年も争ってきた。魔人は人間より個体の力が強く数で対抗していてその実力も拮抗していたが、亜人に突出した個体(魔王)が現れた上に従来の物より遥かに優れた鉱物が見つかって武器の質が上がった。このままでは人間は滅びてしまうと危惧した彼は王の許可をとり、バックワールド人より筋力、瞬発力が優れ、成長率も高いフロントワールド人(勇者達)を呼び出させていただいたとのことであった。

聞き終えたところで罵声がとんだ。


「そんなことを言われても訳わかんねえ!」

「嫌よ!もとの世界に返して!」


様々な混乱や恐怖が混じった声で何かを叫んでいる。

そこに救世主が現れた。柊である。


「皆落ち着け!!今ここで騒いでもなにも起こらない!気持ちは分かるが今すべきことを精一杯考えよう。」


この言葉でクラスの大半は落ち着きを取り戻した。流石のリーダーシップである。


「キュルアルさん、あなた達が僕達を召喚した理由は分かりました。僕、個人としてはこの世界の人間が滅んでしまうかもしれなくて、それを救えるのが僕達だけならば、僕は救いたいと思っています。ですが皆はまだ混乱してまともな判断が出来なくなっています。少なくとも帰りたいという人だけでも帰らせて下さい!。」


自分達の事を第一に考えてくれている。

その言葉がほとんどの生徒達の緊張をといて、

尊敬の眼差しを向けている。

しかし出てきた言葉は残酷なものだった


「お気持ちはお察しします。ですが残念ながらあなた方の帰還は不可能でございます。」

「な!?何故です?呼び出せたのならば帰すこともできるでしょう。」

「実は、召喚するにはとても貴重な鉱物が必要で黄金の山よりも手に入れることが難しいのです。なにせ神があなた方、勇者御一行を呼ぶためにつかわしたものなのですから。」

「嘘でしょ。嫌よ!」

「そんなことって。」

「戦争なんか冗談じゃない!!」


皆が再び騒ぎ始める。


「しかし、言い伝えでは救済が終われば再び神により鉱物が与えられると言われております。実際、ごく最近、30年ほど前に魔物の大群が来て人間が滅びかけた時、救った方があなた方の世界に戻られたと聞きました。」


すると希望を見つけたクラスの皆の顔がパアッ!と明るくなった。

すると、ここでまたもや柊が口を開いた。


「分かりました。世界を救えば皆も帰れると言うことですね!」

ゆっくりと立ち上がり。

「俺は皆のためにも、この世界の人達のためにも世界を救う!その為には皆の力も必要だ!皆でこの世界を救おう!」


なかなか凄い事を平然と言う、これだからこいつが嫌いなのだ。

握り締められた拳を高々と掲げそう宣言する。

彼のリーダーシップは遺憾なく発揮された。

彼を見る目は希望を見つけたと言わんばかりにキラキラと輝いていた。


「ふん、お前ならそういうと思ったぜ!もちろん俺もやるぜ!」

「竜助!」

「それ以外、方法が無いのだろう?俺達ならできるさ!」

「達也!」

「もちろん俺も 賛成だ。」

「優磨!」


他の皆も頷いている。

どうやら全員、戦争をするという事をちゃんと理解していないらしい。

死ぬかもしれない事を勢いのせいで失念しているクラスメイトを横目に、冷静に対処できていて、事情を把握して、これから来る運命がゲームのようにはいかないと分かっていた俺は深い溜め息をついていた。

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