第二話 「女性魔導師-リネン-」
今回は一話で登場した女の子のお話です。
まっ平らな大地、青く広がる空、目の前に広がる草原にポツポツと咲いているイリミナの薄青色の花の周りにはポポムという蝶のような触覚を持ったうさぎが花の蜜を吸っている。
私ことリネンは大陸の向かい側にあるフスクスコ王国の海洋都市ニンバスと主要な貿易を担うリストリア王国の海洋貿易都市、リニャーロを出て西に旅をしている。
リニャーロでは父母がいる中、家計を支えるため様々な仕事を受けてきた。
リニャーロはリトアニアの主要海洋都市の一つであるためとても大きな街だ。それゆえに様々な仕事がある。街を賑やかにしている飲食店、鍛冶屋、質屋、果物屋、肉屋、装飾品店、ギルド、それに売春街などもある。
そしてこの都市が海洋貿易が盛んであるがゆえ、ほかの都市や街に比べて仕事の数が圧倒的に多い。
そんな中私は冒険者として近くの森で魔物刈りをしたり、ほかの領からくる旅人や商人の護衛をしたりしていた。そんな仕事の中で私は旅人からある話を聞いていた。
東のある森で魔物の全くいない、美しい泉のある森がある。
特別いい薬草が出るわけでも、レアなモンスターが出るわけでもないらしいのだが、なぜか魔物が全くいないらしい。泉の近くにちらほらポポムが顔を出し、その周りに咲いている花の蜜を吸ったりしているだけらしい。
何かあるわけでもないらしいその森に、私は不思議と行ってみたいと思うようになっていた。昔から海の近くに住んでいたということもあり、海は見飽きてしまったのかもしれない。
そんなことを考えながら私が仕事を終え帰ってきたところに母が私に、
「あなたは辛い中いつもいつも働いて私たち家族のために働いてくれていたわよね、もう自分の好きなことをしてもいいのよ」
と言われた。どうやら私の願望や夢みたいなものは親なりに感じ取っていたらしい。
今までこの子供っぽい外見や女だということもあって随分と冒険者も苦労した部分はある。そんな環境の中で必死に得意の火魔法で少しずつ依頼をこなすことができるんだという実力の証明をしながら頑張ってお金を稼いできた。
さしたる活躍ができずとも地道に頑張ってきたおかげである程度のお金は溜まっていたので、私は親にとある場所に行ってみたいという事を言ってみた。
「たまには帰ってきなさいよ」
それだけ言って母と隣に座っていた父は微笑んでいた。
少しの荷物を持って自宅の自分の部屋から出てみたら家族は家にはおらず、書置きで「仕事に行ってきます」と書いてあった。この手紙はそんなに心配しなくても大丈夫だよという気持ちが書かれているみたいで泣きそうになってしまった。
今回この自然豊かな大地が広がるウィンスタッド伯爵領にある旅人から聞いた森を見にいき、その森の近くにある村、トリテン村というところでしばらく厄介になろう。