僕のバイト
どうやら、特急に飛び込んだらしい。原型をとどめている部位はなく、これが人だった判断するのは難しい。しかし、残念ながら人だ。
制服と思しき物が線路に挟まっている。
「狩野さん、これ遺品になりますかね」
「……んん、どうだろう。ちょっと破損が多いけど制服とわかるからなあ。一応とっておいて」
「了解です」
これ以上に制服が壊れてしまわぬように慎重に取り出す。
胸ポケットから学生証らしきものが見えた。
「あ、学生証が入ってました。……伊藤咲、17歳、僕と同級生か」
慣れてはいても、同年代ましてや同級生の死は心が揺れる。
「加藤くん、あとはわたしがやっておくから血の掃除をお願い」
「……ありがとうございます」
僕はマグロ拾いというバイトをしています。
まぐろと聞いて魚のマグロを連想すると思いますが、僕が拾っているのは人です。正確には人だったもの。
線路内に飛び込んだ人の遺体を掃除するのが僕の仕事です。
仕事、というよりもバイトです。
まだ、高校生なので。
僕には両親おろか身内がいません。経済的援助がないのでこうして自分で稼いでいます。
このバイトは普通の仕事よりも給料が高く、時間も短くて済みますので僕にはぴったりです。
ですが、あまり精神衛生上よろしくない仕事なので人手がいつでも足りません。ですので、本来は雇うことのない高校生も僕も雇っていただいています。
この仕事は普通の人では心が壊れてしまうからです。
主人公 加藤 雄介 かとう ゆうすけ 高校生
狩野 岬 かの みさき バイトの先輩