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再壊日記《ドッペルゲンガー》  作者: ねこやき
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一章 被験者

「「「政府の心理実験んん!?」」」

「そう、そうなんだって。こんな手紙が来てたの!」

私は興奮気味に、いつものたまり場である生物実験室で叫んだ。

そう、私も、それが朝机の上にあったのを見たときは、眠くて幻覚を見ているのかと思ったほど、熱くならなかった。

だが、その熱は、家を出るころには本物になっていた。

やっと、認めてくれた!世間が、私を!

わずか16歳にして、私は、世界の誰より偉くなれるのだ!

そう考えると、飛び跳ねずにはいられなかった。

いくつか支度をして、狩りをするチーターのように家を出た。

そうして今、その感動を、他の言葉にして叫んでいるのだ。

「でもねぇ。何故、公になって困るようなこと、わざわざ一般人に頼むのかしら?」

冷静な対処。思わず、ぐぅと唸ってしまう。

艶やかな黒髪を高い位置で結び、眼鏡をかけた彼女は、神宮かんのみや 京子けいこ

私たちのグループで、一番付き合いが長い。

ただ、彼女はわからない。

本当に、何もわからないのだ。

一日ずつ、違う人が演じているようだ、と私は感じる。

その横で、「楽しそうだし、いいんじゃない?そうゆうの、待ってたの!」と、能天気な言葉を返しているのが、海崎かいさき ゆかり

高身長に似合わず、とにかくドジで間抜け。単純で、故に付き合いやすい。

「海崎、私は、よく考えたほうがいいと思う。神宮が言ったような点もそうだし、それに・・・」

「それに?」

「政府の機関なら、何故メールアドレスをハッキングしなかったんだ?」

信じないぞ、とゆう目つきで私を見ながら淡々と話すのは、生物学の先生である もり 蛍太郎けいたろう。通称もりけー先生。

「でもさ、もりけー先生。メアドだと、いろんなとこに記録が残っちゃうじゃん。」

もりけー先生は、先刻と打って変わってにっこりと人懐っこい笑顔を私に向けた。

「君にしては考えたほうらしいね、飯山。」

「でしょう?」

飯山。そう、それが私の名前。私は、飯山いいやま 夕歌ゆうかという。

好きな物は実験。典型的な理系女子、と断言できる。

だが、成績は芳しくないのが現状だ。テストの点数を見ると泣きたくなる。

この前の中間テストなど、さんざんだった。

ただし、実験での発想力であったら、学校一、いや、歴代一と断言できる。

「ううん・・・頭が痛くなってきたわ・・・」

京子が頭に手を置いて唸る。

「ねぇ、調べてみようよ!私たちで、裏をかくの!」

紫が飛び跳ねて言う。

ウサギみたいだ。

「うんうん、なんかスパイみたいでわくわくしない?」

私も、京子ともりけー先生に乗ってほしくて、そう言う。

「君たちねぇ・・・。」

しかし、もりけー先生は呆れたようにつぶやいただけだった。。

「まったく・・・そろそろ活動しない?」

京子もイラついた調子で机をトントン、と叩く。

ここで少し説明しておきたいのは、この京子の言う”活動”についてだ。

私たちの”活動”というのは、普通の学校生活ではない。私たちの学校は、世界レベルの”能力”を持った人が、それぞれ収集され、その能力に合わせた活動のことである。

 私たちは、”人心掌握術”、”データ分析力”、そして”シミュレート能力”に長けている。私飯山は、”シミュレート能力”を自分のものとしている。私が実験に関して歴代1位と断言できるのは、ここに収集されたからなのだ。

「まぁ、その手紙は気になるけれども、誰かの悪戯だと思うしさ。具体的に内容が分かり始めてから認識しても充分だろう。」

もりけー先生らしい判断だ。京子の見解ではもりけー先生は、”目先の問題しか見ようとせず、整理されていない問題を好まない”らしい。

「それもそうですねぇ。ちょっと残念。」

紫がのんきに言う。

「じゃあ、今日やる活動をまとめてちょうだい」

てきぱきと京子が指示を出し始めた。

 その時、部屋に、無機質なノックの音が響いた。

部屋がしんと静まり返り、みんなが顔を見合わせた。

ただでさえ来訪者の少ない部屋に、朝早くの客人。

「これは、ミステリーの幕開けじゃない!?」

瞬間的に、そう叫んでいた。

「いやいや・・・」

京子が苦笑している。当然かもしれない。

「あれ、もりけー先生、出るんですか?」

気づくと、もりけー先生がドアの前にいた。

「うん、お客さんだしね。それに、怪しい人はまず学校に入ってこれないでしょ」

「ううん・・・確かに。」

紫も何か納得している。

でも、何か諦めきれずにもりけー先生の隣に立つ。

どんな人だろう。

無意識のうちに、黒髪の眼鏡をかけた格好いい青年を思い描いてしまう。

そんな理想を、女性の声が打ち砕いた。

「こんにちは、蛍太郎。」

その声は、どこかにヴァイオリンの響きを思わせる声をしていた。

あわててそちらを見ると、細身な女性が凛と立っている。

その女性は、今までに見たことのないようなうねりを持った栗色の髪の毛をしていて、高貴な雰囲気を漂わせていた。

もりけー先生が、口を開いた。

舞姫まきさん?」

「もりけー先生、知り合いの方ですか?」

「知り合いかどころか飯山・・・」

そこで先生はちょっと迷ったように右を見て、言った。

「いや、この話はあとで。神宮、お茶を淹れてほしい」

「あ・・・はい、わかりました。」

お茶を淹れ始めた京子を見て、舞姫まきと呼ばれた女性は慌てた様子で手を振った。

「いえ、ここで充分よ、蛍太郎。」

「遠慮しないで、ゆっくりしていってください。」

もりけー先生は思い出したように付け加えた。

「紹介がまだでしたね。この子たちは、左から海崎紫、神宮京子、そして飯山夕歌です。あなたもご存じのとおり—―」

舞姫さんがその言葉を遮った。

「特別収集班、ね。」

「変わりませんね」

もりけー先生が苦笑している。

「ええと、お茶はどちらに」

「ああ、そのテーブルに。舞姫さん、どうぞ。」

京子がテーブルにお茶を置く。もりけー先生と舞姫さんは、向かい合ってソファに座った。

紫が、見計らったようにファイルを持って私と京子を本棚のそばに引きずっていく。

「ねぇ、あの舞姫さんって人、先生の彼女さん?」

「ちょっと、紫、勝手な憶測はダメよ」

「まあまあ、京子。・・・気になるよね。」

こそこそ話していると、もりけー先生が私たちを呼んだ。

「舞姫さんが、君たちにお話があるって」

「あ、今行きます。・・・よし、探り出すよ、京子、紫。」

「うん!」

「はいはい。任せておきなさいって。」

三人でワクワクしながらソファのそばに行く。

「初めまして。紹介が遅れました。私は、霧谷きりたに 舞姫まきといいます。」

舞姫さんは、微笑を浮かべた。

「飯山夕歌です。」

「海崎紫といいます。」

「・・・神宮京子です。お願いします。」

私たち三人は、緊張しつつ自己紹介をする。

改めて、とても綺麗な人だと思った。

こっそり、自分の茶色の髪の毛を触る。

「舞姫さんは、私の高校時代の先輩だよ。」

もりけー先生が言った。

「蛍太郎とは、大学も一緒だったわね。」

「そうでしたね。懐かしい。」

私はますます、この女の人がもりけー先生とどうゆう関係だったのか知りたくなった。

ここは、人心掌握術に長けた京子に任せよう。

京子の方をちらりと見ると、視線がぶつかった。

彼女は、まだ無理だ、という風に首をほんの少し横に振った。

「それで、お話って、何ですか?」

「ちょっと、紫!」

慌てて紫を止めに入る。紫はというと、ちょっと首をかしげて笑っている。

私はため息をついた。

「ああ、そうだったわね。ええと・・・単刀直入に言うとね。」

舞姫さんが話し始めたので、そちらに注目する。

次の一言は、私たちを一瞬、自我を忘れるほどの衝撃の中に陥れた。

「政府の心理実験に、参加する気はないかしら?」

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