老婆の洗脳術
とある国に一生死に絶えるべき老婆がいた。その老婆はあらゆる手段を使って若者をこき使って自分の手中に収めようとする悪い奴だ。そんな人間が国の主導権を握っていてはお先真っ暗だ。というのも、彼女は召使いの人間の身でありながら、国王に進言する立場となっている。進言とは大げさかもしれないが、とに卑しく笑って国王にホラ話を交じらせながら、他人のアラを報告する。かく狡賢い人間なのは間違いない。『少々小耳に挟んでおいた方が……』などと老婆は、本来ならば他人には知りようの無いどうでもいい欠点を見つけ出す名人なのだ。しかも国王は完璧主義の性格を持っている。老婆の言っている事は根本的に正しいため、すぐさま国王の堪忍袋の緒が切れる。そして老婆は、国王に叱られている家来を見てクスクス笑っているのだ。人の不幸を笑い者にするなど人間として最低の行いなのは誰だって知っている筈だ。御存じなのに自分の性格を治そうともせず、他人のアラばかりを探すのは弱い者いじめと一緒だ。老婆の方がよっぽどアラだらけなのに国王に何も問われないのは、老婆自身が洗脳術に長けているからだ。国王を裏で操って国の法律まであれこれと買えるようになった。国王は意識してないかもしれないが、老婆の一言一言に惑わされているのは違いない。
「国王様。先程、アルバート枢機卿が裏小屋で破廉恥な行為をしておりましたよ。国に使える身でありながら、真っ昼間に若い女と卑猥なダンスをするなど私の若い頃には考えもしませんでした。あの罪深き老人に罰を与えるべきです」
本当に良く言う。お前はそんなことを口走る権利など持っていないのに。老婆は60歳を過ぎた高齢になっても、隙あらばイケメンを食おうとする悪女だ。今の所は成功していないが、彼女の洗脳術を考慮して考えれば時間の問題だろう。犠牲者が出るのは。老婆は年齢の割に幼くて説得力に欠ける持ち主だ。それでも城の中で好き勝手にやって雑用係のポジションにいるのは、国王を裏で操っていたからだ。その糸が解けるとどうなるか……老婆は考えもしなかっただろう。
「貴様。よくも今まで儂を騙してきたな。貴様の悪事は全て、とある新人君から話しを聞いた。裏で仕事をサボってイケメンウォッチングをした挙句、ブサイク男子には容赦ない悪口を言い放ったそうだな。儂はそういう差別的な女が大嫌いだ!」
洗脳が解けた国王は怒り狂い、老婆を死刑台へと送りました。死刑台で無実を潔白して涙を流して許しを乞う老婆でしたが、誰も話しを聞こうともしません。これまでの行いがあまりにも罪深く嘘に塗れていたため、誰も彼女の言うことには耳も貸そうとしないのです。そして時が来ました。鎌を持った処刑人が檀上に上がると、自慢の斧を叩きつけました。それと同時に老婆の醜い生首が地面に転がって拍手喝采が起こりました。国王や他の召使い達は満面の笑みを浮かべて歓喜に沸きます。
「俺達を散々いたぶってきた罰だ!」
「無間地獄に逝っちまえ。クソババア!」
こうして、一人の一生死に絶えるべき老婆はこの世から去りました。しかし、この国にはまだまだ醜い老婆が蔓延っています。一人残らず殲滅するまで安息は訪れないでしょう。もしかすると貴方自身も知らない間に、老婆に洗脳されているかもしれません。