変態紳士はナンセンス
アリアが腰を抜かしてしまったので、本日は俺一人で奴隷商館にきていまーす!
さぁ、未来の俺の嫁が待っている! ドキが胸々しているけど、俺は元気です!
異様なテンションで失礼しました。相当楽しみにしていたのがバレたので、見た目悪人(中身いい人!)な奴隷商人がドン引きしております。ちょ、自重するから引かないでください!!
「さて、サラおいで」
「初めまして、勇者様。サラと申します」
「よろしく! サラ! 体調も戻ってよかったな」
健康になったサラちゃんは物凄く可愛かった。黒髪のストレートヘアーに紫紺の瞳、目じりには泣き黒子があってまだ幼女だってのに、どこか色っぽい。
この子、スキル持ってなくてもその道の好事家に確実に買われるんじゃないの!?
やばい、マジで前金払っておいてよかったわ!
とりあえず俺は残りの金貨を机の上に置いた。さすがに90枚の金貨になるとめちゃくちゃ重かった。
「確かに金貨100枚お預かりいたしました。こちらが、サラの身請けに関する契約書類になります。注意事項がありますのでよくお読みください」
「……分厚いなぁ」
ゲームとか機械も説明書を読まない人間になんちゅう契約書を持ってくるんだ!
あー、ダメだ目がチカチカする。めんどくさいんだけど、後で読めばいいか?
「この子を引き取るうえで、必要なものですよ?」
「分かったよ」
めんどくさがりながら契約書類を受け取って中身を読んでみる。堅苦しい契約書独特の文章でだんだん眠くなってきた
「はぁ……、良いでしょう。掻い摘んで説明しますと、この子は債務奴隷ですので、債務を完済した時点で奴隷契約が解除されます。それは、本来勇者殿に支払うべきお金ではありますが、中には奴隷を手放したくないがために受け取らない者がいますので、売り手である奴隷商人へ支払いも受け付けております。その場合は奴隷の主としては不適合となりますので、今後奴隷を所持することができなくなりますので良く覚えておいてください。また、虐げられた奴隷は周囲に助けを求めることができます。性奴隷契約を結んでいない奴隷もしくは子供に行為を働こうとした時点で、この子はこちらで引き取りの対象になります。その場合も主人には不適格認定されますので、大事に扱ってください。後は、細々とした点になりますので、ご自分でお読みください」
ウトウトしていたのを見た奴隷商人は、俺が読む気がないのを敏感に察したのか、呆れながらも大まかな内容を教えてくれた。
なるほどね、借金を俺か奴隷商人に支払った時点で奴隷契約が解除されんのね? 資金管理を追々任せようかと思っているんだけど、そのあたりは奴隷の首輪で持ち逃げできないようになってるから大丈夫か?
まぁ、あまり大金を持たせることもないだろうし、むしろこの子の借金は金貨100枚だよ? 日本円にして1億円超だよ? 日本なら一般人は自己破産してもいい金額だよ?
無理無理、こんな幼女が支払えるわけがないじゃん♪ ま、これも特に問題ないだろうね。
それから、性行為を強要しちゃいかんと……。
……………な、なんだと!?
その辺の変態紳士みたく、Yes!ロリータ!No.タッチ!をスローガンにしなきゃいけないのか!? いやだぞ、そんなの!
マジかぁ、でも強要スンナって書かれているけど、同意ならいいんだよね? そうなったら全力で俺に惚れさせなきゃいけないけど。
なんだ楽勝じゃん♪
読み上げた奴隷商人から契約書を受け取り血判を押して、奴隷の首輪に俺を主人登録するために血を垂らして契約完了!
「何かあったら、すぐに戻ってきなさい」
「……、短い間でしたがお世話になりました」
「さて、行くぞー?」
「かしこまりました、ご主人さま」
ったく、この奴隷商人め、まだサラを諦めてないんだな? 往生際が悪いにもほどがあるわ。サラの方は無難に今まで世話になった礼を言って、お辞儀している。やばいわ、ちょー良い子だこの子! さすが俺の嫁(予定)
まだ幼女って言える年だから、俺好みに育てることできるじゃん!
おお、これが源氏物語でいう紫の上ってか?! 俺の考えた最強の紫の上計画ってところだな、うへへ♪
さわり心地のよさそうな頭を撫でようとしたところ、ちょっと後ろに引かれて空振りしてしまいましたよ。
まぁ、親に売られたとか酷い目にあったみたいだし、人間不信があっても仕方ないよな、あとは慣れとかもあるだろうから、追々俺に惚れさせていけばいいかな?
宿屋に戻って、ぐったりとしているアリアにサラちゃんを紹介した。
特に目立った問題もなく、アリアはサラに自己紹介をしているし、サラちゃんは目の前に居るのが聖女だと知って目を丸くしていた。女同志仲良くしてくれると、俺としてはありがたい。
「さて、サラは勇者のパーティに入ったわけだが、俺が君にお願いしたいのは魔物の鑑定だ!」
「魔物を鑑定するんですか? 何のために?」
「群れている魔物の強さを大体でいいから図りたいんだ、強ければ近寄らないし、弱い奴から倒すこともできる!」
いい案だろうと、思わずドヤ顔をしてみる。
頭がいい子だから、サラちゃんも情報の必要性が分かるだろうと思ったが、良く解っていないらしく首をひねっている。
「ご主人さまは勇者であるとお伺いしましたが、魔物は全部退治なさらないのですか?」
「奴隷ごときが! 勇者様を侮辱する気か!」
俺が侮辱されたと勘違いしたアリアがサラちゃんに対してかみつくが、俺が強い奴からは逃げるような話をしたのが悪い。
基本的に対峙した魔物は全滅させているから今のところは問題ないけども、道中の無駄な労力は省きたいんだよね。探索スキルを持っているなら、索敵も取れるんじゃないかと思うし、サラちゃんの狩場への同行は必須になる。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ともいうしね、今聞いた方がいいんだよ、分かってるじゃないかサラちゃん♪
「いや、いいんだよアリア! 子供の言っていることじゃないか、俺も気にしてないよ」
「ですが……」
「まぁ、要するに俺は魔物の情報を知りたいんだよ。いくら冒険者ギルドで図鑑があるとは言っても、ステータスまで載ってないだろう? それにステータスが分かれば対処に困るってことはない、例えばどういったスキルを持っているかってことだけでも分かれば、倒す時に注意できるしね」
「……ですが、私は勇者様のような戦闘をする力は持っておりませんよ?」
「遠くで見ててくれればいいんだよ。絶対に俺が守ってやるからな?」
「は、はぁ……」
いまいち事態をつかんでいないサラちゃんだったけど、俺を頼ってくれればいいんだよ。戦闘中でも奴隷の首輪がある限り俺からは逃げられないから、俺にすがるしかない状況でございます。
自己紹介もそこそこに、サラちゃんには気になっていた俺のステータスを確認してもらった。
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名前:リョウ=ワカミヤ
年齢:17歳
加護:人神の加護
状態:健康・腰痛気味
特殊スキル:バタフライ効果(自動発動型)
スキル:共通言語・身体強化Ⅲ・精神強化Ⅰ・剣術Ⅲ・魔術Ⅳ・盾術Ⅱ・槍術Ⅰ・礼儀作法Ⅱ・舞踏Ⅰ・魔導知識Ⅱ・地理知識Ⅰ・暗記・精神耐性・毒体制・魅了・魅了耐性・指揮(適性あり)
取得済:火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・光魔法・雷魔法・無詠唱・自動地図……etc
称号:勇者・元男子高校生・奴隷の主new・脱童貞new・絶倫new
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こんな感じでスキルが増えていた上に、取得済みの魔法も羅列してあった。
あー、カテキョの中年に教わった内容がスキルの中にはいってるわー。
やっぱり力を数値化するのは無理なんだなぁ……。
って言うか、めちゃくちゃどうでもいい称号もあるけど、これってどうなのさ!? サラちゃんはいったいどんな顔をしてこれを書いたのか、ものすごく気になるんだけど!!
奴隷の首輪のせいでサラちゃんは嘘をつけない状態だけど、脱童貞とか絶倫とかそっち関係の称号は隠しておいてほしかったorz
それから俺が気になるのが特殊スキルって一文だった。ターラ婆さんの鑑定ではそこまでの情報がなかったから初めて知った。そういえばサラちゃんのスキル一覧でも特殊スキルってのがあったな、先天性のスキルが特殊スキルってことなんだろうか?
「ねね、アリアはこの特殊スキルのバタフライ効果ってなんだかわかる?」
「私も初めて聞きました……。特殊スキルは持っていない人も多いので、謎が多いんです」
「サラは解る?」
「鑑定だと、まわり若しくは間接的に関わりのある者に効果を及ぼすとありますけど、すみません、具体的な内容まではちょっと……」
「ああ、それなら俺の世界であった言葉かな? 蝶々が羽ばたいた風が世界の裏側で竜巻になるとかならないとか……」
「そ それは、とても恐ろしいスキルなんじゃないんですか!?」
「心配しないでアリア、俺は生まれて17年生きてるけど、まわりでそういう話は聞かなかったから、あまり効果がある訳じゃないと思うよ?」
不安がるアリアに対してニコッと微笑みかけると、アリアは安心したようだった。
サラちゃんに関しては何か考えているのか、俺のスキル一覧を凝視していたけど、勇者のスキルが珍しいんだろうな。
それにさ、特殊スキルのバタフライ効果って言われても17年も生きてたらそんな効果が周りにあるとか普通気づくよね?
周囲に影響があるスキルだし、文面だけなら良いことか悪いことか区別がつきにくいしね、それに俺は特に実害を感じたこともなかったから、平気だよな、きっと!