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ハーレムパーティで奴隷は外せない要素だと思う

 聖女のアリアと一緒に旅をし始めて数週間、俺は早々に疲れ切っていた。肉体的なことではなく精神面の方、っていうかアリアは料理ができなかったorz

 聖国では聖女として箱入りで育てられた彼女は、魔王が誕生したのと同じくして旅に必要な知識を教えられたようだが、包丁すら握ったことのない彼女は知識こそあれども、絶望的に料理ができなかった!

 ちなみに俺は小学校の家庭科の授業で習った野菜炒めくらいしかまともに作れなかったので、宿がある町は兎も角として、野宿が多い旅路では、味気のない携帯食料とジャーキーよりも歯ごたえがありまくる干し肉をかじっている生活になってしまったのだ。


 この辺りではそれ程強い魔物も居ないので、まだまだ未熟な俺でも無理なく狩れるが、時にはイレギュラーもあった。つまり、ボス個体のような魔物がいたんだ。

 ゲームとかの常識だと、上位種は下位種の群れを率いるものだったから、こちらの世界でもそうなんだろうなと思っていたら、そういうことはないらしい。群れはあくまで同じ種族の中で強い者が率いるだけだそうで、上位種にランクアップしたら自然と群れを離れるのだそうだ。

 そういうわけで、群れで襲われた時に鑑定のスキルがあれば何の種族なのかわかるし優先順位がすぐに決められそうで便利かなと思ったので、アリアに聞いてみたことがあった。



「ええと、鑑定スキルというものはありますが……」


「ほんと!? あるなら俺も覚えられるかな?」


「ですが、勇者様のおっしゃるステータスを覗くのは無理だと思います。鑑定スキルはアイテムが持っている情報を読み取るスキルなので、主に商人が目利きの上級スキルとして取得するもので、生体には使えなかったと記憶しています」


「え、でもターラ婆さんは俺に対して使ってたよね?」


「ターラのは鑑定眼という魔眼の持ち主だからです。スキルとは違いますよ」


「じゃあ、その鑑定眼て言うのは……」


「生まれついてのものなので、後天的に魔眼になったという話は聞いたことがありません」



 

 俺は絶望した!

 アリアによれば、一般的な鑑定スキルも目利きというスキルの上位互換で鑑定するのに必要なアイテムの知識がなければ取得ができないのだそうだ。残念だ、俺は鑑定チートの取得はできないのか……。



「じゃあ! 鑑定眼の持ち主を探して仲間にすることはできるかな?」


「うーん……。神眼や魔眼の持ち主は少ないので、正直難しいと思います。聖国ですら鑑定眼を持つ者はターラしか居ませんでしたからね」


「そっかぁ、でも俺は運がいいから多分見つかると思うよ!」



 そういって俺とアリアは笑いあった。

 まぁ、鑑定眼持っている人なら誰でもいいんだけど、性格が良くて料理ができて女の子ならなおいいなと思っていたら、本当にそんな子が俺の目の前に現れたんだ!




 異世界に来て初めて奴隷が居るということを知ったのは、王都の隣町にある商業ギルドにあいさつ回りをした時だった。

 重苦しい首輪をつけた屈強な男の人が商人と思われる女性の荷物持ちをしていたので、この人は護衛なのかと聞いたことがあった。そしたら、その商人はこの街の奴隷市に連れてきたのだと言ったのだ。



「なぁ、奴隷ってそんなに良く見るもの?」


「そうですね。犯罪奴隷は罰として鉱山なんかで働かされるものがほとんどなので、この辺りで見かけることはありませんが、民の中では債務を支払えない者が自分を売る者が債務奴隷になると聞いています」


「よろしければ、奴隷商館を見学なさいますか? この街は王国では有数の奴隷市場があるので、優秀な奴隷が各地から集まってくるのです。お目に叶う者がいるかもしれませんよ?」



 正直、日本に居る時には縁がないことだったし、奴隷が居るなんて信じられなかったから、カルチャーショックを受けていると、犯罪奴隷や債務奴隷なんかは良く見る存在だとアリアにも言われてしまった。

 その場にいた商業ギルドの人にも一度見学をしておいたらどうかと聞かれたので、つい空気を読んで頷いてしまった。




 そして商業ギルドの人に案内されてやってきたのは、この国一番の奴隷商館だった。見るからに大きな建物で、案内をしてくれたのは太ったおっさんだった。こりゃ悪徳業者っぽいなと思っていたら、案内された奴隷の控えている部屋は、檻のような場所ではなく貧乏学生の下宿のような場所だった。



「さて、ご覧いただきましたが、どうでしたかな?」


「俺が持っていたイメージと全然違ってて、正直びっくりしました」


「まぁ、奴隷商人というとあまり良いイメージをお持ちでないのは解ります。奴隷商人は悪徳業者が多いのも事実ですしね。この店は、もともと国が経営をしていたのが基盤になっております。この商館は、いわば借金が支払えなくなってしまった者たちの職業斡旋所なのです」


「なるほど」


「中には親が借金で首が回らなくなり仕方なく売られてしまった子もいますが、そういう子はこちらで教育をしたうえで下働きとして働き先を世話しているんです」



 ここではきちんとした身元の債務奴隷を扱っているそうで、俺の持っていたイメージとは真逆の場所だった。病気になれば医者に診せるし、不当な扱いをする者は居ないようで奴隷の目が死んでいるということもなかった。

 この奴隷商館では、売られてきた奴隷のスキルすべて調べ上げられ、読み書きができない物に関しては教育もしているのだという。

 


「……たとえばの話なんですが、鑑定眼持ちの人とかこちらに居たりしますか?」


「ほぉ、鑑定眼持ちですか! 確か魔眼持ちの者もいたと記憶しておりますが、確認してまいりますのでしばしお待ちください」


「一人だけ該当者が居りますが……」


「え、マジで!? 是非、連れてきてください!」



 アリアから少しばかり非難めいた視線がとんできているが無視した。だって、目当てのスキルを持ってる人が居るならパーティに引き抜かないといけないじゃん!

 そして下働きの奴隷に連れてこられたのは、10歳になるかならないかくらいの小さな女の子だった。

 紫紺の瞳は強い魔眼の証。引き取られて間もないのか、栄養不足そうな身体つきで髪の毛もパサついているけども顔は整っている。将来的にはかなりの美少女になりそうだった。



「この子は割と大きな商会の庶子だったんです。魔眼を持っていたので実の父親に引き取られたんですが、父親の事業が政争に巻き込まれて失敗しましてね、借金の清算の為に正妻に売られてしまったんです」


「そんな……、子供を売るなんて」



 奴隷商人が女の子の境遇を話してくれた。昔の日本にもあったけども、やっぱり親に売られたんだな。アリアも女の子の境遇には酷く同情的だった。


 

「ですが、農村での口減らしも含めて、そういった者はかなりの数になります。此度の王宮での騒動では出入りの商家が巻き添えになりましたので、商家からも身売りに来る方もおります……」



 女の子は俺たちが話しているときに、貧血を起こして倒れてしまった。慌てて控えていた下働きの奴隷が女の子を抱き上げて控室に連れて帰ったけど、心配だなあの子……。

 それにしてもこの奴隷商人悪人面しているくせに、根はかなりいい人っぽいなこの人。見た限り奴隷の扱いはかなり良心的だったし。



「今日のところは、この子も疲れたのでしょう。こちらにはまだ来たばかりなので慣れないというのもあるのでしょうが」


「あの、もしあの子を引き取りたいと言った場合はどうすればいいんでしょうか?」


「勇者様!?」


「ほぉ、勇者殿はあの子を引き取りたいとおっしゃいますか。戦闘では何の役にも立たない子供ですよ?」


「私は反対です! 境遇に同情したとかならやめておくべきです!」


「アリア、俺は考えがある。信じてほしい……」


「でも!」



 アリアが反対する理由もわかる。戦力にもならない子供を連れて行くということは、必ずと言っていいほど足手まといになるのからだ。

 ましてや俺はミケーレさんに一撃を入れられるようにはなったけど、実戦経験が圧倒的に足りない。それでも、様々な情報を簡単に入手できる鑑定眼の持ち主を確保できるならやっておくに越したことはないと思った。



「あの子の資料があったら見せてください」


「かしこまりました。ですが、先ずはお二人でよく相談した方がよろしいですな。それにあの子もまだ体調が思わしくない。こちらも勇者殿が気にかけられているようですから、すぐに売りに出すようなことは致しませんよ。また、お越しくださいませ」



 奴隷商人からアリアと話すべきと言われ、追い出されてしまった。

 でも、今後人員を増やすとしたらパーティメンバーであるアリアと話す必要が出てくるのは確かだから、その申し出はありがたかったかな?

 女の子のスキルをまとめた書類を預かって、俺はどうやってアリアを説得しようか頭を悩ませることになった。


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