図書室に
結局学校はサボってしまった。とんでもない話をさせられるために。
あの世とこの世の大きな違いは、次元だけだそうだ。
「低い次元からはそれより高い次元の存在を認識できないんですよ。」
つまり、死ぬといっても次元が少し上がるだけ。というのが彼女の言い分だ。
彼女は元人間でその後、あの世で死神という職に就いただけなのだ。
「私は『次元調節式』を使ったので、人たちにも見る事ができます。」
『次元調節式』とは
ファスディード・ルガ鉱石 というものを正三角形になるように置き、その真ん中に立つとその場に見合った次元に合わせてくれるそうだ。これは死神にしか与えられていないそうで、結論を言うと彼女は次元を超えてここに来た。
「大きさは問われません。上から見て正三角形になっていれば可、誤差5mmまでです。中心に立つ者の誤差範囲は10cmくらいだったと思います。」
何故僕は加害者なのか。どうやら、部活をサボり、図書室にてダラダラしていた時からが始まりらしい。
確かに、思い出せば、僕は棒人間を描いた。
あの時すでに次元調節式が仕掛けられていたそうだ。
「あっちでちょっとした事件が有りましてね。もう仕掛けた犯人は捕まったんですが…」
今あの世では二つのある組織らが火花を散らしていて、戦争にまで発展しそうな状況らしい。と、なるとやはり人員が足りないのだ。死んで次元を超えるといっても失敗の例は多いそうだ。特に安楽死などされては上手く行かないとか。で、何故そこで僕の棒人間がでてくるのか。
「その犯人が組織の1人だったようで、『対人造兵プログラム』というものを多くのルガ鉱石に組み込んでいた様です。」
大半は死神の手によって回収、解除されていた様だが、ただ1つこちらに運良く仕込めた物があったそうだ。
そこの丁度真ん中を通ってしまった人間は、この次元からこの次元に飛ぶだけで、外見からは何もないが、少なからずルガ鉱石の効果は発動している。『対人造兵プログラム』はこの様にして連載発動したという。
「ここの人間に人を出来るだけ残酷な殺し方をさせ、自分たちの兵力を増やす。というプログラムだったそうです。」
棒人間であっても、2次元の存在だ。たまたま僕が棒人間を描いたのが正三角形の中心で、たまたまそのプログラムが仕込まれていて、僕画伯の人間は次元を超え、残酷な殺人鬼となろうとしていた。
「私が急いで封印した時、もうすでに上半身は出ていました。彼の力を見込んで計算すると3日後の夜と言ったところでしょうか」
「ちょ、ちょっと待てよ!勝手に話進めやがって!だいたい、僕は指で描いただけじゃないか!」
「要るのは存在では無く、認識です。彼がそこに居ると貴方は認識しました。意識ではかえられませんよ?」
「どうすればいいんだ…僕は……どうすればいい!?死神!!!」
「私にだって生前の『渡辺』と言う名がありますよ。まぁ最初から決まってます。エサになってもらいましょう!」
囮ということだろうか…!?
「実は、貴方を見殺せば彼は消滅するんですよ?」
「えっ…」
「認識してくれているのは貴方だけでしょ?貴方が死ねば消滅します。」
事実上、そうなるそうだ。
「だから、貴方をまず拘束しにくるはずです。そこを叩きます。」
目が殺る気になっている。どうやらドッキリという期待は無くなった様だ。
たとえ、たまたまでも実行犯は僕だった。このままでは死人が出かねない。
僕は腹を決めてこう言った。
「僕に殺らしてくれ…」
「はい?」
「僕も共犯だ。僕が殺る!!!」
死神はとまどった。が、直ぐに微笑みに変わった。
「ふふん。面白いですね。ではこうしましょう。」
楽しそうな表情を始めて見せた。
「3日後、彼は動き出します。もし、死人が出た場合、こっちの世で元どおり生活する權利を与えましょう。貴方は彼を倒して下さい。また、結界は張りますが、万が一彼が学校外に出た場合も終了です。」
僕が終わらせる。こんなことになってしまった。その落とし前はつけなければならない。
僕とて関係者なのだから。
「死んで詫びるつもりだけならやめといた方がいいですがね。」
僕は戦う。自分が生み出した殺人鬼と…
人生は後悔の連続だ。ここでおとなしく、エサになっていれば。丸く収まっていたというのに。