無意識な
管理棟F4の第二図書室。僕は机に「棒人間」を描いた。
描いてしまった…
特に考えもせず、無意識だった。なんて、言い訳にもならない。
もしかすると、これは偶然ではなく必然で、運命なのかもしれない。
と、なると僕、沢木 圭一が運命を受け入れ、人でなしとして、人でなしだからこそ丸く収められた。
だたそれだけの事だった。時は過去を劣化させる。それだけだ。
一度死んでしまえば、そう思うだけだった。
高校生活2年目の初夏。いや、すでに殺人を目的とした日光がギラギラしているわけだが、僕は休日にテニス部が部活動を行っている最中、本も読まず図書室の真ん中の机でグッタリしていた。ちなみに、自分はテニス部である。
クラブ用のTシャツに着替えたまではいいものの、どうもあのノッポ顧問の姿を見てしまうと、力が抜けると言うか、なんと言うか…
と、いうわけで僕は途中で出会った賀城と共に、我が際葉高校が誇る二室に別れた図書室にて、クーラーを堪能している真っ最中である。
「いやはや、いいねぇ〜この環境はぁ〜」
罪悪感の微塵もない賀城の声。
「部活サボってんだぞ。テストも近いし…あぁひみつ道具でパパッとテストとかやってくんねぇかな〜…」
「10日前からテストの心配とは、ケイの成長も侮れないね」
うむ、完全に舐められてる…
「ところで発展途上人間ケイ君」
「ネーミングが酷すぎる!」
「今僕らが居る次元はなんだい?」
「ん?」
唐突な質問に動揺する。
「えぇっと…3次…あ、4次元なんだっけ?」
「本当はもっとあるかもしれないけど、まぁ4次元と仮定するとね」
賀城は顔にでるタイプだ。察するによほど話したいのだろう。
「4次元ポケットはこっちと繋がってるっていう事になるんだよ」
なるほど、言われてみればそういう事になる。
「つまりつまり、あっちの世界からドラえもんがやって来てもそれは事実上不可能ではないんだよ」
つまりつまり、あんなドアやこんなプロペラも努力次第で…!
「って、オイ……」
あぁ、気付かなきゃ良かった…
「ドラえもんって存在が居ないんだから次元が繋がるわけないだろうが!」
「いやいや、ドラえもんは2次元に存在するよ?ないのは4次元ポケットさ」
「…結局、無理なんだな?バカにしやがって…」
「まぁあり得ない。が、正しい言い方だね。って言うか、気付くの早過ぎ…」
「…」
「後30分は妄想に浸ってくれると思ったのに」
こいつはゲスい。そういうやつだ。
はぁ…次元か……
実を言うと、別段、二次元美少女とかそういう系でではなく、純粋に絵になれたらなぁ〜と思っていた時期もあった。二次元への憧れはもしかすると、誰にでもあるのかもしれない。
「ドラえもんがこっちの世界にか…あぁいい夢でした」
後々、何度このクーラー室に戻りたいと思っただろうか。
その行為は数秒で終わった。机に、自分の指で、ただの「棒人間」を描く。たったそれだけで、次元は繋がった。異次元の者を引き寄せた。数秒だ。が、そこにある意味は莫大なんてレベルではなかった。
あぁ信じてくれ、悪気などはこれっぽっちも無かったのだ。しかし、もう遅いのだった…
夜、机を突き破って、次元を突き破って出て来たのは、顔が無く、細い棒によって人間の形をした…
存在は儚く、その体ゆえに恐怖を与えた。名前は教えてもらった。
「対人造兵プログラム」死神はそう教えてくれた。