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夢は大きすぎるとダメかも?  作者: カレンさ~ん
2/23

出会い

もっと頑張らなくては・・・

  ここは九つある大陸で一番小さく(その中でも地球の半分の大きさがある)温暖な気候に恵まれたグリンクスという。その中でも緑に囲まれた、マサクという街。

  そしてここに一人の少女がいる。

  歳は15、6くらいで肩まである黒髪、美少女に分類される顔立ちをしている少女は、ない胸を張って堂々と宣言をする。


「私はこの世界の王になる!」


  この少女の名前は逆神アテネ(さかがみ アテネ)赤の他人が聞いたら、「この人、大丈夫?」と周りから冷たい視線を浴びるであろうことを言っているが、彼女にとってそれは本気で叶えたい夢であるのだ。

  そんな彼女が今、宣言した相手は雑貨屋のおじさんだ。

 

  「だからそのペンダントまけて!!」


  夢は大きいのだが、今やっていることは値切りという小さいことなのだ。


  「ワハハハ、嬢ちゃん面白いこと言うな」


 この雑貨屋のおじさんも例にもれず、アテネの言っていることを冗談だと思ったらしく、豪快に笑う。


  「面白い冗談だったから・・・これならタダでやるよ」


  おじさんはヒョッイっとアテネに投げ渡す。


  「かなり前に要らないからやるって吸血鬼のねーちゃんが置いてったものだかな」


  おじさんは、ワハハハとまた豪快に笑う。

  アテネは手を開いておじさんが投げてきた物を確認する。

  灰色の宝石?が埋まったシンプルなイヤリングだった。


  「これで我慢してあげる・・・」


  貰った人としては誉められた言葉使いではないが、アテネ自身は結構気に入ったらしくその場で左耳に着ける。

  おじさんに見せるために軽くステップを踏むと、それに合わせて肩まである髪が揺れる。

  ヒュー、とおじさんは口笛を鳴らす。

  おじさんはイヤリングが似合っていたから口笛を鳴らした訳ではない。その動き一つで周りを歩いている者たちやおじさんも目を奪われてしまうくらいの魅力があったからこそ口笛を鳴らしたのだ。

  これはアテネなりのお礼なのだ。


  「今度は何か買っててくれよ」


  ワハハハ、という笑い声を背中に受けながらアテネは人混みの中に消えていく。

  人混みの中でも美少女を見つければ普通は目がいってしまうはずだが、誰も見ない。それどころか誰も避けようとしないのだ。まるで道端に転がっている小石か何かのように、誰も気にしない。

  アテネは人をかわしながら目的の場所に向かって歩く。

 

  数分後、足を止めた場所は大きな両開きの扉がある建物だ。扉の上にはタイガーウッドと書かれている看板が掛けられている。


  「・・・ふぅ~・・・」


  アテネは扉の前で一度深呼吸して、ノックするために手を前に出す・・・と思いきや拳を握りしめて後ろに引き絞る。そしてそのまま、扉を殴り飛ばす。


  「頼も~・・・」


  ダァッン、という轟音が響き、中からは怒鳴り声がいくつも上がる。


  「何だ!!」

  「おい、大丈夫か!」

  「誰だこんなことしやがったのは!!!!」


  視線が扉があった場所に集まったが、そこには少女しかいなかった。

  アテネからは十人十色の表情が見てとれた。

  しかし、それはすぐに全員同じ表情に変わった。


  奴を生かして帰すな・・・


  殺意に満ちた表情、肌がヒリヒリするような、ゾクゾクと体からわき上がる震え、だがそんなのどこ吹く風。スタスタ、と中に入って行く。


  「止まれ!!!」

  「よくもやってくれたな!!」

  「タダで済むと思うな!」


  片手をポッケに突っ込んで、もう一方を突き出しこれ以上進めば後悔させてやる、という眼差しだ侵入者を見る。

  斜め後ろにも二人、、腰の高さに両手を構える、腰の日本刀に手をかけ臨戦体勢の男達。

  三人は綺麗な三角形の頂点に位置し、お互いの攻撃が当たらないように立ち、侵入者を囲む。


  「食らえ!!」

  「オリャ!!」

  「はっ!!!」


  三人は気合いと共に攻撃を始める。

  突き出した手から火の玉が飛び、両手からは火花が散り稲妻が走り、肉薄して鋭い斬撃放つ。

  三人の連携は凄まじく、火の玉で牽制をして避けたとろろを斬撃を放ち、かわされ反撃されれば雷撃が飛び反撃を許さない。

  十分くらいにたった頃には三人は肩でゼェーハァと息をしていたが、かすり傷一つなく避け続けた侵入者はつまらなそうな目を三人に向けている。


  「くそ!・・・おい!」


  片手をポッケに突っ込んでいる余裕もなくなり、両手を膝においていた男が二人に合図をする。

  三人は距離を取って最初と同じ三角形を作る。

  そして、それぞれ、両手を胸の前に出し、両拳を真っ直ぐ前に突き出し、居合いの構えをとり、各々が全力を出せる構えをとる。

  これには仲間達も驚き、まじかよ、こんなところでよせ、と声があがる。

  侵入者は三人を見渡し、幻滅したかのように目を閉じる。

  男達はその余裕の態度に怒りを表し、更に力を込めて気合いと共に仕掛ける。

  空間が熱膨張で揺らめくような炎、空気の絶縁を走る青白い雷撃、目にも止まらぬ抜刀で生じた真空刀が侵入者を襲う。

  熱風と土煙で辺りが真っ白になり、仲間達の皆は終わったな、などと思い、この後にやるであろう建物の修繕や改装のことを考えながら土煙が晴れるのを待った。

  土煙が晴れると侵入者は何処にもいなく、真っ黒に焦げた床があるだけだった。


  「・・・勝てねー・・・な・・・」


  バタバタバタ、と三人が前のめりに倒れていく。


  「おい!大丈夫か!」

  「頑張りすぎだ(笑)」

  「この後考えろよ(笑)」


  「そうね、頑張ったわ・・・」


  全員が二階の柵を見た。

  優雅に柵に腰掛け、肩越しに一階のロビーを見下ろす侵入者。


  「あなた達は眺めてるだけだけど、参加しないの?」


  前に向き直り、丸テーブルを囲む男達に問いかけると、一番奥に腰掛ける二十五歳くらいの目の細い男が答える。


  「私達は非戦闘員なもので・・・」

  「そうなの・・・でもあなた達もここの仲間でしょ?」

  「そうですよ、あなたが倒したい男達は私の部下ですよ・・・」

  「その割に全然殺意を感じないのだけど?」

  「?・・・何故殺意をあなたに向けなければいけないのですか?」

  「?・・・あなたの部下達をフルボッコにしたのは私なのだけど」

  「う~ん・・・あぁ~、なるほど、言いたいことは解りましたが私には関係ないですね」

  「どういうこと?」

  「いえ、そのままですよ・・・弱い部下には興味がないだけです・・・」

  「そう・・・」


  アテネはゴミでも見るかのような目に、怒りを込めた声で低く答えた。

  だが、男の方は楽しげに質問を投げ掛けてくる。


  「それよりも、私はあなたに興味があります」

  「私はないわ」

  「そうおしゃらずに・・・私たちの仲間になりませんか?」

  「よくそんなことが言えるわね」

  「このご時世てすからね、勢力を伸ばすなら今ですから」

  「勢力を争いに興味はないわ・・・さようなら」

 

  重力に身を任せて、ゆっくりと綺麗すぎる笑みを残して、上半身が男達から見えなくなる代わりに足が上がっていき、見えなくなる。

  空中で一回転半捻りをして、スタスタと扉のない入り口に歩いていく。


  「あなたは後悔しますよ」

  「ご忠告ありがと」


  ヒラヒラと手を振りながらタイガーウッドをあとにした。



  時間は過ぎて辺りが暗くなり、家々の窓から灯りが漏れ出してきた。

  アテネは宿屋で借りた自分の部屋から左右に伸びる道幅の広い石畳の歩道を眺めている。

  もう、夜だというのに世話しなく走る男達が目に止まる。


  「・・・・・・」

  (何か変ね、私を探してる感じてもないし)

  「まぁ、そのうち分かるわね・・・」


  シャワーを浴びて濡れた髪を拭きながら、窓から離れてベットに腰掛ける。

  服装は昼間と同じで、七分のズボンに上も同じく七分の服、その上に肩から先がない白衣のような服を着ている。脱いだ服はクシャクシャになって鞄の上に投げ捨てなれている。


  「それにしても退屈だったわ・・・」


  両手を投げ出し後ろに倒れこむ。

  あの後も街中を歩き回って、チンピラから喧嘩を買ったり売ったり、ギルドに腕試しを頼んだりしていた。流石にタイガーウッドのようなことはしていない。あそこだけは、いい噂を聞くことが出来なかったためにあんな手段を取っただけだ。

  喧嘩も腕試しも全てアテネの勝利で終わった。その中にアテネを満足させる戦いはなかった。

 

  「・・・・・・ふぁ~」


  横になったことで眠くなったのだろう、アテネは布団の中に潜り込んで頭の上にあるつまみを回して部屋の灯りを消す。



  「きゃーー!!」

  「逃げろー!!!」


  外から聞こえる叫び声に目を覚ますと、窓からは昼間と同じくらいの赤い光が射し込んできていた。

  飛び起きて窓を開けて外を見てみると、辺りは逃げ惑う人、それを誘導する人、そして真っ赤に燃えている家々。

  見るからに異常事態である。


  「これは大変なことになったわね」


  かなり深刻なことになっているのにも関わらず、アテネは口角をつり上げて笑っている。

  狼が獲物を捕らえる眼差しで辺りを眺めて笑っているのだ。

  窓に足をかけて向かいの屋根に飛び移り、着地とともに走りだし街の中心に向かう。

  下はパニック状態だ、誘導している人がいるが全然役に立っていない。

  消火しようにも人が邪魔で上手くいっていない。

  アテネは前に向き直り先を急ぐ。その表情はさっき打って変わって、真剣な顔持ちになっていた。


 


 街の中心辺りに近づくにつれて下の様子が変わってきた。

  バン!ダン!と小競り合いが起きている。

 

  「おい!屋根の上にいるぞ!」


  下から獣の耳が生えた男が此方に耳だけ向けて大声をあげると、前方の家の影から男がジャンプしてきた。

 

  男はアテネを見定めて空中で大きく両手を広げて、周りにピンポン玉大の水の塊を無数に作り出す。そして両手を前に突き出す。男の周りに作り出された水の塊は空気抵抗を無視してアテネに向かって放たれる。

  アテネは水の塊の弾道を全て読み切り、最小の動作でかわしていく。水の塊を受けた屋根は無数の穴が開く。

  これでは仕留められない、と男は屋根に着地と同時に手に水の剣を作り出して構える。よく見ると水の剣は刃の部分が高速で動いていることが分かる。 まるでチェーンソーのようだ。

  アテネは男を見て懐から、手の甲の部分と第一関節に鈍く光る金属がついているグローブを取り出して手にはめる。

  男は上段から水剣を降り下ろす、アテネは手の甲でそれを受け止める。

  ギュイーンと金属を削る音が響き、男は一瞬驚いたが、すぐに邪悪な笑みに変わり、水剣の先が変形してアテネを襲う。

  顔を反らしてかわし、反撃に蹴りをお見舞いする。

  男はチッ、と舌打ちして左手でガードする。

  今度はアテネが笑った、当たる瞬間に蹴りが加速して、男の腕をへし折ってなお勢いを止めず、体がくの時に曲がり、足が屋根から離れて、男の体は下の仲間たちの上を通過して、家に激突する。

  瓦礫の破片が辺りに飛び散り、土煙が上がる。

  アテネは男を確認して、先に進む。


  男は壁に当たる寸前に水の膜で衝撃を和らげていた。それでも重症のダメージを負っていた。


  「へっ、敵にも、やばい、奴が、い、たん、だな、おれも、まだ、まだ・・・」


  男は最後にカッコつけながら気絶した。

 

  下は騒然としていた。

  仲間をやられた者は怒りを敵にぶつけ、そうでないものは、何が起こっているのか分からないが、殺意は理解し、全力で相手をしている。

  どちらも目の前の敵の対処に追われて、アテネを気にする処ではなかった。

 



  事を起こした張本人は追撃が無いため、邪魔されずに中央まで来ることが出来た。


  「死ねやー!」

  「邪魔すんじゃねー!」


  中央はまるで、犬や猫の喧嘩状態だった。

  円形の広場に殺気が立ち込め、誰も指揮を執ろうとせず、連携が全く取れていない。これなら、まだ蟻の方が有能かもしれない。


  「只の喧嘩ね・・・面白くない!」


  屋根から広場の真ん中に向かって跳躍、空中で体を捻って、回転力と体重の乗った拳で地面を殴り付ける。

  アテネの拳は地面に容易く突き刺さり、辺り一帯が激しく隆起して、空中に投げ出される者や地割れに落ちる者、皆一様に、何が起こったのか分からずという顔をしている。その中にアテネも含まれていた。

  確かに地面に、拳が突き刺さる感覚があったはずなのに突然、足下の地面が綺麗さっぱり、無くなったのだ。

  これにはアテネも驚愕した。

  それが命取りになったのは、言うまでもない。

  思考を再起動した時には、アテネの体は下へ、落ちていく。

  手を伸ばしても壁には届かず、重力に引っ張られて、下へ加速していく。

  上を見ると、穴がどんどん小さくなっていくのがわかる。

  早く手を打たねば、必ず地面に激突する。

  そうなると、アテネの体は潰れたトマトのように原形を留めていないだろう、もしかしたら運が良ければ、人間と見分けがつくかもしれない。

  下をみる。


  (っ!)


  咄嗟になんとか取ることができた。

  手に掴んだのは、壁から突き出た一本の棒。

  だが、壁に刺さっていた棒は、スルリと簡単に壁から抜ける。

  アテネの手に握られたのは、何処にでも在るような槍。

  すかさず石突きで壁を突いて、反動で反対の壁まで進み、槍頭の根本を両手で持って、壁に突き刺す。

  線香花火のように火花が穴の中を照らし、金属を削る高い音と靴の裏からの摩擦音が響く。

  加速していた体は、徐々に減速を始めていく。

 

  (!!!?)


  またしても突然の浮遊感が襲ってくる。

  下から地面が迫ってくるのが見える。


  (速度は落とした・・・これなら、いける!)


  石突きを右手で持ち、腰を捻って左肩から槍を後ろにまわし、目の前に迫ってくる地面にタイミングを合わせて、槍の先をぶつける。

  ぶつかった槍は弓のように反り、槍頭の根本から折れて吹き飛び、折れた先が更にぶつかり、折れて吹き飛びを繰り返し、短くなった槍は放り投げて、捻りの回転を使って後ろ受け身を取る。


  (くっ!)


  全身に痛みが走って文句を言ってくるが、意思の力で抑え込んで、直ぐに飛び退ける。

  今受け身を取った場所に、雨のように石が降ってきて土煙をあげる。

  槍で落下の衝撃を抑え、地面が砂だったので、動けなくなるダメージを受けずに済んだ。

  これがもし、硬い地面だったら、身動きが取れず山のように積もっている、あの石の下敷きになっていた。


  (考えたく無いわね・・・石の下敷きなんて・・・)


  落ちてきた穴からは光が漏れて来ないが、壁が淡く光っていることに気づいた。そういえば、光る鉱石があったことを思いだし、辺りを見渡す。

  二つの大きな穴が目に止まる。

  近づいて一方を覗き込むと、緩やかな坂になっていて、中から鼻に突く臭いが漂ってくる。

  アテネは早々に外れと判断して、もう一方に足を踏み出した時に、何かが足に触れる。

  何が触れたのか確認するために、視線を下に向けようとした時、視界に鈍く光る物が入ってきた。

  頭が動くよりも速く、体は反射的に動き頭を横にスライドされている。

  舞い上がった髪中を一本の矢が通りすぎ、髪を切断していく。

  直ぐに大きく後方に後退して追撃に備える。

  しばらく、穴の奥を見つめていたが、二射目が襲ってくることはなかった。

 

  油断なく構えを解いて、穴の入り口にしゃがみ込んで目を凝らすと、横一線に鉄の糸が張られていた。

  口角を吊り上げながら立ち上がり、穴の奥を見据える。

  目は歓喜の色を染まり、意気揚々と足を踏み出す。

 

  少し歩くと地面の砂が硬い石に変わるところで、矢を打ち出した装置が見えた。

  ここまで何の仕掛けもなかった。その事が警戒心を高める。

  周りに気を付けながら装置に近づいて確認する。

  簡単な仕掛けで、次矢を装填することも出来ない一度きりのものだった。


  (一度きりということは私が初めて挑戦者ね!)


  更に、目の奥に挑戦心の火が荒ぶり出しているが、思考は冷静に行う。


  (侵入者を拒む物なら、一度きりの仕掛けは使わないはず・・・誰かが定期的にここまで来て確認するならアリだけど、そんな形跡は何処にも見当たらなかった・・・ということは!)


  思い至ったことに思わず興奮を隠せず、爛々と目を輝かせて、また穴の奥を見つめて言葉を漏らす。


  「この奥には魔王が封印されている!」


 



  話は変わって、今から百年以上前に一人の英雄が現れた。

  よくある話で、英雄は自分勝手に命を玩具のように遊んだりする魔王に怒り、世界中にいる魔王を封印してまわった。

  今でも、子供まで知っている有名な話だ。

  その話で語り継がれている英雄の格好は、全身真っ赤だった。

  これは今でも、研究家の間で議論されている。

  ある者は我々の怒りを色で表しているだの、返り血を隠すためだの、色々な意見が飛び交っているが、真相を知る者は、今も昔も数少ない。

 

  英雄が多くの魔王を封印したことによって、自分の故郷を命懸けで守ることがなくなり、平和になったと思われたが、魔王の脅威が無くなった途端、今度は自国を守る力を侵略に使い始めた。

  大国は小国を蹂躙して奴隷のように扱った。

  小国の民は英雄の再来を期待して待っていたが、皮肉にも立ち上がったのは魔王の集団だった。

  彼等は有無を言わせず、圧倒的な力量差を見せ付けた。

  だが、彼等は魔王だ。

  大国と戦争をしている小国を助けるために動いてはいなかった。

  己の欲望を満たすためにしか動かないという、その通り彼等は大国だけではなく、小国にも甚大な被害を出した。

  その事は世界中に瞬時に広まり、賢明な国はすぐに戦争を止めた。そうでない愚かな国は言うまでもない。

  自国を守るために戦争が無くなったころ、魔王の集団も大人しくなり、彼等は自分達のことをこう呼んだ。


  ー全ての争い事に現れる、我々はフィンブルだー


  と世界に宣言した。

  彼等は宣言通りに争いが起きる度々に現れ、恐怖と憎しみの象徴として英雄と共に語り継がれていく。





  アテネが生まれた時には、この世界は平和になっていて、一人で国を落とせる力を持った魔王はいなかった。居たところで自称程度の力しか持たない者しか、残っていなかった。

  それが今、目の前に本物が居るかも知れないのだ。

  アテネの中には戦ってみたい、という願望が大きくなっていて、自分が負けることなど微塵も考えていない。

  これは、これまでの生い立ちが原因かもしれない。

  彼女は一度、魔王(自称)と戦って完全勝利を飾ってしまったのだ。その事が、アテネ自身分かっていないだろうが、天狗にしているのだ。

 

  初めの一歩を記念にするかのようにゆっくり、大きく踏み出し、罠を作動させる。

  壁の小さな穴からは槍が不規則に、全方位の空間を埋め尽くしていく。

  左からの槍をターンをしてかわし、続いて宙返り、側転、槍を蹴って矢のように回転しながら槍の茂みから抜け、靴を滑らせ回転の勢いを殺して停止、余裕の表情。


  (これくらい出来て当たり前ね)


  槍で塞がった道を横目に見ながら、先へ向けて優々と歩く。

  罠は多種多様で、古典的だけれども有力な落とし穴、気付いた時には下敷きになっている、天井が落ちてくる仕掛け、踏んだ瞬間にギザギザの鋭い刃が、足を挟み込んでくる物、それら全てをアテネは余裕でかわしていく。

  しばらくして、至る所にある穴から、矢が出てくる仕掛けを抜けたところで、落ちてきた所と同じドーム状の大きな空間に出た。

  ドームの中央には落ちてきた穴より大きな円形の穴があり、その奥に重々しく、幾何学模様が壁と同様に淡く光る、両開きの扉が鎮座している。

  さっき飛び出してきた矢で、壁から石ころ大の光る鉱石を削り取って、穴の淵から下には落とす。

  光が小さくなっていき、豆粒位まで小さくなって、石と石がぶつかる軽い音を数回鳴らして止まった。


  (大体、百メートルくらいかしら・・・)


  穴の底から顔をあげて少し考えてから、穴の淵に沿って扉の前まで歩いていく。

  幾何学模様は変わらず淡く光っえいる。

  アテネは扉にそっと指先を触れさせるが、何も起こらなかった。

  封印の扉は大抵、侵入者を撃退するために触れることすら出来ないと、前にトレジャーハンターから聞いたことを、ついさっき思い出した。

 

  (それに、封印を守るガーディアンもいない・・・外れかもしれないわね)


  少し落胆してしまったが、中に何があるのかは気になるので、開けることには変わらない。


  (お宝なら嬉しいけど、理性の無い化け物は面倒いし、何より面白くないから勘弁してほしいわね!・・・)


  助走をつけて、勢いを殺さないように力強く一歩を踏み込んで、足の捻りから始まり、腰で、肩で、腕で、破壊のエネルギーを増幅させて、全力を叩きつける。

  ドーム状の空間が大きく揺れ動き、アテネを中心とした地震が起こった。

  それでも扉には傷一つなく、代わりにアテネの拳が痺れる。

  グローブには全力をぶつけられるように、アダマンタイト(金剛鉄)で保護してあるため、拳が壊れる心配はない。


  (全力でも開かない・・・どうしよう・・・)


  やろうと思えばもっと強くすることも出来るが、それだけではこの扉を開けることは出来ないと、拳から伝わる感覚で分かった。

  次なる手を考えてからいると、背後から轟音と共に衝撃が襲ってきた。

  後ろを振り向くと、円形の穴が綺麗さっぱり無くなっている。その代わりに穴の上にあった天井が丸くくり貫かれている。


  (さっきの衝撃で落ちてきた?・・・でも都合良く穴のサイズピッタリに落ちてくるわけがない・・・ということは!)


  アテネの予想はズバリ的中した。

  幾何学模様を光られていた扉は光を失い、重々しい音を鳴らしながら、ゆっくりと焦らすように開かれる。

  そして、扉は全開まで開かれた。

  中は真っ暗で何も見えない。それでも何かがいることは肌で感じられる。


  (・・・さぁーて、ご対面ね!)


  気合い十分、今まさに足音が聞こえ始めて自分が挑む者の姿が露になった。

  アテネが見たものは、黒の短髪、黒い目、まぁ~イケメンの方に入るのではないかという顔立ちをしている青年だった。

  その青年は言い放った。


  「ここ何処だ?」


  これがこれから、アテネと共に長い旅をすることになる青年の一言だった。

これからもっと頑張ります。


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