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Right M  作者: 紅葉紅葉
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第四話:Brack ray and Thunder bow person

 こんにちは。久しいですな。私です、グリモアです。

 今回はお詫びを最初に申し上げます。この小説は、一か月一話更新だったのですが、テスト、スランプなどにより、筆者が筆を進めていませんでした。

 ゆえに、今回の話はこれまでよりも少なく感じられるでしょう。前回の半分ほどしか、文字数はありませんから。

 この遅れた分は、夏休みで返上しますので、どうぞ、今後ともよろしくお願いします。


 では、魔法少女の世界へ。再び、参りましょう……。

「誰やっ!?」

 少女、文月(ふみづき) (ひかる)を倒そうとして振りかぶった二面の後悔(リグレット・ディドル)が撃たれた。しかも、目の前の少女による物ではない。横から介入されたのだ。

「あっ、あっ、あっ……」

 しかし、私が敵を追おうとした瞬間、文月 光が下へ降下していった。その目には、絶望、恐怖。私が昔感じた、まさに後悔すべきものだらけだった。

「くっ!」

 私は落下していく彼女を止めるために魔法陣を展開する。青い魔法陣が彼女の落下を阻止し、彼女は力なく倒れた。

「キューリ。その子、頼むわ」

「了解しました。お気をつけて」

 キューリがそう言って、彼女の近くに行ったことを確認して、私は素早く一閃が飛んできた方向へ飛ぶ。解放(トランシス)のおかげで、魔力が少ないが、まだ追う程度ならできる。

 学校を抜け出し、住宅街まで出てしばらく、私はやっと戦闘の邪魔をしてきた相手を見つけた。

 その姿は、黒髪のポニーテールと、手に持っている黄色く光り続けている弓が特徴的な、少女だった。

「あんた、誰や!?」

 その問い掛けに、その少女は優しく、しかし冷たく答える。

「私の名前は、金芽(かなめ) (こころ)。黄色き一閃を持つ、魔法少女というものよ」

 その手に持っている弓を構え、撃つか否かの状態でそう言った。

 この距離なら避けられなくもない。ならば交渉し、敵の戦力を把握しなければ。

「なぜ邪魔をしたんや?」

「あの子をやるのは私だからよ」

 その言い分、彼女を知っているようだ。何か、私怨みたいなものがあるんだろうか。

「まぁ、あんたが来る前に、彼女はだいぶ参ってたようやけどな」

 彼女が放とうとして放たなかった銃弾。そして、彼女のあの叫び。彼女の精神状態は明らかに悪かった。不安定で、少し前の私みたいだった。見るに耐えない、そんな感じだ。

「恐らく、あの事件を思い出したのじゃないかしら」

 あの事件……。私には知りえない情報だ。しかし、解るのは、彼女が文月 光に関しての情報を多く持っていることだ。これは、非常に有益だ。

「とりあえず、あんたに聞きたいんやけど……。あんたはどうしてほしいんや? 戦うって言うなら、戦うで」

 正直、交渉は苦手だ。だから、できれば早めに決着をつけたいのだが。

「戦うつもりはない。とりあえず今日は、彼女に干渉できただけで十分」

 どうやら私は眼中にないらしい。しかし、そうとなれば実に嬉しい。今の状態では絶対に勝てると言う見込みはない。無駄な戦いは避けるのが一番だ。

「そういうわけで、私は消える。彼女によろしく」

 そう言って、私の前から去っていった。

 事件、か。彼女にも、暗い過去があるのかもしれないな。となると、なんだか戦う気が薄れてくる。

 そう考えていると、別行動中のキューリから声が聞こえてくる。

『どうやら、文月さんのお仲間である方が来られたのですが、どうしましょうか?』

 恐らく、あの頭の切れる赤いほうだろう。これは一度干渉したほうがいいのかもしれない。

「解った。すぐそっちに行く」

 私はそう応え、全速力でキューリの元へ向かった。





「なぜ、射なかった?」

 隣にいる、私の相棒といえる存在、ビィーナが、そう目を細めながら聞いてきた。

 そこには、狩人としてのプラウドがあるに違いない。

 だが残念ながら、私はそれを否定する。

「私の対象は、あくまで文月 光のみ。彼女以外は、今のところ狙わないわ」

 そう。私の狙いは、文月 光のみだ。彼女さえ撃ち落とせば、私の目標は達成する。

 あの時の屈辱、そして行き場を失った復讐心がやっと解消できる。ただ、それだけで心が揺れる。

「だが、あの時の白い奴、まるで戦意がなかったぞ。まるで、何かに怯えているようだったが」

「そうね……」

 原因は、恐らく、あれ、だろう。あれ、が変に作用して、あぁなったんだろう。

 まぁ、トラウマ級の出来事だったんだ。思い出して、あぁなるのはしょうがない。

 逆に言えば、よくあんな武器で戦えたものだ。私の武器、弓とほぼ同じ原理だというのに。射るか、撃つか。ただ、それだけしか違わないというのに。

「まぁ、次に会ったら射るのみ、か」

 例え、彼女が動けなかったとしても、射る。この戦いに、死はない。強いて言えども、記憶が消える程度らしい。昨日の、あのラジオから得た情報だ。

「帰りましょう」

 明日がある。明日は、弓道の大会があるのだ。代表選手として、それを休んでしまったら、大失態ものだ。

 私は変身(コンバージョン)を解き、夕暮れに染まった街へ消えた。





 魔力の反応があったことで、家から急いで戻ってきたわけだけど、まさかこうなっていたとは思ってもいなかった。

 僕の目の前には、未だ痙攣を起こしている少女、文月(フミ)がいる。目はずっと開かれていて、焦点が定まっていない。

 この状態は、僕は昔からよく知っている。詳しくは五年前、あの事件からだ。

「トラウマ、か」

 当時、小学三年生だったんだ。記憶に深く刻み込まれたんだろう。

「キューリ……だったっけ? 魔法陣、どれぐらい持ちそう?」

「あと数分ですね。ご主人様(マスター)のご到着までにはもてばいいんですが」

 文月(フミ)と戦っていた魔法少女の相方がそう言った。その姿は、まるで若い執事のようだった。目がきりっとしており、男の自分でも憧れる。……変な意味でマズルに捉えられないようにしないとな。

 信じるに値するかは、魔法少女に会ってから判断するが、とりあえずは安心してもよさそうだ。敵意はないようだし。

文月(フミ)……」

 とりあえず、目の前の少女を救うことから始めないと。

 しかし、どうしたものか……。

「マズル。僕たちの魔術は、回復系統はないの?」

「悲しいことに……。私は、その、外部干渉でしか魔力が働かないので……」

 マズルが萎れた葉っぱのように落ち込む。自分に出来る仕事がないと感じたからだろう。思い悩む必要もないけどね。

「まぁ、待とう。どうにかなるさ」

 どうにかならないなら、どうにかするが。どうにもならないというなら、問い詰める。場合によれば、殺す気で。

 ……我ながら酷い思考をしてしまった。

「来ました」

 キューリがやれやれ、と頭の髪を整えながら言った。僕は、ナクルスを手の中に持ちながら到着を待った。

 そして、僕の目の前に水色の魔法少女が現れた。その姿、金髪で碧眼。少なくとも、文月(フミ)よりはスタイルはいいかもしれない。これは、文月(フミ)に言ってはならないな……。銃でバンバン撃たれるな。

 そんなことを考えていたら、その少女が地に着いた。だがその瞬間、変身が解けて、服が朝鐘中学校の制服に変わっていた。

 しかし少女はそんなことお構いなしに、すぐさま文月(フミ)の元に近寄った。その時に僕と目があったが、一瞥しただけで文月(フミ)の傍らで膝を折って座った。

「失礼。ご主人様(マスター)は戦いになった方のことが気になるようでありまして」

「あ、いや。いいよ」

 キューリが代わりに謝ったので、僕は遠慮がちで答える。まぁ、あれかな。お嬢様と執事と捉えたらいいのかな?

 と、僕がそう思考していると、少女はやっと口を開けた。

「ナクルスの魔力が切れてしもうた。キューリ、悪いけどサポートしてくれへんか?」

 ……まさかの、関西弁だった。ギャップが凄すぎて、一瞬僕の頭の中の時が止まる。ギャップかぁ……。こんなに美少女なのに、関西弁かぁ……。

「解りました。魔法陣を展開します」

 そう言って、キューリは文月の周りに水色の魔法陣を展開させた。そして、そこから魔力が漏れだすように現れる。どうやら、文月に魔力を与えているらしい。

「ウチとキューリの魔力を精神に干渉させて、回復させる」

 初めて、まともにしゃべってくれた。

「それで、治るのか?」

 僕はとっさにそう返していた。なんの思考もしていない。だが、その程度のことでトラウマを克服できるのか、不安と興味を持ってしまったからだ。

「そうやな……、起こすことはできるで。やけど、原因が不明やからな……。原因を治すことは無理やと思う」

 関西弁の少女はそう言い、僕は安堵した。いや、実際は安堵したらいけないのかもしれない。彼女のトラウマが治ることは、別段悪いことではない。ただ、やはり外部からの干渉で勝手に治るのはおかしいと思ったからだ。

 これは彼女の問題だ。僕たちはどうすることもできない。

 そう思いながら、空を見上げた。夕暮れで、日が落ちていく。橙色の空が、僕たちを包んだ。





 昔。と言うほど昔じゃないけど、私は、弓道をしていた。しかも、幼稚園の頃からだ。私の家の近場にあった弓道場は年齢層が幅広いとして有名だった。幼稚園生から老人まで。みんな、楽しく弓道を学んでいた。

 私は別段、何か意志があって入ったわけではない。というよりも、小さい頃のことなんて、そうそう憶えてないから、理由は解らないのだ。ただ言えるのは、母に言われて入ったらしい。

 私の成績は、正直いいと言うといまいちだった。というのも、私はせいぜい地区大会を優勝できるのが精一杯で、それ以上では一勝すらできなかったからだ。先生からは高評価はもらえたけどね。

 それで、小学三年生の頃、私たちの弓道場は閉鎖されることになった。理由は、経営破産……となっているけど、違う。全然違う。そんな生温いものじゃない。

 先生が人を撃ったんだ。その弓で。みんなと楽しむための物で。人を、撃ったんだ。そして、先生は捕まり、弓道場は閉鎖となった。

 なぜそんなことを知っているか、なんて私が聞きたい。関わりたくなかったから。だって、偶然なんだよ。ただの偶然。必然性なんてない。私はただ、忘れ物がないか弓道場に戻っただけなのに。見てしまったから。先生が。人を、撃ったところを。血が。私の服について。こびりついて。取れなくて。どんなに拭っても。取れなくて。怖くて。恐くて。こわくて。

 ……そこから先の記憶はない。人としての本能がそうしたのか、私の頭の中から綺麗さっぱりない。憶えているのは、いつの間にか警察の人たちが弓道場に来ていて、先生が取り押さえられていた。先生は抵抗なんてしてなった。でも、笑ってた。自分が撃った人を見て笑ってた。醜く、笑っていた。

 それから、私は弓道と関わりを持たないようにした。今でさえ、思い出すのが怖い。今こうやって、何とか思考できるのが奇跡だ。

 でも。でもでもでも。人を撃ってしまった。今度は私だ。私がやったんだ。撃ったんだ。あの少女を。綺麗なあの子を。

 あは。もう、いいや。やっと、やっとやっとやっと。何とかなってきたのに。また、繰り返しだ。いや、今度は私か。あは。あはは。あはははは―――――――――――





 ―――――――――――――――――――――パシンッと、痛々しい音が世界に響いた。叩……かれた? 私が?

文月(フミ)……」

 そして、勢いよく私を抱きしめた人物がいた。その茶色い髪が印象的で、私の幼馴染で、弓道場の件があっても変わりなく接してくれた、私の、親友……。

「まさ、る……?」

 (まさる)だ。最近力がついて、私と身長が並んで、自慢げにしてきた勝が、私を、力強く抱いてくれていた。

 それが。とても、嬉しく思えてくる……。

「泣くなよ……」

 と言いながら、勝は目から涙を流した。そしてより一層、強く抱きしめる。

文月(フミ)が背負うことではないんだ。文月(フミ)が悩むことでもないんだ。だから、だから。そうやって、泣きながら笑うなよ……」

 勝が、泣きながらそう言ってくれた。

 悩……まなくていいの? 私は、あの人と同じなのに? あの、先生と同じことをしたと言うのに?

 そう言いたかったけど、声が出ない。嗚咽ばかり出て、言葉を作れない。それほど涙が出て。悲しい涙じゃなくて。嬉しい涙が、いっぱい出て。とても……胸が苦しくて。

「とりあえずは、何とかなりました」

「お疲れさんや、キューリ。寝ててええで」

「ありがとうございます、マスター」

 そんな会話が聞こえた気がしたが、私は勝を強く抱きしめる。こわいよ。自分が怖いの。あの人と同じ、人になりそうなのが。

 たとえ優しくても。人以上に闇を持って、光で偽りながら生きていくのが。もう、壊れたいよ。壊れて、楽になりたい。

 でも。そう嗚咽交じりで言うと、勝がバカやろう、と呟いた。呟いてくれた。

「そんなこと、言うなよ……。なんで、お前はそうやって自分以上に気を病むんだよ。だから、お前は……バカなんだよ」

 勝が。いつもとは違って力強く、頼もしいように言ってくる。それが、とても嬉しかった。





 翌日が休みと言うこともあって、今日はすぐに帰った。魔狩り(キル)は、勝と氷室さんがどうにかしてくれるらしい。

 今の私は……魔法少女になりたくない。その気持ちの方がでかい。

『人を撃てないということには怒りを感じない。これは人間として、当然のことだからな』

 ライもそう言ってくれている。それは嬉しい。でも、それに甘えていていいのだろうか? このまま戦いをせず、いいのだろうか?

 いや、いいんだろう。いっそ、もう戦いなんてせず、このままでいいんじゃないだろうか? それなら、ナクルスを折ってしまえば、全て終わるのではないだろうか……。

 そう思い、私はナクルスを両手で持って折ろうとした。でも、

「はぁ……」

 その行為はしない。いや、できない。そんな勇気はないし、それは最終手段だ。その手段をとるのは、本当に追い詰められた時だ……。って、それって、今じゃないのか……な?

 ……わからない。

「光ーっ! お客さんよー」

 突然、母の声が聞こえた。お客さん……誰だろうか? 居留守を使うのも手だけど、いや、ま、いいか。とりあえず、前に進まないと。気分が沈んでいるときはそれが一番だ。

「はーい」

 私は返事をして、階段を下りる。一瞬、ナクルスを持っていこうか悩んだ。でも、そこまで危険ではないと判断したので、持っていくのを止めておいた。今日は、もう外には出ないつもりだし……。

 でも、扉を開けたその先には、


「お久しぶり、光」


 私の知らない、同年代の女の子が微笑み立っていた。

マスター(以降、マ)「えぇ……。あぁ……」


グリモア(以降、グ)「どうしたんですか、マスター?」


マ「いや、このマイクを使うのも二か月ぶりだからね。マイクチェックを」


グ「……マイク、使っている設定でしたっけ?」


マ「一応……ラジオ的なノリをしてたからね」


グ「しかし、どうします? まだ、今回の話以外は書けていませんが」


マ「筆者に言って! 私に言わないで!!」


グ「全くの正論でございます」


マ「それよりも、今回の少なさは何!?」


グ「筆者に言ってください。スランプだったそうですがね」


マ「あと、テストの荒波にのまれた、とか言ってたわね」


グ「いやはや。高校二年生は恐ろしや、ですよ」


マ「人間じゃないあなたが言ってもねぇ……」


グ「さて、マスター。長居は無用です。次回コールをしましょう」


マ「え、まだ話したいんだけど」


グ「夏休みのネタがなくなりますから。お願いします」


マ「まぁ、それならしょうがないわね。では――――」


『次回。その弓、光と相対す』


グ「では、次回であいましょう」


マ「それまで、さよなら」

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