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Right M  作者: 紅葉紅葉
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第二話:Next's ray and frets wins.

 どうも、名もなき魔女からこの場を託された、グリモアです。以後、お見知りおきを。

 さて、ついに始まりました、魔法少女たちの戦い。我がマスターも中々に楽しく、そして悲しそうに見ていましたよ。

 その中で一番注目していたのは、文月 光という少女でした。彼女は、マスター曰く、彼女なら面白い方向に戦いを持っていくかもしれない、と評価されていました。

 それが吉と出るか、凶と出るか……。


 では、魔法少女、少年達の戦い、第二話、始まります。

(ひかる)。そういえば今日の朝、あなたの部屋を開けたときだけど、あなた、すごい所で寝てたわよ。窓の方に足を向けて、伸びたように床で仰向けに寝てた」

 母からそんな話を聞いた瞬間、私は口に含んでいるコーヒーを吹き出しそうになった。何とかギリギリで抑えたけど、うん、状況を想像するだけで笑いがこみ上げてくるかも。

 何とか、別のことを考えて気を紛らわせ朝食を終えた私は、自分の部屋に急いだ。今日は金曜日。尋常ではない眠気に襲われつつも、学校へ行く準備をする。

 すると、ライが欠伸しているような声を出しながら、頭の中に声が響く。

『おはよー』

「おは、ようっ」

 学校の制服であるスカートを穿きながら、返答する。

ご主人様(マスター)は学校ってやつか』

「そうだよ。だけど、ご主人様(マスター)って何?」

 昨日の夜のことを思い出し、学校の用意をしながら尋ねると、

『オレは今、ご主人様(マスター)の使い魔の扱いなんだよ。今んとこ、出来るのはサポートぐらいだがな』

 と、淡々と説明してくれた。耳障りにならないぐらいの音量だったので、スムーズに準備が進んだ。

「じゃ、ライ。あのテープは?」

『オレの元ご主人様(マスター)の肉声が撮ってあるやつだな。あれは指令みたいなもんだと思っとけ』

「私はいつの間に魔女の手下になったんだ」

 あの自称魔女の思惑通りにいってるのが、また悲しいのだけどね。

 私は次に、あのネームプレート――――もとい、ナクルスについて説明を求めた。

『あれは、魔力の塊、と言った方が正しいな。変身(コンバージョン)するときに必要なやつで、あれがないと魔術を展開(クラフト)できないし、使用も難しい。まぁ、ある意味心臓に等しいもんだな』

 ライは先ほどのテープ以上に具体的に説明をしてくれた。それほど重要な物なんだろう。大事に扱わないといけないなー。まぁ、また使うかは解らないけど。

 と、思いつつも学校へ行く準備ができた私は、最後にその大事なナクルスを首から掛ける。

「さってと、もうそろそろ行かないとね」

『待て』

 私が準備を完了して、いざ週末の学校へ、と意気込んでカバンを持った瞬間、ライが鋭い一言を放った。

『どうやら、また変化はあるようだぞ』

 ライは、テープ、と短く言った。

 私は昨日、テープを聴かなかったことを思い出した。

 昨日のことで、このテープにもまた変化があったのかもしれない。私は、テープがセットされているラジカセを再生した。





 おはよー☆ ついに動き出してくれたわね。最高にいいペースよ。

 で、本題なんだけどー。あなた達には、幾つかのルールを設けさせてもらうから、じっくり聞きなさい。

 一、戦闘のさいには魔力で倒すこと。たまにいるのよねー。魔力を使わなくても、倒しちゃうやつ。

 二、人を殺してはならない。まぁ、魔法少女、少年状態なら死にはしないけどね。記憶が消えたり、精神に異常をきたすかもしれないけどね。

 そして、三。これが一番重要よ。よく聞きなさい。


 私が力を与えた魔法少女、少年達を倒して、最後の一人になるまで戦いなさい。

 なら、あなた達の望みを叶えてあげる。





 学校が終わり、休日だぁーと、皆がして思う放課後。私は、一人で屋上に来ていた。

 考えることは、今朝のあのテープのことだ。

「ライ。あれって、どういう意味?」

 私がそう尋ねると、ライは、気の抜けるような欠伸をしながら言葉を発した。余談だが、ライは授業中は静かにしていた。

『他の魔法少女、少年がいるから、戦え、だろ。要は、バトルロワイヤルだ』

 と、私の出した結論と同じところにたどり着くわけだ。

 私はとりあえず、他にも同じ境遇の人間がいることに安心した。やはり、自分一人だけ変わるのは怖いものだ。今は顔も知らぬ人たちだけど、一度は会ってみたい。

 が、戦えと言われたら話が変わってしまう。会うどころか、会った瞬間、倒されるのがオチだ。

『まぁ、話し合うことぐらい出来るだろう。とりあえず今は――――ん?』

 ライが言葉を止めた。なぜなら、錆び付いたような、何かを引きずったような音が聞こえたからだ。私も、音の鳴った方向へ向く。

 そこには、私の幼馴染、杉内(すぎうち) (まさる)が優しく微笑んでいた。

「ここにいたのか」

「屋上にいるかも、とは言ったけどね」

 そうだっけ? と、一瞬真面目に悩んだ後、どうでもいいと思考したのか、先ほどと同じ表情をして私の隣に来る。どうやら上機嫌なようだ。

「しかし、いい青空だね」

「ホント、勝は空が好きね」

 勝は幼い頃から空が好きだった。恐らく、勝のお父さんの影響だろう。勝のお父さんは飛行機の機長をしていた。過去形なのは、勝の手前だから考えたくない。でも、言うなら事故のせいで、お父さんは左足と左手をなくした。

 ……これ以上考えるのは止めとこう。シリアスはそんなに好きじゃない。

「そういえばさっきから上機嫌だけど、どうかしたの?」

「少しね」

 私の問いに勝はそう流した。隠すようなことなんだろうか。いや、まぁ、私もつい先日、隠し事が増えたわけだから、人のことは言えないけどね。

「じゃ、僕は帰るよ。やることがあるし」

「あ、うん。じゃねー」

 勝が笑顔のままそう言って、屋上を去った。完全に一人になったのを見計らってか、ライの声が聞こえてきた。

『あいつ。結局何がしたかったんだ?』

「さ、さぁ?」

 私もよく解らなかった。推測しようにも、情報が少ない。上機嫌だったことぐらいしかなかった。

『何かを伝えるわけでもなく帰っちまった。怪しくねぇか?』

「そう、かな?」

 言い切りたかった。しかし、言い切れないのは、やはり今日のあのテープが頭をよぎるからである。

 もし、勝も魔法少年だったとすると、私はいずれ、彼と、

「争いあわないといけない……」

 そんな最悪な考えをこれ以上続けないように、私は屋上を後にした。





 魔法少女になっての欠点だが、それは単純かつ最悪な物だった。

『おら、夜だ。変身(コンバージョン)しろ』

「寝させてよー……」

 この14年間という短い人生の間、私は一度も徹夜という行為をしたことはない。誰だって、正月ぐらいは徹夜をする物だという印象はあるが、私は睡魔という欲望に忠実なようで、除夜の鐘が鳴り響く前に寝てしまう。そして、初詣はいつも朝10時……。この方、0時に初詣の経験がないのだ。

 と、長く説明したが、要は寝たいのである。

 しかし、ライは許してくれずに、がみがみがみがみ催促してくる。

「解った。けど、なんで戦いをしないといけないの。私は寝たいよ……」

『昨日倒したやつ、魔獣って言うんだけどな。あいつらは、最初こそは魔術干渉で現実には干渉しないが、度が過ぎると現実に干渉し始めるんだ。これまで、現実で究明できなかった事件などは、こいつらの仕業でもある』

「要は、倒さないと、みんなに被害がいくよ、ってことね」

 あのクマみたいなやつが、まだいっぱいいるってことは……これからは徹夜続きなんだろうか。い、嫌だなー。これでも乙女なのだ。深夜徘徊はしたくないんだけど。

 でも、ヒーローみたいでいいな、とも思う。かっこいいのは、勝の影響で好きなんだよなー。勝の悪影響とも言うけれど。

「解ったよ……。行くよ」

 そして、なんやかんやで折れる私だった。

 私は部屋の中で、

変身(コンバージョン)!』

 と、下の階に聞こえないほどの声で言った。

 首から掛けているナクルスが白く光りだし、私を包む。一瞬目を瞑り、目を開けた瞬間、私の服装は白を基調とした民族衣装のような服に変わる。

 変化が終了したのを確認すると、私は窓から飛び出し、近くの家の屋根に着地した。

 そこでふと気がつく。

「そういえば、あのときみたいに力が溢れるような感じがしないけど」

 昨日、変身(コンバージョン)したときは、身体の内から溢れるような力を感じた。けど、今日は感じない。

「あれは漏れだ。初めて変身(コンバージョン)したときに、ご主人様(マスター)自身の魔力とナクルスの魔力が交じり合って、無駄に魔力が出てたんだ。次回からは、解放(トランシス)しねぇと、使えねぇー」

 ライがそう言うと同時に、私は右肩に違和感を感じた。何か、とても軽いものが乗っているような。というよりも、さっきの声が外部から聞こえたような……。

 私は恐る恐る、自分の右肩に目をやった。そこには、

「で、魔力が安定したら、こういう芸当も出来る」

 妖精のような、何というか小さい人がいた。えぇーっと、あのー、私の表現が乏しくて誠に残念だけど、そんな感じである。

 髪型はショートボブ。色はオレンジ。肌は褐色で、赤色のTシャツとズボンを穿いている。そして、その背中には、可愛らしい羽があった。

 で、真に驚くべきところは、

「お、女の子だったの!?」

「ん? あぁ、女だったが?」

 ということだ。その証拠に、小ぶりながら胸がある。私の手ぐらいしかないから小さく見えるが、もし私ぐらいの背丈になったとしたら……負ける。……欝になりそう。

「ま、等身大にはなんねーけどな」

「うん。ならなくていいよ」

 私の率直な意見に、ライは頭の上に?マークを浮かべたが、深くは捉えなかったようで、私にこの状態について説明してくれた。

「俺は基本、魔力の流れを調整する役割があるんだが、ご主人様(マスター)を守る役割もある。だから、この状態の方がメリットが多いし、何より状況を把握しやすいのさ」

「長々と説明してくれてありがとう」

 要は、やることは変わらない、ということだ。

 私は、ライの胸について脳内議論をしながら、暗闇を翔けた。





 胸に関する結論を出してから数分後、私達は昨日のクマと同じ気配を感じた。余談だが、先ほどの脳内会議についての結論は、自分には未来がある、と強引に納得させた。

魔狩り(キル)の時間だな。準備しろ」

「了ー解」

 ライのその一言で、私は手首から指先にかけて、白い魔法陣を展開する。

展開(クラフト)基本(マイ)装備(ウェポン)、『明日の光(ネクスト・レイ)』」

 展開が終わった後のその手には、白い拳銃が握られていた。言うまでもなく、私の基本武器、明日の光(ネクスト・レイ)だ。

 私はその銃を構え、屋根から屋根へと飛び回り前進する。

「魔獣の野郎。場所を転々と移動してやがる」

「確かに……。気配が分散してて追い辛い……。現在位置は?」

「斜め右」

 ライに従い、方向転換しながら前へ進んでいく。しかし、出会うにも出会えない。どんどんどんどん移動していく。

 しかし、数分後、気配の動きが止まった。

「止まった!」

「いや。待て」

 私は喜びを上げたが、ライは慎重なのか私を止めた。その表情には緊張と興奮が交じり合っていた。

「おいおい。早速遭遇だぞ」

「何?」

「魔法少女……いや、あれは少年か。とりあえず、魔力を持ったやつが魔獣と戦ってやがる」

 ライが不気味に笑いながらそう答えた。もしかしたら、この子、戦闘好き(バトルマニア)なのかもしれない。

「急ぐぞ。魔獣の相手が気になる」

「はいはい」

 ライが生き生きしながらそう言ったので、私はとりあえず従うことにした。

 もし、その例の魔法少年かもしれない存在と戦うことになってしまったら、私はどうすべきだろうか。戦うべきか。しかし、戦いたくない。敵はあくまで人間だ。

 そう頭の中で思考しながら、私はライが指し示した道を急いだ。





「気づかれた。どうする?」

「やるよ。どんなときでも、やるだけね」

 僕は、隣にいる赤色の修道女みたいな服を着た小さな相棒にそう言って、赤い魔方陣を展開する。

展開(クラフト)基本(マイ)装備(ウェポン)焦がせし我が剣(アン・グリルド)

 展開した先から生まれるのは、炎のような赤を基調とした剣。僕の基本武器、焦がせし我が剣(アン・グリルド)だ。形状は僕の背丈の半分ちょいしかないが、それでも立派な剣である。

「赤の魔術師、焦がれる勝利(ボルケイン・ウィン)! ここに参上!!」

「……うん」

 僕の恥ずかしながらもしたポーズと口上に、相棒であるマズルが微妙な顔で返す。うーん、カッコイイのかカッコ悪いのか……解らないけど、とりあえず、頷いておく。

 僕の目の前には人型の魔獣がいる。その両手には鎌がくっついているところから見ると、恐らくカマキリと人の合成型(キメラ)なんだろう。

「悪いね。今少し急いでいるんだ。だから――――斬らせてもらう!!」

 そう僕はつぶやいた瞬間、僕は右手に握った焦がれし我が剣(アン・グリルド)で素早く敵に近づき、横向きになぎ払いをする。

 しかし、その一撃は魔獣の鎌によって受け止められた。だが、それは想定済みだ。

展開(クラフト)灯された剣(フレイル)

 僕は左手で展開させた魔方陣から、淡い赤色の短剣を取りだす。そして、素早くその短剣で斬り付けようとしたが、それもまたもう片方の鎌で受け止められた。

 しかし、それもまた想定済みである。

連続展開(ラッシュクラフト)っ! 獄落ちの牢剣(ヘル・クライス)!!」

 僕が敵を受け止めているその周りから、魔方陣を大量に展開させる。そしてそこから生まれるのは、持ち手のない剣達。その光景は、刃に囲まれた牢みたいである。

「はぁっ!!」

 展開を完了したことを確認すると、僕は鎌を受け流し勢いよく宙を舞う。魔獣もそれを追おうとするが、周りにある剣のせいで、下手に動けない。

 僕は赤い魔方陣を展開させ、そこに乗る。そして、

「必殺っ! 獄炎の中の刺殺刑レジアゼル・バリュートネスっ!!」

 僕がそう叫んだ瞬間、囲んでいた剣が一斉に魔獣に対して飛んでいく。逃げるにも、刃に囲まれた魔獣は動くことが出来ない。成す術も無く、魔獣は大量の剣に刺されて、消えた。

 あっけない勝利だった。

「思ったよりも弱かったね」

「そうですね……――――右っ!?」

「っ!?」

 マズルと会話中、謎の光が僕たちに向かって飛んできた。これは恐らく魔力の光だ。力を手に入れて間もなくても解る。

 僕は、右手に持っていた焦がれし我が剣(アン・グリルド)で光を斬った。光は見事に消えてくれた。

 僕はその光の先にいる存在を視認する。そこにいたのは、白い民族衣装のような服を纏った、美しい黒髪を持った少女だった。

 そうそれは、僕の幼馴染である、文月(ふみづき) (ひかる)だった。





「うそ……」

 しかし、嘘ではない。そこにいたのは、赤を基調とした服とマントを羽織った勝だった。その手には赤い剣が握られている。

 嘘が誠になるということわざが存在するが、私はそのことわざを恨めしく思う。所詮、嘘であったはずなのに、なぜ、誠になってしまうのだろうか。

「どうする? 一発、軽く撃ったが、ダメージはなし」

「……話し合う」

 とりあえず、一番手っ取り早いのはその手だった。話し合って、何とかこの状況を切り抜けたい。

 私は明日の光(ネクスト・レイ)を下ろし、ゆっくりと彼に近づいていった。

 嬉しいことに、彼も私に危害を加えずにいてくれた。

文月(フミ)か……」

「勝よね……」

 彼は信じられない、という表情をしていた。私も恐らくそうだろう。それほど衝撃的だった。

 彼は、私ということを確認するとその手に持っていた剣を消した。私もそれに倣って、明日の光(ネクスト・レイ)を消す。

「……ハハッ」

「ん?」

 彼がふと弾んだ笑い声を出した。私もそれに釣られて笑ってしまう。そこには、敵ではなく、幼なじみとしての笑顔があった。

文月(フミ)もなれるのかー。場合によれば、自慢しようと思ってたのに」

「だから、あんなに上機嫌だったんだ。納得納得」

 私がうんうん、と頷くと彼はまた笑った。笑顔以外は何もなかった。

 しかし、

「右っ!!」

「えっ!?」

 たった一瞬の出来事。ライが大声を上げた瞬間、黒い何かが私に向かって飛んできた。それは鎌みたいに曲がっていて、身体を切り裂くには充分だった。

(クラ)――――」

 展開(クラフト)しようとしても、圧倒的に時間が足りない。一瞬の躊躇が、魔法陣の展開を遅くする。

 私は死を覚悟して目を閉じた。それは逃避とも言える。しかし、私にはそれしかできない。

「おいっ――――」

「――――展開(クラフト)っ!」

 ライが私のことを呼ぼうとした瞬間、一人の声がそれを遮った。それはまぎれもない勝の声だった。

 私は恐る恐る目を開ける。そこには、

基本(マイ)装備(ウェポン)焦がれし我が剣(アン・グリルド)

 焦がれし我が剣(アン・グリルド)と呼ばれた赤い剣で、鎌の一撃を受け止めている勝がいた。

「完全に消滅してなかった、かっ!」

 勝は剣で切り払い、鎌をぶっ飛ばした。勝は相手と間合いを取る。

「二回目だけど……焦がれし勝利(ボルケイン・ウィン)、再び参上!!」

「何それ?」

 勝の謎の宣言に、私は呆れ半分で聞く。すると勝は胸を張りながら、

「魔法少年の肩書きだよ。本名出すわけにはいかないしさ。文月(フミ)もやってみたら?」

 早口でそう言った。興奮している証拠だ。昔からカッコイイものの真似をするのが好きだったしね。納得納得。

「私は……えっと……」

 しかし、私もそれを言わないといけないのだろうか? いや、確かに重要かもしれないしなー。

 考えとこう。

展開(クラフト)基本(マイ)装備(ウェポン)明日の光(ネクスト・レイ)

 遅れをとった私は、急いで明日の光(ネクスト・レイ)を展開し、援護射撃する。銃弾は見事に勝を避け、鎌を持つ敵に当たる。しかし、

「後ろだっ!」

 ライの言葉に私は一瞬後退した。そこには、鎌を持った敵がいた。

「三つ子だったのか」

 勝は一旦切り払い、間合いを取りながらそうつぶやいた。

 笑えない冗談だった。

「一人一体。任せられる?」

「大丈夫さ。こっちにはまだ、奥の手がある」

 そう言い終えるかしないうちに、鎌を持った敵は再びこちらに接近してきた。

 だが、今度は違う。

「一度あることは二度ある、二度あることは三度ある。だから!!」

 私は小さい魔方陣を銃口に展開させ、そこから私のイメージした強化パーツが現れる。

 学校から帰宅中にライから聞いたが、ライ曰く、私は何かを創ることを得意とするタイプらしい。これは、勝の悪影響で漫画を昔描いていたことから来ていると思う。

 そこで私は、銃を強化できるようなパーツを創ることにしたのだ。

結合(コネクト)っ!!」

 それを素早く明日の光(ネクスト・レイ)の銃口に装着する。その具現化したパーツは、銃を放つことが出来る形態ではなく、そこから白いレーザー式の刃が現れる。

明日の光(ネクスト・レイ)(ソード)スタイルっ!」

 そして、その刃で敵の鎌を受け、切り払う。

 ライが驚いた表情で、

「お前。何気に凄いな」

 と、言ってきたので、笑って返した。まぁ、確かに瞬間的に考えたから、自慢できることかもしれないけど、そうは言ってられない。

 そう思考が終了した瞬間、再び素早く敵が前方から突撃してくる。

 しかし、再び私は明日の光(ネクスト・レイ)で受け止める。受け止めながら、冷静に次の手を考えた。

 この行動を続けても戦いが長引くだけだ。魔力はどんどん消費され、こちらが力尽きる。なら、どうする? 何か手は……

「お前が出せるのは、剣だけか?」

 ライがそう言ってきた。

 私は、ここ数年、人をまともに殴ったことすらない平和な頭で状況打破の方法を模索する。そして、絞って、絞って見つけ出した答えは――――

展開(クラフト)、そして結合(コネクト)拘束(リストライント)(・アップ)

 今度は銃口ではなくハンマーの部分に、パーツを取りつける。すると、受け止めていた刃がゴムのように柔らかくなり、私と敵の体勢が崩れた。だが、私は前へ一歩踏み出し、その歪んでいる刃で敵を切り裂く。そして、その刃状の魔力を飛ばし、敵を拘束するかのように敵の胴体に纏わりついた。

「必殺技、いける?」

「いける。サポートなら任せろ」

 その言葉を聞き、私は明日の光(ネクスト・レイ)からパーツを取り外し、基本形態にする。銃口を敵に向けつつ、

解放(トランシス)!!」

 と、大声で言った。すると、昨日のように魔力が溢れるような感覚になった。これで、昨日のようにあの技が使える。

「一点集中!」

「狙いは?」

「敵の……心臓!!」

「標準安定、調整完了ロックオンパーフェクト。いけるぞ」

 ライのその言葉を聞いて、私は銃口から大量の白い魔方陣が直線状に展開する。

 私はそれを確認すると、ナクルスを銃のハンマー部分に取り付けた。

「集えっ! 繋げっ! そして、紡げっ!!」

 魔力が銃口に集中していく。身体から溢れていた魔力がその中に吸われていく。

 そして、私は――――

太陽線上の閃光サンライト・パニッシャーっ!!」

 あの魔女から与えられた、この技名を叫びながら引き金を引いた。

 放たれた魔力の銃弾は、直線状の魔方陣を通っていき、少しずつ早く、大きく変化していった。そして、最後の魔方陣を通り抜けた瞬間、銃弾の閃光が消えた。

 いや、消えたのではなく肉眼では確認できないほどの速度に変わったのだ。結果、敵は一瞬にして消滅した。

「よし、終わり」

 私はすぐに、一人で戦っている勝が心配になってその方向に目をやったが、

「こちらも終わったよ」

 と、爽やかな笑顔で私を見た。彼の後ろには、燃え盛っている炎しか見えない。

 彼は手に持っていた剣を消して、私に近づいてきた。私もそれに応じて、近づいた。

「話は山ほど聞きたいけど、まぁ、今日は帰ろうか?」

「そうだね」

 彼の言葉に賛成した。眠くもなってきたし。恐らく、もう夜の0時ぐらいだろう。

 私たちはその後、互いに疲れていたのか、無言のまま各々の家へ帰るのだった。





「赤と白……」

 まるで紅白歌合戦ね、と馬鹿らしい思考をする。日本育ちなんだから、しょうがないが。

「能力の高さは、あの白い方が強そうやけど、頭の良さは赤い方が強そうやな。あんたはどう思う、キューリ?」

「そうですね……。あの白い少女の方が可愛いかと……」

「そりゃそうや! 男のあんたが男を好きになんかなったら、絶交や!!」

 ふぅ……。この馬鹿な相棒には疲れる。

ご主人様(マスター)。帰りましょう。明日は明日で早いですし――――」

「解っとる。学校で出会えるからやろ。それぐらいは理解しとる」

 私は、その手に持っている杖――――もとい、二面の後悔(リグレット・ディドル)を消して、最後に一言、

「ウチはヘマはせーへん」

 と、相棒のキューリに言った。

名もなき魔女(以降、マ)「名もなき魔女と――――」


グリモア(以降、グ)「グリモアの――――」


マ、グ「「マジカル・ウェーブ☆!!」」


マ「どう? このタイトルコール」


グ「言っている私が恥ずかしいです」


マ「照れなくても~☆」


グ「照れてません」


マ「ううぅ、流石我が相方、中々に冷たい……」


グ「あなたがオカシイだけです」


マ「ボケよ」


グ「ツッコミはしませんよ」


マ「成り立たなくなるっ!?」


グ「元より成り立ってませんよ。さて、今回のゲストは誰ですか?」


マ「何気にノリ気じゃん……。今回は、文月ちゃんと最初に干渉した魔法少年、杉内 勝君よ」


シュボンッ!!


勝(以降、勝)「ふむ……。文月の言ったとおりだ」


マ「あっ、思った以上に冷静。知的なキャラは違うなー」


グ「というよりも、予測されてただけですけどね」


勝「あなたが名もなき魔女さんですか?」


マ「そう。この戦いを始めた元凶よ。何か?」


勝「……いえ、思った以上に若いんだなーって」


マ「そう? ありがとうと言っておくわ」


グ「本来のコーナーに戻りましょう」


マ「解ってるわ。勝君のプロフィールは、朝鐘中学校の二年生。文月ちゃんと幼馴染で同級生。男性で、茶髪のショート。少し伸ばし気味だけどね。瞳の色は焦げたような赤。背丈は……平均ね」


勝「ある程度は運動しているのでね。短くもなく、長くもなくですよ」


マ「ナクルスカラーは赤色。魔力の属性は炎。基本装備は魔力で再現化する剣、焦がれし我が剣(アン・グリルド)。しかも、まだ何か力がある感じね」


勝「想像力は昔から自信がありましてね、今後も強化されていく予定です」


マ「必殺技は……、獄炎の中の刺殺刑レジアゼル・バリュートネス。まぁ、これはまだ本当の必殺技じゃないんだろうけどね」


勝「能ある鷹は爪を隠す。切り札は最後までとっておくものですよ」


マ「あなた、知的でいいわよねー。でも、そんな君にも裏はある」


勝「…………」


マ「まぁ、それは追々解っていくでしょう。とりあえず、今日はお疲れ様。今後も頑張ってね」


勝「聞きたいことがあるんですが?」


マ「何?」


勝「なぜ、こんなくだらない戦いをするんですか?」


マ「……知らなくてよし」


シュボンッ!!


グ「久々に見ましたよ、あなたの真顔」


マ「そう? まぁ、基本は笑顔を心掛けているからなー」


グ「まぁ、真面目なあなたと笑顔のあなたもどっちも好きなので、いいのですが」


マ「好き嫌いが基準なのね。では、次回の話のタイトルコール、いくよ」


グ「準備はOKです」


『次回 第三話:懺悔と後悔と明日の光』


マ「次回もみてくださいね☆」


グ「よろしくお願いします」

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