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Right M  作者: 紅葉紅葉
3/6

第一話:Change produces next's ray.

 ……はぁ?

 というのが私のそのテープから突如流れた音の最初の感想だった。

 私は確かに変化を望んだ。そして、その変化は訪れた。のだが、それは私が考えていたほどの物ではなく、むしろそれ以上に無情なものだった。

 だって、強制だよ。私は、魔法少女になんかなりたくない。私はそんな変化なんて望んでいない。というよりも、魔法少女って何がどうなってるの? 漫画? アニメ? 小説?

 でも私はただ、何か違うことが起こって欲しいと思っただけだ。こんな変哲な変化はいらない。

 しかし、この状況を打破するにはこれに従わないといけない。中学生の頭でもよく解る。少なくとも、このカセットテープは、あるはずもない続きが流れたのだから。

 魔法少女かぁ……。これを信じるとしても、信じることに苦戦しそうである。実在してるか判らないし、普通ではありえないし。

 まぁ、要は信じられないだけだ。

 でも、あのテープの現象が説明できないんだ。信じよう。

 となると、私は変身(コンバージョン)と言わないといけないわけなんだけど……。使う機会がない気がする。

 ……また変化待ち!?





 その日の夜。いや、詳しい時間は判らなかったんだけど、真夜中というのは断言できる時間帯に、大きな変化があった。

 最初は、地震があったのかと思うぐらいの地響きが起こった。で、暗闇の中、目が覚めたわけだけど……。

「みんな、起きてないのかな?」

 この家の中での反応がなかったので、少し不安になって窓から外を見てみると――――

「えっ……」

 そこには、巨大なクマがいた。

 全身毛むくじゃらで、黒い。真夜中だからかもしれないが、影のように黒かった。しかし、クマの目にあたる部分は異様に黄色く光っていて、はっきりとまではいかないが輪郭は見えた。

 ……これは本格的に変な感じになってきた。

「無視の方向で、いいかな?」

 ふと、そんな言葉が口から出てくる。変化を望んでいたのは私自身なのに、いざとなると何も出来ないのが私の悪いところだ。

 それを、変えたい。変えるなら、どうする。

「ダメダメ。あれは幻。そう、幻」

 しかし、行動できない。逃避してしまう。

 そんなダメダメな私は、そのままベッドに行こうとしたのだが、

『進まないのか?』

 という、少年声がどこからか聞こえて、立ち止まってしまった。私は素早く辺りを見渡すが、誰もいない。

 幻聴? ということにし、再びベッドへ行こうとしたら、

『そうやって変わらないのか?』

 再び声が聞こえた。しかも、今度は少し怒っている感じだった。

「……あなた、何者?」

 私は試しに、そう聞いてみた。何事も実践だ。

『名前は白き光(ライ)。何者かは、力を得てから教えてやる』

 そう答えた。その言葉には、明らかに怒りの感情が篭ってた。

「力って……」

『魔法だ。お前は選ばれたんだよ、魔女に』

 魔法……そして、魔女。どちらも、送られてきたあのテープに関係している単語だった。

 となると、この声は何なのだろうか?

「選ばれた、って。私は何も――――」

『強引だよ。あの魔女は、強引にお前に魔力を与えた。だから、あんな怪物が見える』

 遮るように言ってきた声の内容は、あのテープと同じ理解ができる。拒否権はない。それは、このことだったんだ。

『選択はお前がしろ。俺は知らねーし、決めるのはお前だ。ただ、このままいくと、死ぬのがオチだ』

 声の言葉は大きかった。確かに、あの巨大なクマなら、私達を踏み潰すことなどたやすいことだろう。

『選択は一つ。戦え。戦って、死という最悪な運命を変えろ』

「死という……最悪な運命……」

 例えば、この声を信じて魔法少女なる者になれたとしよう。戦えるだろうか? 今、目の前に見える光景からすらも逃げようとしていた私に、立ち向かうことができるのだろうか?

『怖いか? 怖いならいい。それが人間として普通の反応だ。でも、人は乗り越えないといけないこともある』

 乗り越えないといけないこと。それは今、感じている恐怖?

『変えてみろよ。自分を変えてみろ!』

 声が叫ぶ。

 私も叫ぶ。自分を変えたい。恐怖から逃げたくない。ならどうする? 簡単だ。それは――――

変身(コンバージョン)!!」

 行動することだ!!





 真っ暗だった部屋が明かりに包まれる。そしてその中心には、私がいた。

 服が、寝巻から民族衣装みたいな白色のヒラヒラな服に変わる。体の中から力が湧き出るような感じがする。そして、光り続けているあの白いネームプレートが、首から垂れていた。

「これが、魔法少女……」

 私は部屋にあった鏡を見て、そうつぶやく。そして、目線を外にいるクマに向ける。

「行くっ!」

 私はそう決意した瞬間、窓がガタッと音を出しながら開き、空を舞った。そして、近くの家の屋根に着地する。

「こんなこともできるんだ」

 出てきた窓から家の屋根までの距離は、およそ10メートル。明らかに普通ではない跳躍力である。

 しかし、私はそれよりも焦ることがあった。

「武器がない!?」

 肝心の武器がない。いや、確かに魔法少女なら魔法が武器だと言えるけど、杖ぐらいあってもいいはずだ。

 すると、私の頭の中に先程のライと名乗った少年の声が聞こえてきた。

展開(クラフト)と言え。なら、お前の武器が出てくる』

「わ、解った!」

 私はその声に従って、

展開(クラフト)!!」

 と、大声で言った。すると、私の手が突然現れた白色の魔法陣に包まれた。そして、その魔法陣が消えた瞬間に、私が握ってたのは、

「じゅ、銃……」

 白を基調とした銃だった。しかも、私が知っているような拳銃ではなくて、いろんな物が付いている、ファンタジーな銃だった。

『言うなら、明日の光(ネクスト・レイ)か。どうだ、感想は?』

「私の予想していた物と違う……」

 杖をイメージしてたから、何か複雑な気分だ。でも、悪くはないかも。

 そう思って自信がつき、私はクマの近くまで一気に迫った。近づいてみると、やはり大きい。

「あのクマの倒し方は?」

『その銃でやるしかない。使い方は、解るか?』

「エアーガンの使い方と一緒なら……」

 前に、幼馴染の勝からエアーガンの使い方を教えてもらったことがある。どう使えばいいか、それぐらいなら何とか解る。

『その銃は、魔力を放つ銃だ。試しに撃ってみろ』

 私は、試しにその銃でクマの顔面に目がけて撃ってみる。放たれた弾丸が、闇夜の中、白く光りながら光の線を描き、突き進んでいく。そして当たった瞬間、クマがこちらを一度見た。

 気づかれたと悟った私は、クマがのけ反っている間に、クマの死角になる場所である家の裏に隠れた。

「どうすればいいの」

『自分で考えろ』

 声に助けを呼んでも、返ってくるのはこの言葉だけだ。私はクマがこちらに気づいていないか、確認しながら銃を眺めていた。

 この銃の放つ銃弾は、魔法によって構成される光の弾丸。でも、決定的に火力不足だ。

『それに関しては、ちゃんと対処法がある』

「本当!?」

『少し疲れるがな』

 必殺技みたいなものなんだろうか。それなら、何とか倒せる……かも。

『来たぞ』

「クッ……」

 声に従ってその場を離れると、巨大なクマの手が降ってきた。

 あとでそこを見ると、建物が潰れることなく顕在していた。

『魔力的干渉だから潰れないんだよ。まぁ、ある程度魔力が高くなると現実的に干渉しちまうから、困りもんだがな』

「じゃあ、倒さないといけない、か」

 少なくとも、今の私にはその力がある。やるかやらないかは私次第。

 なら、答えは決まっている。

「ライ。必殺技、いくから教えて」

『お前はあれを必殺技と呼ぶんだな。まぁ、いいか。教えてやるよ』

 私は、ライから必殺技なるものの使い方を教えてもらう。敵を倒すために一番最適な攻撃方法、とライは言っていた。それは、とても強いけど、難しいらしい。使いこなせるかは解らない。でも、やるしかない。

 私は、必殺技を使うために必要な条件をライに聞く。

「浮ける?」

『オレが制御したらな』

「お願い」

『へいへい』

 了承を得た私は、ライを信じてクマの目の前を飛ぶように宙を舞う。

 そして、白色の巨大な魔方陣が展開され、そこに乗って宙に立った状態になる。

『狙いは?』

「クマさんの、目」

『一点集中。調整完了ロックオンパーフェクト

 ライが淡々と言葉を繋げる中、私は、銃口をクマの立っている方向へ向ける。すると、自動的に標準が調整された。これもライのおかげなんだろう。

 私は次にすべきことを頭の中でイメージし、そして発する。

展開(クラフト)!!」

 白色の魔方陣が銃口から、先にいるクマまで一直線に展開される。

『あとはネームプレート(それ)を銃にセットし、引き金(トリガー)を弾くだけだ。選択者はお前だ。やるか、やらないか』

「やるよ」

 変わりたいから。この力が何かは知らないし、利点も何も解っちゃいない。でも、これが変われるきっかけになるというなら、私は――――

直線展開(ストレートクラフト)完了(パーフェクト)。いくよ」

 魔方陣がクマに向かって直線状に展開される。それが完了したのを見計らって、私は首から垂れるようにつけていた、白色の無字のネームプレートを銃のハンマー部分に付ける。そして、思い切り強く引き金を引いた。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええっ!!」

 構えられた銃から、白い光の銃弾が放たれる。放たれた銃弾は展開された魔方陣の輪をくぐって行き、少しずつ大きく強く、そして速くなっていく。それはまるで、レーザー光線の如く。

「貫けぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええっ!!」

 放たれた銃弾が最後の魔方陣の輪をくぐり終えた瞬間、その銃弾は肉眼では追うことが出来ないほどの速さに変わり、消えた――――いや、クマの目を貫いた。

「やった……?」

『かもな』

 私の無意識のうちにつぶやいた言葉に、ライが落ち着いた口調で返した。

 その瞬間、クマの姿は一瞬泡立つように膨張し、そして崩れ落ちていった。跡に残るのは、寒気がするほど冷たい風と、月が反射している光だけだった。

 私はそっと、足場となっていた魔方陣を消し、近くにある屋根にすとん、と降りた。

『お疲れさん。どうだった、初めての魔狩り(キル)をした気分は?』

「まだ、よく解んないけど……」

 今更ながら、とんでもない事に関わってしまった気がするけど、何かが変われた気がした。

 私は銃からネームプレートを外し、手で強く握った。

「要は、この力が私を変えるきっかけになると思う」

『まぁ、そう捉えるなら任せるぜ。オレが言えるのは、今後ともよろしくだ。ご主人様(マスター)

「ま、ご主人様(マスター)!?」

 私が驚いたように声を出すと、ライが声だけでシーッ、と言って私を黙らせた。

『それに関しては今日の朝に教えてやんよ。とりあえず、家に帰ってゆっくり休みな』

 ライがそう言った瞬間、急に眠気が……

『おら、魔力の使いすぎだ。早く戻れ。凍え死ぬぞ』

 私は重くなっていく目蓋を擦りながら、家へ帰るのだ……ふぁ~。

『おら、欠伸すんな。急げ』

 その後、なんとか屋根から屋根へ渡って、開いていた窓から家へ入り、私は意識を失った。

名もなき魔女(以降、マ)「はーい、始まりました~。マジカル・ウェーブ☆ MCは全ての元凶こと、名のなき魔女と」


グリモア(以降、グ)「マスターの使い魔である、グリモアです。以後、よろしく」


マ「ついに始まったわねー」


グ「始まりましたね」


マ「私、全員の戦いを見たけど、やっぱり一番は文月ちゃんだったわ」


グ「本当に押しますね」


マ「ホープですもの。というわけで、呼んじゃいました!」


文月 光(以降、光)「あれ? 私、家に帰って寝たはずじゃ……」


マ「転送魔法、恐るべし!!」


グ「自分で言わないでください、名もなき魔女」


光「えっ、あれ?」


マ「では、文月ちゃんのプロフィール! 朝鐘中学の二年生。女性で、黒髪ロング。瞳の色は黒で、背丈は平均より少し大きい」


光「な、何。人のプロフィールを勝手に公開してるんですか!?」


マ「ナクルス……ネームプレートのことよ、は白色。魔力の属性は光。基本装備は魔力を撃ち出す銃、明日の光(ネクスト・レイ)。必殺技は……なんか希望ある?」


光「……スルーしましたね。いえ、ありませんよ」


マ「なら勝手に名づけるけど、太陽線上の閃光サンライト・パニッシャー


光「何、その昔のSFみたいなネーミング!?」


マ「いいじゃない、いいじゃない」


グ「光様。諦めてください。こういう方なんです」


光「てか、ここどこー!?」


マ「では、ゲストの文月ちゃんでしたー。またねー」


光「謎だらけで終わったー!?」


シュボンッ!!


マ「転送完了ー☆」


グ「うわ、我がマスターながら酷いですね……」


ライ(以降、ラ)「諦めろ。そういうマスターだ」


マ「あら、いたの?」


ラ「いたよ。あんたには色々驚いているが、とりあえず一言」


マ「ん?」


ラ「なぜ、オレの真の名を技の名前にした?」


マ「あぁ、あれね。気まぐれよ、気まぐれ」


ラ「何?」


マ「本当に気まぐれよ。だから、深く追求しないの」


ラ「……まぁ、そういうことにしといてやるよ」


マ「理解が早くて助かるわ。――――じゃ、バイバイ」


ラ「あぁ。さようなら、だ」


シュボン!!


グ「行きましたね」


マ「そうね……」


グ「マスターは寂しくないんですか?」


マ「何が?」


グ「一番最初の使い魔を手放して」


マ「……さぁって、今回のマジカル・ウェーブも終了の時間がやってきました。じゃ、グリモア。タイトルコールをするわよ」


グ「……解りました」


『次回 第二話:明日の光と焦がれし勝利』


マ「見てねー」


グ「見てください」

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