プロローグ2:And change starts.
あの謎のテープとネームプレートが送られてきて、三日が経った。未だに私の周りの環境に変化はない。
あのテープは何だったんだろうか? 少し変化を求めていた私は、テンションが低くなっていた。
まぁ、常識的に考えればあんな物、誰かの悪戯なんだろう。でも、あの依存性というか、何というか。それに近い物を感じたあれに、興味が湧いたのは事実だ。
でも、変化がない。そんな日々が続いていた。
「変わり映えがないって、罪よね……」
「変化がありすぎるのも困るけどね」
そんな私のつぶやきに答えてくれたのは、私の隣の席で座って本を読んでいる少年だった。名前は杉内 勝。みんなはカッ君と言っているけど、私は下の名前でまさる、って呼んでいる。
ついでに、私と彼の関係は幼馴染である。幼稚園からの付き合いで、とても長い。
「環境が変わりすぎると、人間は正常の判断が出来なくなるもんだよ。ねずみをプールに入れてみなよ。すぐに溺れて死んでしまう」
「あのー、私と同じ中学生とは思えないセリフなんですがー?」
難しい例えや言葉を使うのが彼の悪いところだ。いや、大人らしいんだけど……中学生に解るようにお願いしたい。
「しかし文月。それでも変化を求めるなら、行動すべきじゃないかな?」
「行動、かぁー」
ふと、首からかけている白い鍵を見る、と言っても、実際は服で隠れているので見えないから、ある場所を見ているだけなんだけど、やはりこれを調べるべきなのだろうか。
でも、調べると言ってもなー。私の頭ではチンプンカンプンである。
いっそ、頭がいい勝と一緒に考えようかと思ったが、止めておいた。得体の知れない物だ。変に関わらせたらいけないだろう。
私は、気分がノらなくなり、今日の夕飯について考え始めた。
カレーかな? あっ、でも、あの冷蔵庫の具材なら肉じゃがかもしれないな~。
行動、か。我ながら、難しいことを言ったものだ。と、僕は自分に対し嘲笑した。
行動は、言うのは簡単だけど実行するのは大変難しい。
僕は、あのテープが送られてきてから、あの赤い鍵をずっと調べてきたけど、特に何も変哲もないただの鍵だった。鉄製で場合によれば、そこらへんのデパートで買えそうなやつだ。まぁ、プロみたいな調査をしたわけではないけど、それでも普通の鍵だった。
あと、あのテープもそうだ。あれから一日一回ずつ、なぜか聞いてしまっているが、変化はない。カセットテープって、古い印象があるから何かあるって思ったのだが期待外れだった。
残念だ。あぁ、残念だ。文月風に言うなら、変化がほしい。僕は非常に変化を欲している!
……ただ、変わるのは怖いな。そうだから、何も変わらないのだろうけど。
と、我ながら馬鹿な考えをしてみたり……。
「はぁ……」
僕は、ため息をついて机から窓の先の青い空を見ていた。
……あのテープに変化はない。あの水色の鍵も同じだ。
この二つから、魔力の反応が検出された。となると、何か仕掛けがあってもおかしくない、はずなんだけど……。
一向に変化なしだ。
ただ、収穫があったとすれば、この町中に魔力の反応が増えたということだ。推測だが、私以外にもこれらが送られてきた人がいるはずだ。
推測が正しかったら、である。
昔、師匠に、あなたの勘は鋭いから困る、と言われたこともあるが、絶対に当たっている証拠はない。まぁ、当たってたらそれでよし。当たってなくても、変化があればそれでよしだ。
そういえば、この学校にも幾つか反応があった。今度、探してみよう。
そして、少年少女らが望んだことが、その夜。起こった。
変化が始まった。
はーい☆ みーなさーん。聞こえてまーすかー?
この会話が始まったということは、準備は整った感じ? いや、知ってるけどさー。
さて、本題に入るとー。あなた達には魔法少女、少年になってほしいの。一緒に送った鍵があるでしょう? それを握り締めて、変身と言いなさい。それなら、あなた達は魔法少女、少年になれるわ。
拒否をしても駄目。あなた達には拒否権はないの。
代わりに、一つだけメリットをあげるわ。それは、あなた達に常識を超えた力と、望みを一つ叶えてあげる。私の出来る範囲だけど、例を出すなら人一人ぐらいなら生き返させることができるわ。
だから、行動しなさい。行動して、望みを叶えなさい。
これの続きは、あなたが魔法少女、少年になったら教えてあげる。
では、よき変身を……