おばあちゃんの家
私、江口 美玖の16才の夏のある日のこと。
いつもどおりの晩ごはん。妹の祐実とお母さんと私で、食卓を囲んで、TVを見ながら、ご飯を食べる。そこいら辺の家庭と、ほとんど変わらない。変わったところが、あるとすれば、父親がいないと言う位だ。私が幼くて、祐実がお母さんのおなかにいた時、父は亡くなったらしい。だから、顔なんて覚えてない。どんな人かも知らない。
でも、父親が居なくても、ウチは、充分、普通の家庭として成立している。
むしろ、明るすぎるぐらいだ。
そして、今日の晩ご飯の時間も、いつもと変わらないように始まった。
「「「いただきます!」」」
3人同時に手を合わせて挨拶をし、ご飯を食べ始めた。
「今度のバレーの大会でレギュラーになれるか、どうか決まるんだ!」と祐実がいきなり言った。
「そう。よかったじゃん!で、お母さんからもお知らせがある!お母さんは、会社で凄い手柄を立てたため、アメリカの方に転勤することになりました!」
「「あ?!どーゆーこと!!??」」
ウチのお母さんは、いつでも、重大な事をいきなり、なんでも無い様に言う。
そして、毎回ビックリする。
でも、今回のビックリは、過去のビックリとは比べものにならない。
「まぁ、要するに、お母さんは、今月中に日本を出る。そして、アメリカのほうで住むことになる!あ。私の心配はしてくれなくても大丈夫よ!英語はバリバリ話せるし!新居は、会社に準備してもらうし。」
「そうじゃなくて!私と、祐実はどうなるの!?」
「大丈夫!近くにおばあちゃんの家があるし。転校はしなくて大丈夫よ!」
「おばあちゃんの家って、どこ?私もお姉ちゃんも知らないよ!」
そうでした。私たちは、おばあちゃんには、会ったことは、何度かあるのだが、家に行ったことは無い。
「あ!そっか!行ったこと無かったか!そーいや、そーだなー。旅行ばっか、してたからだろうな!」
ウチは、夏休みとか冬休み、春休みは、必ず旅行に行くので、里帰りというものをしたことが無かったのだ。
「で、いつ、引越しするの?」
「早いほうがいい。明日、日曜だし。引越しすれば?お母さんも、明日荷物まとめるし。」
「わかった。そうする。じゃあ、明日、おばあちゃんの家、教えてね!」
「ハイ、ハイ。じゃあ、明日の引越しに備えて二人とも寝る!」
「「はーい!」」
こうして、おばあちゃんの家に引越しすることになった。
この時、私たちは、おばあちゃんの家は、普通の田舎って感じのこじんまりした家だと思っていた。