第七話~続・迷宮へ~
俺は自然と目が覚めた
外を確認すると太陽が真上まで上っており丁度昼頃なのが確認できる
完全な寝坊だ、ルーシィがお寝坊さんというのも分かる気がする
俺はもともと朝に弱い人間だったのだろうか
俺は思わず苦笑いを浮かべた
「あ、お兄さん起きたんだね
ご飯できてるから食べてきなよ
本当はさっきまでミーシャと待っていたんだけど
魔人のお兄さんも起きてきちゃったし」
「待っててくれてたのか、悪い事したな
急いで食べるから安心してくれ」
ルーシィからしても洗う食器は一度に出された方が効率は良いだろう
「別に急かしたわけじゃないんだけどね
まだ一人グーグー寝てる人もいるわけだし」
苦笑いを浮かべてひらひらと手を振った
食堂へ入ると魔人の青年が一瞬こちらへ視線をむけた
だが直ぐに興味をなくしたのか食事を再開し始めた
ミーシャも俺に気づき手招きしている
恥ずかしさと申し訳なさが合わさったような複雑な表情をしていた
自分の分の食事をとりミーシャの向かいの席についた
「昨日はわざわざ部屋に運んでくれたんでしょ?
気が付いたら寝ちゃってて、重くなかった?
疲れて帰ってきてたのにごめんね」
「構わない
撫でさせてくれたしな
それに見た目通り軽かった」
あの手触りは癖になる
機会があればまた頼み込んでみよう
食事を終わらせ水を飲み一息つく
すると待っていましたとばかりにミーシャが話を切り出した
「ねぇ、レンは迷宮へ行ったことある?
私って一応迷宮をメインに稼いでる冒険者なんだよね。
よかったらこれから一緒に潜らない?」
「それは俺からも是非お願いしたい
昨日丁度10階層までの探索を終えたんだ
二人でいくならもっと効率良く進めるだろう」
「え?もう10階まで潜っちゃったんだ?
でもよかった、正直ちょっときつかったんだよね
だったらまずはお互いのカードを交換しよう?
ギルドカードで名刺代わりにもなるから便利だよね」
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名 前: ミーシャ
レベル: 12
職 業: 剣士レベル23
属 性: 風
ランク: F
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ミーシャは剣士の祝福をもらったのか
という事はこの風属性は先天的にもっていたんだろう
魔力低下のマイナス補正が深く戦闘に関わらなければいいが
俺もミーシャに習いステータスを表示する
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名 前: レン
レベル: 18
職 業: 水の魔法戦士レベル35
属 性: 水
ランク: F
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「あ、いいなぁ中級職の祝福もらってる
しかも私よりレベル高いし・・・
水属性があるってことは毒とかは怖くなくなるね
「浄化の聖水」は唱えられる?」
「初級から中級までの魔法なら全て大丈夫だ
上級の魔法も何個か唱える事に成功してる」
「すごい・・・
人間でそこまで魔力がある人って居ないわけではないけど
それでも珍しいよ
見たところ魔道具や補助装備はつけてないし、
でも頼りがいがあると思えばいいのかな」
「頼りになるかどうかわからなないが
二人で行くなら今までよりかなり楽になるな」
「そうだね、変わらずの迷宮って一番深いことで知られてるから
二人で一緒に最後まで行けたらいいね
大抵の人は途中で解放された迷宮に行っちゃうんだけど」
確か変わらずの迷宮で現在確認されている階層は128階層
100階を超えると各種族の準最強、最上位の魔物まで出てくるらしい
竜種をみたという噂もあった
「じゃぁ迷宮に向かう準備してくるから
レンも準備があるならした方がいいよ
ここの宿の入り口で待ち合わせね」
ミーシャは立ち上がりタッタと駆けて行ってしまった
昨日見つけた銀の篭手を身に着けて、袋を二つ腰に括りつけた
準備は既に終わっているしミーシャと合流したら迷宮に急ごう
太陽の位置を確認すると真上から少し傾いていた
「・・・もしかしてその格好で行く気なのかな?
殆ど丸腰で迷宮に挑む人とか初めてみたよ」
部屋から出てきたミーシャにエレーヌとまったく同じ反応をされてしまった
ミーシャは動きを阻害しない軽装な鉄の鎧を着こみ
背中には大きな西洋風の剣を担いでいた
「鎧も武器も今作成中だ
二人で行くのだから恐らく問題ないだろ」
魔法が使える前衛が二人
おそらくバランスは悪くない
ミーシャがどこまでできるか分からないが
獣人あることから期待は高い
「そういえばレンってまだ2日目の新人さんだったんだよね
話してると全然そんな気がしてこないから不思議
じゃぁ早く深い階層に行って稼ぎましょうか!」
~変わらずの迷宮11階層~
俺たちは10階を突破したことにより11階からの探索が可能となっていた
「レン、ここはゴブリンとゴーストが出てくるよ
12階層もここと同じ敵、
そこから先は分からないけど最下位種族以外が出てくると思う」
ミーシャは辺りを警戒しつつ、背中の大剣に手をかけた
悪魔系と不死系の魔物
悪魔系の魔物は総じて魔法に高い耐性をもっている
ゴブリン程度ならどの属性の魔法も効くと思うが
上位の種族は一つ二つの属性をなら完全に無効化してしまうだろう
基本単独行動を取っているが自分が危険に瀕した時に仲間を呼ぶ
一度仲間を呼ばれるとぞろぞろとゴブリンが集まってきて
一人なら確実に苦戦を強いられるだろう
特にこの声の響く迷宮では尚更だ
換金部位は頭に生えている角
高い魔法耐性の為か主に防具などに使用されているらしい
ゴーストはゴブリンとは逆に物理耐久を持っている
闇属性の瘴気を纏い、中心に核となる魔石を持っている
よく死霊系の魔物と一緒にされがちだか大きく違う点が存在する
死霊系の魔物は「物」に直接核となる魔石を持っている
不死系の魔物は核の周りに属性を帯びた魔力を集め半透明の体を形成する
こいつらの強さは完全に核となる魔石の力に左右される
それによってゴースト、ジョーカー、ジェノサイド、アビスと呼び名が変わる
直接魔法を放ち攻撃してくる事もあるが
大抵は半透明の体を死体や物に取り込ませ攻撃を行ってくる
ゴースト程度では一体に付き一体が限度だが
ジェノサイド、アビス級になると一度に何十体も操り一つの街が落ちたなんて話も珍しくない
換金部位は核となる魔石
主に魔法で討伐する事になるだろう
俺は篭手に水属性の魔力を纏わせる
もともと銀製だし水の魔力を纏わせたのだ
不死系の敵にもある程度効きはするだろう
少し進むとゴブリンが2体
俺は足に力を込めて一気に距離を詰めた
レベルが上がったためか随分と体の調子が良い
最初の一体はそのままの勢いでその首を刈り取る
その後もう片方のゴブリンが仲間を呼ぼうと口を開いたが
貫手の様に喉へ手を突き刺した
換金部位である角を剥いで袋に詰めていると
ミーシャが急いでこちらへ駆け寄ってきた
「レ、レン!今の!!今の何?
もしかして前にアサシンとか拳闘士の祝福を受けてたの?」
少し興奮気味に捲し立てられた
「足に力を入れて一気に走っただけだ
二匹居たし仲間を呼ばれたらちょっと厄介だしな
それと魔法戦士が俺の初めての祝福だ」
「素の能力であんな芸当できる人なんて獣人でも何人いる事か、
私でも風の補助魔法付きで後先考えずに動くっていう条件ならできるかもしれないけど」
「元々の能力が高いってのもあるかも知れないが
要は体の使い方、無駄な動きを省けば消費も少ない」
伊達に121回死んでじゃないって事だな
「・・・なんでレンがこんなに早く10階まで上がれたか分かった気がする
その身体能力に魔力もあるなら大抵なんとかなるよね」
ちょっとは先輩顔したかったんだけどなぁとぼやくミーシャだが
その顔は笑顔だった
その後どちらから提案することもなくゴーストは俺、
ゴブリンはミーシャという形で探索することになった
ミーシャは大剣を上からふりおろし
切るというよりは叩き潰すといった感じでゴブリンを葬っていく
意外な事に鈍重な武器を扱っているにも関わらずミーシャのフットワークは軽かった
流石は獣人といったところだろう
水属性を纏った篭手で人形を操っているゴーストの連結部分を切り離す
その後より強い魔力でゴーストを吹き飛ばす
その場に落ちた魔石をせっせと袋へ詰めた
ゴーストを気にせずにゴブリンを倒せるのがミーシャ的にすごい助かるとのこと
剣士になった事による魔力の低下でゴーストを一撃で倒せないらしいのだ
攻撃魔法の全般が使い物にならいため今は風の強化魔法で身体能力の底上げしてるのだとか
12階までは難なく進み13階へと歩みを進めた
13~16階層
「ここからは何が出てくるか分からないから気を引き締めていこう」
ミーシャは辺りを警戒し大剣を構えた
「そうだな
ところで他の冒険者達は居ないのか?
変わらずの迷宮で他の冒険者とすれ違った事が無いんだが」
「あれ?最初に説明受けてなかったのかな?
迷宮ってのは一つの場所から同時に入らない限りは同じところに飛ばされないんだよ
ダンジョンって本当は凄く広大で今私たちが居る13階も多分無数に存在してる筈なんだよね」
つまり一人の冒険者に一個のダンジョンが割り当てられてるって事か
財宝を横取りされる心配もないが数の暴力で攻略することもできないな
16階層
「あれはゴーストと、キラーエイプだな」
フィールドが森へと変貌しておりそこら中にはゴーストが操る物と思われる
人形が多く散らばっていた
完全に俺の事を信用しているのかミーシャは目の前に居たゴーストには見向きもせずに
キラーエイプへ大剣を向けた
こいつらは完全に群れを成して行動を取っている
一匹でも殺せばその群れ全体と戦う事となるだろう
こんな低階層でこの魔物を出すなんて初心者つぶしも良い所だ
ミーシャはそのことを分かってるのか分かっていないのか
早速一匹のキラーエイプを叩き潰した
その瞬間、木々の隙間から無数の赤黒い目が一斉こちらを向いた
ミーシャの「あれ?私なんかやらかしちゃった?」みたいな顔を横目に俺は深くため息をついた
少しリアルが落ちついたので投稿させてもらいます
まだまだ忙しいのが続きそうですが細々と続きを書いていく予定です
こんな話でも楽しみにしてくれてる人が居たなら嬉しい
いい加減第1話から第6話まで修正を入れたい