第四話~リィリアの街~
大きな街だ
街に入って一番最初に思ったのが街のでかさだった
広場には活気が溢れ、焼き串や装飾品を売る人
その装飾品を真剣な顔して睨んでいる少年
綺麗に清掃が行き届いており清潔な街だ
しばらく眺めていると横から声をかけられた
「ようこそリィリアの街へ
お兄さんは冒険者?・・・には見えないね
どこから来たの?ってか大丈夫?」
活発そうな少女である
おそらく何処かの店の売り子だろう
まぁ今の俺の格好じゃとても冒険者には見えないだろうな
丸腰、森での生活でボロボロになったズボン
上着は無事だったが心なしか色あせている
「昨日強盗に襲われてな
なんとかこの街にたどり今着いたって訳だ」
なんとも嘘がポンポンと出てくる口である
だがそれを真に受けた少女は心配そうな表情でこちらを見た
「・・・それは災難だったね
じゃぁここにはお金を稼ぎに?
ギルドだったらあの一番高い建物がそうだよ
ここには図書館、闘技場、宿屋、武器屋に防具屋に霊薬屋までそろってるし
ちょっとあるけば迷宮なんてものもあるから稼ごうと思えば直ぐに稼げるよ
まぁそれはお兄さんの実力次第だけどね」
「命があっただけマシだと思うさ
ギルドの場所を教えてくれてありがとう
早速向かってみる事にするよ」
俺がそう言ってギルドに向かおうとすると
さっきの少女が最後にこう叫んだ
「もしお金ができたら絶対うちの宿に泊まりに来てね!
約束だよ!」
あの少女は宿屋の売り子だったのか
健気な少女に和みながら俺はギルドへ足をはやめた
ギルドの前に付くとより大きさが際立った
大きな盾に二本の剣が交差しているマーク
その下には冒険者ギルド本部と書かれていた
ギルド本部のある街か
通りで大きい訳だ
俺はキルドの門を潜った
中に入ると受付嬢が5人並んでいた
結構にぎわっており掲示板とにらめっこしているやつもいる
掲示板が4つありそれぞれ雑用、採取、護衛、討伐に分かれているようだった
2階は資料室になっており3階はギルドマスターの部屋
4階は極秘資料室、5階は貴重品保管庫
俺は一番左の受付嬢の所へ行った
「ギルド登録をしたい」
緑色の髪で肩くらいまで髪を伸ばしているサイドテールの女性だった
「初めまして、冒険者ギルドへようこそ
登録には文字を書いて貰うことになります
失礼ですが文字を書くことはできますか?」
「問題ないな
だができればギルドのシステムの説明をしてもらいたい」
「わかりました
ではまず、ギルドにはランクがございます
Gから始まりF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSまで
そしてそれぞれの間に+が付き全部で20段階のランク分けがなされています
最初に登録されるとGランクからのスタートです
昇格は全てポイントで管理されています
自分と同ランク以上の魔物を倒せばポイントが加算されていきます
ランク以下の魔物についてはポイントの加算は無し、もしくは半減します
また、闘技場での結果や迷宮の到達度でもポイントは大きく加算されます
もちろん一回戦敗退や不戦勝などではポイントは加算されません
ギルドへ登録してもらった方にはギルドの指輪が贈呈されます
これには特殊な魔法がかかっており魔物を倒した時に出るエネルギーを吸収してポイントを加算します
ですので安心して魔物を狩っていただいて結構です
また「カードオープン」と唱えると自分の情報が載ったカードを指輪の上に映すことができます
自分が今どのくらいのポイントを持っているのか確かめるのにはそのカード見るのが早いです
もちろんギルドでもご確認できます
ポイントの管理は全てこの指輪とギルト本部、または支店の水晶で管理しているので失くされない様お願いします
万が一紛失した場合はポイントをすべて失い金貨2枚で再発行となります
換金部位については2階の資料室、もしくは図書館をご利用ください
ではこの用紙に名前、職業をご記入ください」
一枚の紙が俺の目の前に差し出された
「その職業ってのはなんなんだ?
初めて聞く言葉だ」
俺は適当に思い付いたレンという名前を記入した後に尋ねた
「では職業の説明もさせてもらいます
古くは祝福と呼ばれていたもので自分の能力をさらに伸ばせるというものです
職業のレベルが50になるとその職業の成長は止まります
ですがその職業によって身に付いた技やその職業特有の技能を受け継ぐことができます
何の職業になるかは完全にランダムみたいですね
魔法を扱う人が剣士になったという話もよく聞きます
職業を変えるのはいつでもできますが回数に制限があります
平均して大体3回程ですが人によっては5回すごい人では12回という人もいましたね
まだ祝福を受けていないのであれば無職と記入してください」
祝福のことだったのか
時代が変われば呼び方も変わるものなのだな
確かに祝福と呼ぶよりは職業と呼んだ方がしっくりくる
「無職と書いた後に祝福を受けてなんらかの職業に付いても問題はないのか?」
「この後に水晶よりギルドの指輪を生成した後はその指輪が自動的に個人の能力を更新して行きます」
「それなら問題はないな」
「ありがとうございます
水晶へご案内します。利き手を置いてお待ちください」
俺は右手を置いて暫くすると受付嬢が戻ってきた
「もう結構でございます。こちらがその指輪です
くれぐれも紛失なさらぬようお気を付けください
これで登録は完了いたしました」
俺は指輪を受け取ると人差し指にはめ込んだ
「いろいろ教えてくれてありがとう
ギルドで依頼を受ける時はあの掲示板に張ってある紙を持って来ればいいのか?」
「その通りです
最初は採取、雑用系の依頼を受けて装備を整えることを強くオススメします
無理をしては折角の才能もすべて無駄になります
よくお考えの上で依頼を選んでください」
「今直ぐには依頼を受けるつもりはないよ
まずは神殿で祝福、そのあと図書館に行って情報を集めてから依頼を受けることにする
今日は助かった、ありがとう
ところでこれは換金部位であっているか?」
俺はそういって雷煌龍の翼爪を取り出した
「これは…ずいぶん上位の龍の翼爪ですね
どこで手に入れたのですか?」
途端受付嬢の警戒の姿勢を示してくる
確かに初心者の俺がこんなものを出しても討伐したとは思わないだろう
「これは俺の知人から貰ったものだ
金に困ったときはこれを換金しろとな」
「これほどのものは私だけでは判断が付かないのでギルドマスターへ連絡いたします、少々こちらでおまちください。」
そうやって受付嬢は足早に階段を上って行ってしまった
周りの連中も一斉に俺に注目している
これは早まったか?
ここまで注目を集めるつもりではなかった
適当な竜種の爪として売れればよかったのだがあの受付嬢は優秀らしい
「お待たせいたしました
ギルドマスターがお待ちですのでご案内いたします」
3階まで上がり受付嬢が2回ノックをする
「エレーヌです。翼爪をもってきた方をお連れしました」
入れ、と声が聞こえ俺は中に通された
「君が翼爪をもってきた冒険者か
ワシはギルドマスターのアルザスというものだ
知人からのもらい物というらしいが、この翼爪は最上位の竜種の翼爪だ
その知人の名前を教えてもらえんか?さぞかし有名な冒険者なのじゃろう?」
そういってギルドマスターはにやりとこちらを見た
さっさと売って金にするつもりだったのでこの質問に対する答えは俺の中にはない
だがやられっ放しも悔しいし俺も即席で嘘を吐くことに決めた
「知人と言っても俺はそいつの最後を看取っただけだ
当然名前も知らないし、受け取ったのは素材だけだった
最初に血まみれなアイツを見た時はもう手遅れだと一瞬でわかった」
「そうかの、まぁワシはその龍を倒したのがお前さんでもその知人でもそちらでも良いんじゃがの
牙だったなら白金貨2~3枚って所じゃが翼爪じゃしな、金貨25枚でどうじゃ?本当は20枚くらいじゃがこれからの活躍に期待して5枚プラスして25枚」
「何を期待してるか分からないが25枚もらえるならそれに越したことはない」
「決まりじゃな、金貨は指輪に振り込んでおく
どの店でも指輪のデータで取引が可能じゃ」
それは良い事を聞いた
金貨で荷物がかさ張る心配もないだろう
「そうそう、まだ他にも素材があるなら是非買い取らせてもらいたいもんじゃの
竜種の、特に最上位種の素材はどこも不足気味じゃ」
金貨を振り込んでもらい俺はギルドを後にした
「神殿ってどれだ…」
さっきの受付嬢に場所を教えてもらえばよかった
このクソ広い街では神殿を探すにも一苦労だ
武器屋と防具屋、霊薬屋と図書館の場所が把握できたのは良いが
肝心の神殿の場所がわからねぇ
あと宿屋ってどこだよ
「あれ?さっきのお兄さん?
もしかしてギルドの場所分からなくて迷子中かな?」
急に話しかけられて横を向くと
さっきの可愛い宿屋の売り子さんだった
「いや、この通りギルド登録はできたんだが」
そういって俺はギルドの指輪を見せた
「神殿がどこにあるか分からなくてね
ついでに宿屋の場所も教えてくれるとありがたい」
「仕方ないなぁ
その代わり今から案内する宿屋に絶対に泊まりに来てね!
まず神殿の場所は此処からは見えないけど青と白でできた建物
うちの宿から見えるからまずはそっちに案内するね」
そういって彼女につれられるままに宿屋の前まで来た
「あの建物が神殿?」
確かに青と白の建物だ
だがパッと見あれじゃ絶対神殿ってわからないな
神殿と言えば屋根が三角で上に十字架ってイメージだがそんなものはどこにもなかった
「そうそうあれが神殿だから
ちゃちゃっと行ってきてよ
長期の滞在でしょ?
うちの宿屋は新米の冒険者にも優しい宿屋でね
お金はつけておくこともできるからお金は心配しなくていいよ」
「随分商売熱心だな
今月のノルマが達成できないとかそんなところか?」
少女は俺の言葉を聞きうぐっと言葉を詰まらせた
「べ、べつにいいじゃんノルマでも
散々案内したんだから私を助けると思って此処に泊まってよぉ」
次は泣き脅しできたか
ここまで来ると大したものだな
俺はもともとここに泊まるつもりだったし断る理由はなかった
「明日だな
今日はやることがあるからこれないが明日にでも此処を拠点とすることにするよ
…そんな顔するなって、絶対来るから」
俺が明日と言った途端に不機嫌そうな顔したが直ぐに笑顔になった
「明日絶対だよ!
来ないと枕元に立つからね!!」
その言葉を耳にしながら神殿へと向かった
ここが神殿か
中に入ると奥に一つ扉があり、その扉の前には一人の青年が立っていた
「祝福を受けに来た方ですか?」
「あぁ今回が初めてだからいろいろ教えてくれるとうれしい」
「この先で祝福を受ける事が出来る方なら神を声を聴くことができます
ですが祝福を既に受けており回数を使い果たした方なら何も起こりません
ではいってらっしゃいませ」
青年は扉を開けて手を扉の奥へ向けた
従っているようで面白くないがこの際無視しよう
俺は暗くて先の見えない扉の奥へ進んだ
声が頭の中に響いてくる
「これはまた珍しい人間?が来たものね
魂の格が既に人間を超えてるのに人間として存在してる」
この声が聴けるという事は俺は職業につけるという事だろうか
「職業につけるも何も貴方の魂には121部屋空きがある
普通の人は3つ、多くても8
そういえば12部屋空いてる人も居たわね」
少し興奮気味に声は語りかけてきた
121の空き…つまりそれは俺が121の職業に就けるということか?
だとしたらこれは大きなアドバンテージだ
これくらいしなきゃアイツには勝てないとは思うが
「121部屋も空きがあるなんて今からその成長が楽しみで仕方ない
私の、戦の神である私の加護を付けてあげる
少しだけ成長が速くなるわ
・・・決めた、貴方は今から「魔法戦士」よ
「水を扱う魔法戦士」 今の貴方にはぴったりな気がするわ」
そういって声は途切れた
魔法戦士、水を扱う魔法戦士と言った
水しか扱えないのは残念だが何かに特化するのは無駄ではない
しばらく歩くと出口が見えてくる
出口から出るとまたあの青年が待っていた
「祝福おめでとうございます
貴方にまだ伸ばすべき才能があるならまた寄っていきなさい」
「ありがとう
おそらく俺はなんどもここに訪れる事になる」
俺は神殿を後にした
神殿を出るとすでに日が沈みかかっていた
これは今から依頼を受ける時間はないな
今日は大人しく図書館に行って情報を集めるか
その前にギルドカードの確認だな
「カードオープン」
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名 前: レン(偽名) 本名:???
レベル: 1(12101)
職 業: 水の魔法戦士レベル1
属 性: 水
ランク: G
ポイント:0
筋力417 C+
耐久796 B-
魔力500 B-
退魔632 B-
俊敏335 C+
器用473 C+
称 号
ドラゴンキラー
森の支配者
天運
戦女神の加護
技能
魔力操作++
戦闘技術+++
生存術++
補 正
剣術補正+
水属性魔法の威力補正+
水属性魔法の精度補正+
マスター:無し
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「ステータスは平均Bってところか」
一般的な成人男性の平均能力が確かE-からE
って事は初期の値からかなり優遇されていることになる
「ってかなんだよ森の主って…」
いつの間にか俺は森の主になっていたらしい
あれ?おかしいな
初依頼完了まで書こうと思ったのにいつの間にか日が沈むって書いていた
とりあえず俺TUEEEEの土台は完成
ベタベタな展開だけど許してね