第三話~脱樹海~
とにかく東へ、少しでもあの咆哮から離れたかった
身体能力を活かし木から木へ飛び移るようにして移動している
川を発見できたので水分を補給しつつ持ってきた食材で腹を満たした
かなりのスピードで移動している筈だか咆哮が一向に小さくならない
それどころか徐々に距離を詰められてる気がする
竜種の縄張りの範囲は恐ろしく広い、自分でも気が付ない内にテリトリーに入り命を落とす者もいる
もし此処の川が奴の縄張り内だったら随分と無駄な努力をしてきたんだろうな
一息ついて辺りを見渡す
西の方角の上空に雷煌龍が見える、此処からみたアイツは金とも緑ともとれない色で輝いていた
後10秒もしない内にここを通り過ぎるだろう
ふと辺りが暗くなる、一定のリズムで翼を羽ばたかせる音だけを聴いていた
この音は飛ぶためのものではない、一定の高度を保ち獲物に狙いを定める狩り専用の音
前の俺もこうだったのだろうか、俺の予想は悪いものだけ良く当たる
意を決して上空を見上げると魔力を集め、今にもブレスを吐き出しそうな雷煌龍が圧倒的な存在感で俺を見下ろしていた
弾丸の様なブレスが3方向同時に放たれる、実際目の当たりにすると馬鹿馬鹿しいまでの高密度な魔力
着弾点を割出し速やかにブレスの範囲外へ移動する、運悪くブレスに当ってしまった木は燃えるまでもなく炭化していた
まずは地上に降ろさない事にはこちらは攻撃することも出来ない
石を投げたところでダメージは微々たるものだろう、完全に無効化される可能性の方が高い
見たところアイツにはまだ降りてくる気配はない、口に魔力を溜めて次のブレスの準備をしている
事態を好転させるには何かこちらから仕掛けなければならない
2度目のブレスが吐き出される
一度目の弾丸の様なブレスとは違い今回はまるでレールガンだ
ブレスの直撃を受け吹き飛ばされた俺は木の幹に激突した
ゆっくりと降り立ち歩きながらこちらへ近づいてくる
餌のつもりだろうか、単に気に食わなかっただけだろうか
あいつは竜種として生まれた時から絶対的な強者として今まで生きてきた筈だ
だからこそ余裕が生まれる、隙が生まれる
真正面からブレスを受けて生きて居られる生物など存在しないと
俺と雷煌龍がギリギリまで近づいた時、俺は直ぐに行動へ移した
一瞬で跳ね起き、右目に当る部分に指を突き入れ抉る
そのまま脳へダメージを与えようとしたが首を思いっきり振られ俺はそのまま投げ出された
投げ出される瞬間に指を曲げて完全に視神経を切断する
相手が光学的に視覚を得ているならこれで平衡感覚がなくなる筈だ
脳に損傷を与えて少しでも優位な状況に立ちたかったがしかたない
相手が地上に居て右目を失っている
しかも完全に怒り狂っておりバチバチと雷を纏い始めた
この状況は完全に俺に味方している
これ以上は高望みというやつだ
俺はすぐさま相手の死角へ移動し無属性の魔力で体を覆う
先ほどブレスを受けて軽度の火傷と痺れで済んだのもこの魔力のお蔭だ
死角から近づきまずは翼に傷を与える
魔力で覆われた腕は纏っている雷を物ともせずにそのまま翼を貫通した
雷煌龍がこちらへ振り向く前に全力で跳躍し視界から消える
そのまま全体重を右手に乗せて雷煌龍の首元へ振り落した
ゴキリと骨の折れる感触が自分の右手に伝わってくる
纏っていた雷がプツンと無くなり、そのまま地面へどさりと倒れた
ふぅっとため息をついて雷煌龍の死体に目をやる
今回は幸運の連続だった
ブレスをわざと受けた後もう一度ブレスを受けても駄目
地上に降りた後もそのまま追撃されてたらアウトだった
とりあえずは当面の危機は去ったわけだ
森から出る予定だったが雷煌龍の素材は惜しい
一旦拠点に戻り胃で作った袋に詰めれるだけ素材を詰めてから森を抜けるとしよう
俺は雷煌龍をズルズルと引きづりながら拠点へと引き返した
拠点に戻ってきたころにはもう日が完全に落ちていた
雷煌龍の体は大きすぎて入らないので外に放置している
急いで火をおこし周辺を照らす
そのまま外へでて雷煌龍の解体を開始した
まずは牙、爪、翼爪を袋に詰めていく、結構な重量になったがもてない程ではない
その後丁寧に一枚ずつ鱗を剥がして別の袋へ入れていく
正直気の遠くなる作業だが確実に金になる
牙はそのままでも十分な武器となるだろうし俺が使うのもありだ
全部の鱗を剥ぎとり表皮だけの龍にした頃には朝日が顔を覗かせていた
その後はまず足を引っこ抜き、首を引っこ抜く
一人では喰いきれないだろうが森を抜けるだけの食糧にはなるだろう
血抜きはこの巨体だし適当で良いな
首を抜いた時に凄い勢いて血が噴き出たが直ぐに収まり
今はポタポタと垂れるだけになった
そういえば高位な龍の生血は魔力が上がると万能薬になるとか
ソーマの素材になるとか色々言われてるよな
それを思い出し俺は軽い気持ちで生血を啜った
瞬間口いっぱいに広がる鉄の味と生臭さ
口内と食道に痺れが走りこれは毒だと脳に警告を送る
体が熱くなり心臓が高鳴る
なにが言いたいのかというと非常に不味い
まぁきつけ薬にはなるかもしれないが
・・・足の肉は今日食べるとして他の部分は干し肉、余った部分は勿体ないが廃棄する形になるだろう
翼をもぎ取り尻尾を抜き取る
骨同士の結束が強かったのか、筋肉が弛緩していたのかは分からないがそのまま尻尾につられる形で背骨がブチブチと音を立てながら出てきた
この骨は使えるのではないだろうか
適当な長さに折りコレも袋へ詰めていく
あらかた解体作業を終え、一か月分にはなる干し肉の準備に取り掛かる
本来干し肉は塩やら何やらで下準備した後脱水した方が美味しくなるのだが贅沢はいえない
魔力の膜で包んでおけば酸化や腐敗にも気を使わなくても大丈夫だ
結局干し肉が出来上がる頃には雷煌龍の肉をすべて食べ尽くし後は森を抜けるだけとなった
干し肉が出来上がった次の日に荷物を纏めて俺は森を出るべく移動を始めた
飛ぶようにして走り、一足で何メートルもの距離を移動する
方向に関しては勘だがこのままずっと此処に籠っているわけにもいかない
どうにかして街へたどり着き「祝福」を受けなければならない
運が良ければ何らかの属性を解放できるし、そうでなくても成長に多大なる補正が掛かる
途中で川を発見できたので水分を補給し持ってきた干し肉と果実で飢えを満たした
数日後、進行方向から多数の足音が聞こえてくる
それと混じってガシャガシャと、鎧の擦れる音
二足歩行のおそらくは人型の生物
数は30から40人
何をしに来たか分からないが雷煌竜の討伐か?
隠れるべきか
それとも助けを求めるべきか
後者の場合運が良ければ近くの町まで案内してもらえるかもしれない
だが見るからに怪しい俺にそこまでしてくれるとは限らない
それにこの森居た理由はなんて説明する?
もし討伐で来ているならば一人でも人数は欠けさせたくない筈だ
荷物を調べられてこの素材を見られるのも得策とは言えない
前者なら木の上でやり過ごした後あいつらが来た道を行けばいい
そこから来たという事はその道の先に森を抜ける道があるのだろう
悩む時間もあまりないしさっさと決めなければ
俺は木の上で隠れる事を選択した
木の上でじっと息を潜め、耳を澄ませて集団の様子をうかがう
こっちに気づいているのはまだ誰もいない
あれは獣人だろうか、真っ赤な長い髪に青い目を持っている
先頭を歩いていることから恐らく隊長だろう
あいつらをやり過ごしたあと木から降り一気に駆けだした
途端に木の密度が低くなる
光が射して少しだけ目を細めた
今まで森の中に居た分その環境に目が慣れてしまったのだろう
思った以上に早く森を抜ける事が出来そうだ
段々獣道からしっかりとした道になっていき、遂には森を抜ける事に成功した
森をを抜け、しばらく歩くと大きな街が見えてきた
森を抜けてからは人目に付く場合もあるので歩くと決めていた
大きくリィリアの街を描かれており人の出入りも盛んに行われている
俺は急いでリィリアの街へ向かった
まずはギルドに登録してから祝福だな
あのまま雷煌竜と戦うのもよかったのですがそれだと5話くらいまで森から抜け出せなさそうなので却下w
ご都合主義万歳ってことで見てやってください
レシアは一応ヒロイン候補になるのかな?
【追記2010/7/23】なんか修正してたら龍と戦闘してました
レシアも出てきてないとかどうしてこうなったの