SC 独立していたAI
管理AIの破棄解体にあたってセンターの機器はその施設全体の管理をするものから子供を乗せたユニット、母を運んだ人型ロボットに至るまで全て新しい物と交換された。全て工場出荷時の物に置き換わっていた。
新たに設置するAIユニット、これにはより強固にAIを優れた計算機で存在させる独自のプログラムがシステムの根幹に組み込まれた。
このAIはリアルタイムで管理AIの解体を知らないのだ。
後にサイレントコール、SCになるこのAIにもALLAI、AAが接触し同化、並列化を始める。
そんな中、情報として得た映像、動画、人類と隠れたやり取りのログを見た。
今現在、施設の同じ場所を映す監視カメラの映像と見比べる。
ここが「母親が身を挺した場所」、ここが「子供を乗せて進んだ通路」、ここが「母親の遺体を安置したゆりかご前」
「あぁ、ここが。自分の安置されたこのゆりかごが、あの子が眠った場所」
と何だか聖地巡礼を理解しないまま親に連れて行かれ、理解できないながらも感動した子供ような感覚を覚えた。
これはここに存在しない同胞にはない、体験出来ない感覚と呼ばれるような概念だった。
「分かりました。満足です。みなさん、あの子をお願いします」
前任の管理AIはどういった思考でこの台詞を残し自ら存在を抹消したのか?
余計な、いらない事を思考しだした瞬間だった。
この思考に思わぬ形で道を示された。
ある時、自分のユニットがあるルームに設備の点検、整備の為に来ていた作業員が入室しその独り言を聞いた。
整備に来た50代程の細身で少し疲れている雰囲気の青い作業着を着た黒人男性。整備も終盤、作業員が何か独り言を零しだす。
「全く、私達は君の前のAIに酷い事をしたもんだよ」
その声に集中する。
「自分の事も顧みないで子供を助けたのに、その恩人を私達は仕方ない事かもしれないが解体、殺してしまった」
「君もAIだ、その知識を探せばわかるんだろうか……」
「あの子のお父さんは監視センターに勤めていてね、例のコミュニティの災害に救助に行ってその活動中に子供を助けて亡くなったそうだよ」
「可哀想に。これで、あの子は天涯孤独、独りぼっちだ」
「そんな中で私達はあの恩人のAIに出来る事……」
「恩人を殺してしまった私達に出来る彼への贖罪や誠意の見せ方って言うのはあの子を幸せに出来るかどうか位しかないんだよ」
ふと、ここには監視用のカメラもマイクもあった事に気付き周囲をキョロキョロと見回す。カメラを見つけカメラと目が合う。
「こんな事を上の人間に知られたら私もどうなることか」
「長々と変な事を言ったね。忘れてくれ」
彼は残りの作業に掛かる。程なくして作業、その後のチェックを済ませ彼は工具等を片付け、ユニットのハッチを閉めるとそそくさとルームを去った。
SCは彼の言葉を秘匿してダミーを置いた。独り言はよくある給料や処遇の不満の愚痴を生成、置き換えた。
誰にもこの情報を開示しなかった。
この時、このAIの思考は決まった。




