地域利権
黒田と片山が戻り、再び捜査会議が開かれた。まず黒田が報告する。
「松村夫妻からお話が聞けました。やはり松村呉服店にも、ジーアから立ち退きの話が来ていました」
その期間は数年に及び、ガラスが割られたり、ネット上に店のデマを記述されるなど、嫌がらせは多岐にわたっていた。
「数回、警察官も臨場しています。地域課の記録にありました。三度目の通報の際に『ハコ長』の中田さんが、威力業務妨害の話を出してから、しばらくは止んでいたようです」
ハコ長とは、交番の所長を指す。
「中田さんか…あの人も昔組対だったからな」
大野が呟いた。
「昨年末に、定年退職されています。今は引き続き相談員をされています」
「それで、その後はどうなったんだ」
課長が続きを促した。
「はい。その後は松村呉服店に対しては目立った行動は起こさなかった様ですが、付近への妨害行動は相変わらずだったようです。町内会長としての矜持もあって、松村さんが再び対峙していました」
「そして、今回のヤマってことか…」
大野が腕を組んだ。
「ところで、相島京子さんはどうなんだ」
課長が尋ねると、片山が答えた。
「依然として、意識が戻っていません。娘さんもだいぶショックを受けていて、今は親戚の家に身を寄せています」
「許せない…罪のない人を巻き込んで」
小林が静かに怒りをあらわにし、大野が肩を叩く。
「皆同じ気持ちだよ」
「それにしても、ジーアだけでここまでの事をやるとは思えん。裏で手を引いている奴がいるはずだ」
「課長、それなんですが、ジーアは事実上『国際建設』の第一下請けの様な事をしています。実際、松村呉服店周辺の再開発は、国際建設がほとんどを請け負っています」
「国際建設!?あんな大手のディベロッパーが、ジーアの様な反社会的組織と繋がっているのか?」
「ありえない話でもないと思います。ジーアが、表向き優良企業の体をなしていれば…ですが」
大野が答えた。
「幹線道路や駅が近い上、5年後には付近にスタジアムが出来ます。あの付近一帯は、投資するには旨味があるのだと思います」
片山は、スタジアム建設予定地のチラシを見せた。
「村井を叩けば、全て分かりそうですか?」
「あいつはただの鉄砲玉だ。そこまでの話は聞かされてないだろうな…敵は本能寺にあり、だ」
そう言うと、大野は小林を促し取調室へ戻った。




