鉄砲玉
翌日、取り調べが再開された。村井は相変わらず踏ん反り返っているが、昨日に比べ明らかに落ち着きがない。指を噛んだり、髪の毛を始終いじっている。
「話す気になったかい」
「……」
「このままだとお前さん、別荘暮らしは免れんな」
「事故だっつってんだろ」
「お前さん…ジーアの鉄砲玉だな」
村井が目を見開いた。大きな動揺を見せている。
「笠原から頼まれたのか」
「……」
「親は売れないか」
「……」
「お前が笠原を庇って義理立てしても、笠原は助けにはこないぞ」
「そんな筈ねぇよ」
村井が小声で呟いた
「聞こえねぇなぁ」
「そんな筈ねぇっつってんだよ!」
「幹部の椅子でも約束されたか」
「そうだよ!カシラにしてくれるって!」
「呉服屋の娘さんを襲撃することを条件にか」
「あぁそうだよ!」
「それを鉄砲玉って言うんだよ。お前は起訴されて終わりだ」
村井は机を拳で叩きつけ、伏せてしまった。
「村井、ここからはお前の証言一つだ。指示されたのなら証拠があるだろ。今のままだと、お前が一人で罪をかぶるんだ。それで良いのか?」
村井は頭を抱えたまま黙り込んでしまった。
取調室を出た大野に、課長が来た。
「今、黒田君と片山君が、相島さんの入院している病院へ行っているよ。ご家族に話を聞きに行くって」
「分かりました」
「勾留期間の延長はしておいた、じっくりやってくれ」
逮捕してからは、原則として48時間以内に被疑者を検察官へ送致できないと、釈放しなければならない。
「ありがとうございます。助かります」
「48時間じゃ難しいよな、このヤマは」
大野の肩を叩くと、課長は刑事部屋へ戻った。
大野は、取調室の扉を見つめた。




