聞き込み
同じ頃、交通捜査課の黒田・片山の二人の刑事が、被害者の周辺に関して聞き込み捜査を行なっていた。被害者の自宅は地域で250年続く呉服店であった。
[松村呉服店]
臨時休業の貼り紙が出ていた。家族は被害者の病院に付きっきりだ。被害者は呉服店の長女だ。
一通りの聞き込みを終えた後、交通捜査課で捜査会議が開かれた。
「相島京子さん37歳、相島さんは松村夫妻の実の娘さんです。旦那さんは海外出張中で、事故の知らせを聞いて帰国の手続きをしているそうです。ご家族にはまだ話が聞けていません。かなり憔悴されていまして…」
「松村呉服店の評判は悪くありません。地域の活動にも積極的です。店主の松村さんは、町内会長も務められています」
黒田と片山が報告した。
「気になる情報もありました」
片山が続ける。
「松村呉服店の地域一帯は最近、急速に再開発が進んでいます。古くからの民家が複数取り壊され、跡地に商業施設やオフィスが建てられています」
「地上げだな」
大野が言う。
「そうです。当然かなりの反対運動が起きたのですが、ある人はお金で動き、ある人は脅迫紛い。店舗は営業妨害やネット上のデマなどで廃業に追い込まれているようです」
黒田がパソコンを操作し、それらの口コミをモニターに表示した。
「今回のヤマは、事故に見せかけた松村夫妻への圧力。そういうことだね?」
課長が大野を見る。
「間違いありません。それと昨日、組対時代の仲間から情報を得ました」
「昨日の電話はそれでしたか…」
小林が呟いた。
「村井は元早雲興業の構成員です。同じく構成員だった林田という男が興した不動産会社『ジーア』に引っ張られ、奴はそこで鉄砲玉のようなことをしています。現在林田は病気で退任し、笠原という男が後釜です」
「笠原の素性は」
「笠原はジーアの関連企業である、『ライト総業』の幹部です。ライト総業は早雲興業が興したペーパーカンパニーです」
「どうやら事件の線が濃厚だね。となると、刑事部の扱いに切り替えなくちゃならんな」
「課長、まだ奴は完落ちしてません。そこまではやらせてください」
大野が課長に訴える




