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取調室

現場から逃げた男は、近隣の学校のラグビー部員によって身柄を確保された。罪のない親子を事故に遭わせ、母親を重体に追い込んだ被疑者への怒りを静かにぶつける大野。熟練刑事の作戦に、被疑者はどうでるか。

署に戻り、小林は高木交通課長へ報告した。


「逃走した男は、村井幹男35歳。車は盗難届が出されていました」


「素性を洗う必要があるな」


「この後、捜査にかかります」


 被害車両に乗っていた母親は依然として意識が戻らないという報告も入っていた。

小林は取調室にいる大野に耳打ちした。


 村井は椅子にふんぞり返り、壁に目を向けている。


「黙秘か?まぁそれもお前さんの権利だ」


「……」


「一度だけ聞く。話す気はないか?」


「……」


 情に訴えかける様な話をしても無駄であることは分かっている。自白の強要も難しい。大野は持久戦に持ち込むことにした。


 次第に村井が落ち着きをなくしてきたことを、大野は見逃さなかった。床を何度も小刻みに踏んでいる。個室で刑事との睨み合いは、大きなストレスがかかっている。


「村井君、君がぶつけた車の被害者だがな、意識が戻らんらしい」


 村井は一瞬、大野に視線を向けた。


「これがもし、事故じゃないってことになると…分かるよな」


「あ?」


「殺人未遂だ」


 明らかに村井の顔色が変わり、動揺した。


「お前さんの素性を今洗ってる。もう時間の問題だ」


 そう言うと、大野は別の刑事に引き継いで、取調室を出た。


「大野さん、電話が入ってました」


 小林が、電話番号のメモを渡し、大野が電話をかけた。


「やっぱりな、ありがとう!この礼は高くつきそうだな」


 大野は電話を切ると、課長に内容を報告した。


「そうか…しかしなぁ、だからといって事故じゃないって事にはならんだろ」


 課長は眉をひそめた。


「村井は前がありました。窃盗と傷害で二度。中学生の時にも補導歴があります」


 小林が言う。大野は取調室へ戻った。



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