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利権の真相

翌日、井上は島津と佐藤を呼び、笠原の取調を命じた。


「井上課長、出来たら大野さんも一緒に来てもらいたいんですが」


「しかしねぇ島津さん…大野さんは交通だし、後方支援だ」


「えぇ分かってます。ただこのヤマ、大野さん以上に理解している人はおらんのです」


「それもそうだな…」


 島津は大野に目配せをして、一緒に取調室に入った。


 笠原は60歳を過ぎたばかりだ。恰幅が良く、派手なネクタイや金の指輪を嵌めるなど、堅気の雰囲気ではない。


 島津が笠原の前に座る。


「刑事さん、これは任意のはずですな。私は暇じゃないんです。協力は十分した筈だ。城戸の件は申し訳ない。私の管理不行届きでした」


「笠原さん、城戸と村井があんな暴挙を働いたのを本当にご存知ありませんでしたか」


 笠原はしらを切り続ける。あくまでも城戸が暴走したということで逃げるようだ。追い詰められた者の焦燥感が皆無である。その時、小林が大野と島津へメモを渡した。


「我々は、あなたが黒幕とは思っていません」


 大野がカマをかけた。城戸は一瞬驚いた表情を見せた。


「国際建設…どうですか」


「私は帰る、不当に拘束される覚えはない!」


 国際建設という言葉に反応し、明らかに笠原は狼狽していた。今が追い込むチャンスだ。大野の勘が働く。


「今ここを出れば、あなたはマスコミの餌食だ。それでもしらを切りますか」


 島津がクリアファイルから書類を出した。神戸課長から預かったものだ。笠原はそれを見て完全に落ち着きを失った。


「そう、これはあなたと…いや、ジーアと国際建設の黒い繋がりを示すものです」  

 国際建設からジーアに対して、短期間に数百万の金が何度も振り込まれていた。売り上げが入金される口座とは別に作られた、海外口座の入金記録だった。


「うちの二課が調べていたんですよ。二課ってのは、あなたみたいな知能犯を追うんです。これ、正規の口座じゃありませんよね」


 笠原は視線が泳ぎ出し、身体が小刻みに震えている。


「少なくとも、国際建設がおたくの裏口座に入金していたのは事実だ。これは一体何の金だ。」


 島津の口調が厳しくなり、鋭い目で見据えている。


「笠原さん、これは単なる小遣い稼ぎじゃ済まない。国際建設の決算書類を偽装した、会社法上の特別背任だ。さらに、その原資が再開発事業の甘い汁だとすれば、組織的犯罪処罰法の適用も免れない」


 島津が一気にたたみかけた。


「今のあんたは、国際建設の『会社を守るための盾』じゃなくて、単なる『犯罪の運び屋』だ」


 大野が後に続いた。


「わかりましたよ…あのバカ、あんなに大きな事故にしやがって…少し脅せば良かったものを」


 その後開かれた捜査会議で、笠原の完落ちと、指示を出していたのは国際建設専務の檜垣というところまで報告した。


「村井、城戸、笠原…全員使い走りということですか」


 榊が腕を組み、島津を見た。


「今後、国際建設への捜査へと移りますが、慎重にお願いします」


 それだけ言うと、榊は退出した。刑事達がざわついた。大野が島津に聞く。


「二課の動きが早かったですね」


 取調室に小林が持ってきたメモは、二課がSDカードの内容を調べ、決算書の偽装した事を突き止めた旨の報告だった。


「驚きましたよ。決算書の偽装までは読み取れませんでした。もしかしたら、ずっとジーアを追っていたのかもしれません」


「榊管理官ですよ、二課を動かしたのは」


 小林が言う。昨日、大野が井上に書類を見せた後、井上は榊へ連絡を入れていた。榊は以前から二課が国際建設の裏金疑惑を追っていることを知っていたからだった。


「そうなると、なおさら気になりますね。『慎重に』という言葉」


 島津の言葉に、大野と小林は頷いた。



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