口止め
城戸の取調には一課の捜査員が当たり、大野が補佐に回った。
「俺は松澤さんから言われた通りに引き継いだだけで、何も知らないんだ」
「松澤というのは、城戸の前の営業部長です。今、行方が分かりません」
大野が耳打ちした。
「松澤が最初でも、その後村井に大金積んで、相島京子さんを殺すよう唆したんだ。あんたの罪は軽くはないぞ」
「あんな事になるとは思わなかったんだ!頼むよ信じてくれ!」
城戸は顔面蒼白になり、懇願していた。
「じゃああんたに相島京子さんと、松村呉服店の件を頼んだのは誰なんだ」
「言えねぇよ、言えるわけがねぇ…」
「言ったらどうなるんだ?」
「……」
「安心しろ。塀の中までは追って来られない。誰もな」
それきり、城戸は黙り込んでしまった。大野は取調室から出て、課長に報告した。
「吐かないか…命を脅かされるくらい大きなバックがいるんだろうな」
「そう思います。おそらくですが、城戸は笠原の背後までは知らないでしょう。奴もまた捨て駒です」
課長のデスクの電話が鳴った。内線だった。
「鑑識からだ。例のSDカード、一部は修復出来たみたいだよ。俺は本部に報告を入れておくから、大野さんは鑑識へ行ってくれ」
大野は課長へ頭を下げ、鑑識へ向かった。
「大変だったぞ、バリバリに噛み砕きやがってよぉ」
鑑識課長の神戸がボヤいていた。老眼鏡が鼻まで下がっている。
「さすが神戸さんだ。凄腕ですよ」
「今度奢れよ。まぁそれはともかく、全部は修復できなかった。損傷が酷くてな…でも、十分証拠になりそうなものが出てきたぞ」
神戸は数枚の書類が入ったクリアファイルを渡した。大野が書類に目を落とす。
「神戸さん、これは…」
「ヤマが動くかもしれんぞ」
「ありがとうございます!」
大野は鑑識課を飛び出した。
「おい!今度奢れよ!」
捜査本部
「えらいもんが出てきたな…」
神戸課長から渡された書類を、捜査本部にいる井上捜査課長に見せた。
「城戸は今、黙秘をしていますが、一気にこれで笠原を落とせると思います」
「管理官には私から伝える」
笠原の事情聴取は翌日も続けられることになった。




